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立憲代表選に意欲を見せた小川淳也氏に「3つの懸念」急浮上! 彼をよく知る私が「忖度」なしで答えます。

立憲民主党の小川淳也氏が代表選出馬に意欲を示した。

立憲が衆院選で議席を減らすという想定外の「惨敗」を喫する中、小川氏は香川1区で自民党の平井卓也前デジタル相を破った。私はその時点で枝野幸男代表の辞任は避けられないと指摘したうえ、後継代表には小川氏が最適任であると提案した。

香川県立高松高校の同級生のよしみで持ち上げたわけではない。有権者は枝野氏をはじめ、菅直人元首相、野田佳彦元首相、岡田克也元外相ら「民主党政権の主役たち」に飽き飽きしている。この惨敗を機に世代交代を進め、「新しい顔」を打ち立て、党のイメージを一新しなければ、来年夏の参院選でも苦戦は免れないと考えたからだ。

小川氏は民主党政権で閣僚を務めていない。野党転落後も幹事長など党三役を担っていない。いわばまったく手垢がついていない。

もちろん経験不足、実績不足は否めない。しかしそのくらいのリスクをとって党の体制を刷新しなければ、立憲はどんどん有権者から見放され、来年夏の参院選でも後退し、遠心力が加速して解党に追い込まれ、野党第一党の座を日本維新の会に明け渡す可能性が十分にあると私はみている。文字通り「抜本的」「解党的」「出直し的」なレベルでの体制一新が必要なのだ。

衆院選の小選挙区で勝ち抜いた立憲議員57人の顔ぶれを確認すると、ひいき目ではなくその清新さからして小川氏が最適任だと判断したのである。

小川氏はその直後、地元・香川で記者団に対し、出馬への意欲を表明。マスコミは最初に代表選に名乗りをあげた若手として小川氏の発言を報じた。

ところがその後、小川氏の言動に対し、「本当に代表に適しているのか」という疑問の声が相次いでいる。私のもとへもSAMEJIMA TIMESのコメント欄やツイッターアカウントの返信欄に数多くのご意見が寄せられた。

それらはざっくりいって以下の三つに大別される。それぞれについて私の見解を「忖度」抜きで紹介したい。

①維新と連携するとは何事だ!

いちばん多かったのは、小川氏が選挙前後を通して日本維新の会との連携を模索する動きをみせたとして批判するものだ。

小川氏は香川1区に維新候補が出馬表明した時、候補本人に加え、維新幹部と直談判し、自民党の平井氏を倒すためには野党一本化することが不可欠であり、出馬を取りやめるよう求めた。

維新側が強く反発してこの経緯が明らかとなり、小川氏の言動は一挙に世の中に知れ渡るところとなった。一部には擁護論もあったものの、「立候補の自由を侵害する行為」「政治家としてあまりに未熟な言動」「維新が応じるわけがないのに明らかなパフォーマンス」などという批判が目立ったと思う。

この問題で私が注目したのは、小川氏の言動の是非よりも、小川氏が維新を「野党」と認識していることだった。

自公政権を過半数割れに追い込むには自公以外の「野党」はできるだけ一本化して結束すべきであるという小川氏の政局観が、彼がこの言動を自己正当化する根拠なのであろう。小選挙区で自民党に勝利するためには非自公勢力がひとつにまとまるべきであるという「青臭い」思いがあったに違いない。

小川氏の大きな誤りは「維新」を「野党」と認識したことである。私はそう見ている。

小川氏は優等生らしく「自公政権に与しない者=野党」と教科書的に考えたのだが、現実政治において、あるいは、現実の国民生活において、維新の政策は自公政権以上に弱肉強食の「新自由主義」で貫かれており、立憲をはじめ野党側が掲げる「格差是正」「所得の再分配」とは最も対極にある政党なのだ(自民党以上に新自由主義政党なのだ)。

そしてこの「新自由主義vs格差是正」こそ、目下最大の政治的対立軸である。それぞれの立場をもっとも鮮明に主張しているのは、維新とれいわ新選組だ。この両党には熱狂的な支持者も強烈な批判者もいる。一方、自民と立憲の二大政党の主張は、維新やれいわと比べると曖昧だ。だからこそ維新は衆院選で大躍進し、れいわは衆院進出を成し遂げたのである。

