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ガソリン価格高騰で石油元売り各社に補助金を出す「個人よりも業界」重視の自民党らしい政策

ガソリン価格の高騰を受けて、萩生田光一経済産業相が石油元売り各社に補助金を出す方針を示した。レギュラーガソリンの平均価格が170円(1リットルあたり)を超えた場合、上昇を抑えるために1リットルあたり最大5円を補助する方向で調整しているという。

経産省は元売り各社に補助金分の値下げを約束させるというが、小売価格は卸売価格をもとに輸送費や人件費などを加味して決めるため、実際の価格がどうなるかは不透明である。石油元売り各社が「中抜き」することを食い止めることができるのか、甚だ疑問だ。

ガソリン価格の高騰は国民生活に大きな打撃になる。政府が対策をとることは必要だろう。

しかし、なぜ石油元売り各社に補助金を出すのか。石油大手を救済するだけではないか。ガソリン価格の高騰で苦しんでいる国民の暮らしを直接支援する方法をなぜ取らないのか。私はまったく理解できない。

石油元売り各社ではなく国民を直接支援する方法としては、ガソリン税や自動車関連税を軽減する方法があろう。あるいは、ガソリン価格の高騰は輸送コストの上昇を通じて生活必需品の物価上昇を招き、国民全般(とりわけ低所得者層)の生活に影響するのだから、石油元売り各社への補助金ではなく、国民一律に現金給付するかたちで生活支援するほうが、よほど国民生活を救うことになる。

それにもかかわらず、個人より大企業を助けるのは、実に自民党・霞が関らしい政策だ。個人を直接支援しても見返りは期待薄だが、大企業を支援すれば政治献金や天下りを期待できる。結局、自民党や中央省庁は国民個々人より大企業を向いているのだ。

GOTOトラベルも消費者個人よりも大手旅行代理店にメリットが大きい仕組みだ。コロナ患者受け入れへの補助も医師・看護師個人を直接支援するのではなく病院を支援するものだった。農業も個別の農家ではなく農協を通じた支援がほとんどである。

自民党政権はつねに「業界を通じたバラマキ政策」だ。それを族議員が取り仕切って政治献金を集め、選挙で票を集める。そこには必ず「中抜き利権」が生じる。それが積もり積もって巨額の税金が無駄に消えていく。

コロナ対策で国民一律に現金10万円が配布されたのは、コロナ対策をめぐってネットを中心に政権批判が強まり、自民党が危機感を抱いた結果として起きた、この国では先例がほとんどない出来事だったといえるだろう(10万円の一律給付はたった一回だったが、大きな先例になったと私は思う)。

自民党の族議員、所管官庁の官僚、業界。この「政官業の癒着」こそ、税金の無駄遣いの象徴であり、政府が国民一人一人に税金を投じて直接支援することを妨げる最大の要因なのである。

中央省庁のなかでも「個人より業界」の視点が圧倒的に強いのは経産省である。原発、自動車、電気などあらゆる業界に「規制」を口実に関与し、「利権」をつくってきた。

東芝が象徴するように経産省の言うがままに経営方針を決めた会社が経営難に陥るケースが相次いでも、経産省はつねに民間に関与したがる。それも天下りをはじめとする「省益」を確保するためだ。

今回のガソリン価格の高騰で苦しむ国民の姿は経産省の眼中にない。彼らが考えるのは、石油元売り各社をはじめとする「業界」を支援し、「業界」への関与を強めることだけである。

業界よりも個人の救済を優先する「成熟国家」にもっとも不適合な役所は、経産省であると思う。野党は経産省を解体して「国民生活省」を創設し、「業界への補助金」から「個人への直接給付」に経済政策の柱を大胆に移すことを公約に掲げたらどうだろう。自民党との対立軸としてこれほどわかりやすいものはない。

かつて霞が関では財務省と外務省が「与党」で、経産省は「野党」と言われていた。歴代政権は財務省と外務省の意向を重視し、経産省は土壇場で譲歩を迫られるケースが多かったからだ。

このようななかで、経産官僚は歴史的に自由人が多かった。必ずしも経産省で出世することが成功への道ではなく、組織の政界やビジネス界に転身する者も多かった。組織の管理統制も甘かった。財務省や外務省とはまったく違う組織風土があったといえるだろう。

政治記者や経済記者の世界でも、経産官僚ほど「ネタ元」にしやすい官庁はない。彼らは自分たち(あるいは自分自身)に有利になる内部情報なら惜しげもなくリークしてくる。組織的にリークすることもあれば、個人プレーでリークすることもある。良くも悪くも自立した官僚が多く風通しが良かった。私も政治記者として経産官僚からたくさんの「情報」をもらったものだ。

これが激変したのは第二次安倍政権である。安倍最側近で経産省出身の今井尚哉氏が首相秘書官(のちに首相補佐官)に就任し、首相官邸で内政・外交全般を牛耳った。経産省は一気に「与党」に転じ、財務省や外務省は「野党」に陥落した。

ところが、首相官邸の威光を背景に霞ヶ関に君臨するようになると、経産省の風通しはどんどん悪くなり、管理統制が強まった。経産官僚たちは物事をスタンドプレーで突破して動かそうとするよりも、首相官邸(今井氏)に話を持ち込んで官邸主導で物事を動かそうとし始めたのだった。

安倍政権が倒れ、今井氏が政権中枢を去り、今井氏と不仲の菅義偉氏が首相になると、経産省の影響力は急速に落ちた。だが、岸田政権が誕生すると、今度は今井氏の同期で元経産事務次官の嶋田隆氏が首相秘書官に起用されたのである。岸田文雄首相とは開成高校OBのつながりで起用されたようだが、経産省は再び首相官邸に強力なルートを持ったのだった。

事務次官経験者が首相秘書官に就任するのは極めて異例だ。それほど「首相秘書官」というポストの重みが増しているのだろう。

嶋田氏は与謝野馨元官房長官の最側近として知られたスーパー官僚である。私は与謝野官房長官を担当した時に彼と知り合った。権力を振り回すことに興味はなく、極めて仕事好きな実務能力が高い官僚だ。岸田政権を支える最重要人物の一人であろう。嶋田氏については機会を見て、稿を改めて詳しく解説したい。

きょうは、嶋田氏が官邸中枢に入ったことで、経産省が官邸ルートで物事を動かそうとする「悪弊」がぶり返さないように監視していかなければならないことを指摘するにとどめよう。

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