立憲民主党の野田佳彦代表と日本維新の会の吉村洋文代表がフジテレビ番組で、来夏の参院選1人区で候補者一本化をめざすことで一致した。野田氏は「一本化を図るひとつのアイデアとして予備選を提案したい」とし、吉村氏は「来年の通常国会がはじまるまでに予備選案をまとめ、提示したい」と踏み込んだ。
来夏の参院選だけではなく、今後の政界の対決構図を決定づける大きな政治ニュースといっていい。
維新は総選挙惨敗を受け、立憲を倒して野党第一党を奪うことを最優先目標に掲げ自公との連携を進めてきた馬場伸幸代表が退任し、吉村氏が新代表に就任した。
吉村氏は①野党第一党は目指さない②全国政党化も目指さない③参院選では立憲と連携して自公過半数割れを目指すーーと馬場路線からの大転換を表明。国民民主党を離党して維新に加わったばかりの前原誠司元外相を共同代表に指名し、自公との協調路線を進める国民民主党への対抗心をむき出しにした。
馬場氏は松井一郎氏(第2代代表)に後継指名されたのに対し、吉村氏は橋下徹氏(初代代表)と歩調をあわせて馬場体制に距離を置いてきた。立憲との予備選実施は橋下氏がはやくから訴えてきたもので、橋下氏との蜜月ぶりがうかがえる。
橋下氏が唱えてきた「予備選」は、世論調査などで勝利が見込める候補に一本化し、敗れた側は出馬を見送るというもの。ただし、共通公約をつくったり、選挙で推薦・支持したりする必要はない。あくまでも「自公と対決する候補」と一人に絞りこみ、有権者が「自公か野党か」の二者択一で選ぶ対決構図を作り出すことが目的だ。
だが、現実政治では、立憲と維新が予備選実施で合意した場合、共通公約や選挙協力へ発展する可能性は十分にある。その場合、来夏の参院選は「自公vs立維」の対決構図がより鮮明となる。
この場合、国民民主党は難しい判断を迫られる。年末の予算編成・税制改正で所得税減税やガソリン税減税を自公与党に求め、受け入れられれば来春の予算成立までは自公与党との協調路線を進めることになるが、予算成立後は来夏の参院選にむけて①自公与党との連携を継続するか、②自公与党と対決姿勢に転じて立憲・維新と選挙協力を進めるかーーを選択することになる。だが、立憲と維新の予備選構想が年明け早々にまとまれば、その枠組みに乗り遅れる危険がある。野党陣営に立ち戻れなくなる恐れが出てくるのだ。
共産党も悩ましい。総選挙後の首相指名選挙では、維新や国民が立憲の野田代表への投票を拒んだのに対し、共産党は野田代表に投票し、野党共闘の枠組み維持を重視する姿勢をみせた。しかし維新とは大阪で激しく戦ってきた経緯があり、立憲と維新の選挙協力に加わるのは難しい。
れいわ新選組は自公与党とも立憲とも距離を置く独自路線で総選挙は躍進した。もっとも立憲とは一定の選挙区調整は行った経緯がある。しかしれいわも維新を激しく批判してきた経緯があり、立憲が維新との連携を深めれば、れいわは立憲とさらに距離を置くことになるだろう。
自公与党は総選挙で惨敗した勢いを来夏の参院選で食い止めたいところだが、1人区で野党候補が一本化されれば、全国的に逆風が続く可能性がある。自民党内には衆院の過半数を回復するために衆参ダブル選挙を画策する動きもあるが、立憲と維新の急接近で衆院の小選挙区でも予備選実施の流れができてきれば、自公与党にとっては脅威的展開となるため、衆参ダブル選挙の機運は冷める可能性もある。