これに対し「維新=野党」という小川氏の認識は、国会のインナーサークルで定着している「二大政党政治」(自民か立憲かの二者択一の消去法を有権者に迫る政治)を大前提とした「与野党の区分」だった。それは永田町の政局的にも政治学の教科書的にも正しいのかもしれないが、有権者の意識とは大きくかけ離れたものである。

多くの野党支持者は新自由主義を加速させる「維新政権」が誕生するくらいなら、実行力のない自公政権が続いたほうがまだマシだと考えている。小川氏がこのギャップに気づかず、永田町の視点で「維新」をとらえていることが露呈した。ここに「維新問題」の核心がある。

ちなみに、れいわの山本太郎代表は衆院選中に「自民党よりひどいのは維新。間違っても維新には投票しないで」と訴えた。山本氏の政治感覚のほうが小川氏よりもはるかに有権者目線に立っていることを物語る出来事といえる。

小川氏は「自公に勝つ」という思いが強く「維新は野党」と整理したのであろう。しかし、この認識はできるだけ早く撤回したほうがいい。さもなくば小川氏に寄せられた野党支持層の期待感は一挙にしぼむ恐れがある。

さらにいえば、維新は「野党」ではないが、「自公の補完勢力」でもないと私は思っている。維新は立憲民主党を解党に追い込んで野党第一党の座を奪い、「自民と維新の二大政党政治」の実現を狙っている。自民党を倒すより前に立憲を倒すことをめざすのが党としての基本戦略なのだ。維新の選挙戦略や国会対応をみればそれは明らかである。

維新が自らの党勢を削ぐ「自公連立入り」を選択する可能性はほとんどないし、立憲と「野党共闘」する可能性はそれ以上にない。そんな維新の躍進は「自民か立憲か」という二大政党政治の終焉を決定づけるものなのだ。

小川氏は維新に対する分析・認識が不十分だったというほかない。代表を目指すのなら、このあたりの政局観を間違えると致命傷になる。いちはやく軌道修正したほうがいい。

②共産党と共闘する覚悟は本当にあるのか?

次に多かったのは、共産党との共闘に対する小川氏の覚悟を疑う指摘である。

共産党は今回の衆院香川1区で独自候補を擁立せず、野党4党は小川氏で一本化した。小川氏は共産党の小池晃書記局長とともに街頭に立つなど共産党との共闘を積極的にアピールした。それは「野党共闘」という言葉を使わず「共産隠し」に躍起になる枝野代表とは正反対の立ち振る舞いだった。

枝野体制は共産党を含む「野党共闘」を強化したから惨敗したのか、「野党共闘」が不十分だったために惨敗したのか。これは今回の立憲代表選の最大の争点である。小川氏を支持する野党支持層は「野党共闘のさらなる進化」を期待する人々が多いのではないか。

ところが、小川氏は代表選出馬に意欲を示した後、共産党との共闘を進化に踏み込むことなく、逆に慎重な発言に終始しているようにみえる。これはなぜか。私のもとへも「小川氏は共産との共闘に本気なのか。自分の選挙さえ勝てばそれでおしまいか」という厳しい批判が届いている。

小川氏のなかで選挙の前後で何か変化が生じたのだろうか。

考えられるのは、連合の存在だ。

香川1区は自治労が強く、小川氏を強く支援している。旧社会党系の自治労が共産との連携に否定的でないことが、小川氏が共産との共闘に前向きな姿勢を見せてきたひとつの背景である。

だが、立憲代表になるとすれば、自分の選挙区事情だけでは判断できない。最大の支持勢力である連合とどう向き合うかを考えなければならない。

自治労より大企業系労組の影響力が強い連合執行部も小川氏が代表選の有力候補に浮上した以上、アプローチをしているはずだ。その際に最も連合側が要求するのは「共産党と一線を画すこと」に違いない。「共産党との共闘さえ打ち出さなければ、小川さんを応援します」というくらいの誘い水を向けているのではないか。

ここで問題は、映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」で描かれたように、小川氏は飲み会が苦手で政界に「お友達」が極めて少ないことである。代表選に出馬するには推薦人20人を確保しなければならない。連合が「小川氏だけはダメ」と各議員に圧力をかければ、連合の支援を受ける多くの議員は推薦人に尻込みするだろう。そうなれば、推薦人の確保は難しい。

連合とのパイプもそれほど強くない。仲介に入る議員も決して多くはないだろう。連合と駆け引きをする政治力はなく、少なくとも連合を刺激することは避けたいーーそんな思いから共産との関係について慎重な物言いに転じ始めたのではないか。

しかし、それでは「本物の野党共闘」を望む野党支持層の期待を裏切ることになる。

小川氏のライバルとなることが予想される泉健太政調会長は京都3区選出で国民民主党出身だ。共産党との共闘には慎重派とされ、「野党共闘見直し」を掲げて代表選に出馬する可能性が高い。

政局下手の小川氏がいまさら「連合の支援獲得」を目指して野党共闘への姿勢をあいまいにしたところで何の成果もあがらないだろう。河野太郎氏が自民党総裁選で「安倍支配からの脱却」を明確に打ち出さずに「派閥の力」に惨敗したのと同じ構図である。

「なぜ君は総理大臣になれないのか」の小川氏に活路が開けるとすれば、政界工作ではなく、筋を通した時に起きる予想外の化学反応の結果であろう。ここは推薦人確保のために連合に配慮して「共産との共闘」をぼかすのではなく、「推薦人が集まらなければそれまで」と開き直り、「本物の野党共闘」を真正面から訴えるべきではないか。

それでこそ、いや、それでしか「なぜ君は総理大臣になれないのか」といわれるほど「仲間づくり」と距離を置いてきた政治家が党首になることはありえないと私は思う。野党共闘への姿勢もぜひ練り直してほしい。

③消費税増税派のくせに山本太郎と組めるのか!?

最後は消費税に対するスタンスについてである。

小川氏はもともと消費税増税派だった。社会保障を大胆に充実させるため消費税率をじわじわと100%まで上げていく構想を提案したこともある。

「消費税を社会保障の財源に」というのは消費増税を悲願とする財務省が絵を描き、法人税よりも消費税を中心とした税制を求める経済界が強力に後押しし、マスコミが世論への周知を担い、自民党と民主党の二大政党が共有してきた「政財官マスコミ界の常識」だった。

キャリア官僚から民主党政治家へ転身した小川氏もこの「常識」の枠内にいたといえるだろう。

これを打ち破ったのがれいわの山本太郎氏だった。山本氏は①1989年の消費税導入以来、消費税収の7割以上が法人税減収の穴埋めに使われてきた②「消費税は社会保障の財源」というのは真っ赤な嘘で、実は社会保障にはほとんど使われていないーーと主張。2019年参院選で消費税廃止を強く打ちあげたのである。

山本氏の主張に引っ張られる形で野党4党は今回の衆院選で「消費税の時限的減税」を公約に掲げた。ただしこれはコロナ対策の一時的な措置にとどまり、立憲民主党の枝野代表は消費税を社会保障の財源として重視する姿勢を変えていない。消費税は格差社会を助長するとして「悪」とみなす山本氏とは根本的な対立があった。

小川氏も消費税を肯定的に評価している面では山本氏よりもはるかに枝野氏に近い。このため、小川氏の代表選出馬への意欲表明を受けて、彼の過去の発言などをチェックした人々から私のところへ「山本太郎の超積極財政とまったく逆だ。ふたりは組めそうにない」というご意見が相次いでいる。

たしかにかつての小川氏の消費税増税論と山本氏の超積極財政論はまったく相容れない。一方で小川氏はコロナ後、山本氏が傾倒するMMT(現代貨幣理論)には一定の理解を示しており、当面の消費税減税にも前向きだ。

小川氏がこの代表選に出馬した場合、財政政策についてどのようなスタンスをとるのか、いましばらく注視したい。

従来の消費税増税論を唱えれば、枝野氏や岡田氏ら立憲重鎮の支持を得られる可能性があるが、山本氏やその主張にシンパシーをよせる中堅・若手との連携は困難になる。これを機に財政政策を転換すれば、党内の重鎮を敵に回すことになるが、立憲民主の反緊縮・超積極財政派のリーダーとして存在感を増す可能性がある。

これまでの議員個人の自由な発言と違って、代表選の公約は「政治家・小川淳也」の政治人生について回る。消費税をはじめとする財政政策へのスタンスをどうとるかは、小川氏の今後を左右する大きな政策判断・政局判断となりそうだ。

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