政治を斬る!

自民党女性局長の松川るい参院議員の「パリ豪遊」問題の核心は「軽率なSNS投稿」ではなく「子連れ観光」の公私混同である!局長辞任で幕引きを許すな!

自民党女性局長の松川るい参院議員が「パリ豪遊」問題の批判を受けて女性局長を辞任した。女性局主催のフランス研修中にパリのエッフェル塔の前でポーズをとる写真をSNSに投稿し、「まるで観光旅行」「税金の無駄遣い」と批判が殺到。松川氏は「研修自体は真面目だった」と強調する一方、「SNS投稿は軽率だった」と謝罪していた。

ところがその後、週刊誌報道で①松川氏が研修旅行に娘を同伴させ、現地の日本大使館に預けていた③3泊5日の研修旅行で「研修時間」は数時間しかなく、大半は会食やショッビング、観光地巡りなど観光だった③経費は一部自己負担(国会議員は30万円)で、それ以上は党が負担していたーーなど、公私混同ぶりが次々に明らかになると、松川氏は説明責任を果たさないまま雲隠れしていた。

女性局長を辞任することで幕引きを図る意図はみえみえである。松川氏がフランス研修を途中から離脱していた可能性を指摘する報道もある。

自民党も松川氏も「SNS投稿が軽率だった」ことを強調することで、この問題の核心である「公私混同」から目を逸らそうとしている。国会議員の外遊には税金(国会予算に加え、政党助成金を受注している党予算を含む)が投入されているが、大なり小なり、自民党女性局のフランス研究同様、「観光旅行」の色彩が強い。そこへ問題が拡大していくことを恐れているに違いない。

こんな幕引きを許していいはずがない。これを機に、国会議員たちの巨大利権である「外遊」にメスを入れるべきだ。

さらに腹立たしいのは、大手マスコミも「SNS投稿」ばかりを取り上げ、松川氏の子連れ外遊や観光旅行といった公私混同ぶりをほとんど追及していないことである。国会議員の外遊の実態に批判が向くことを警戒する自民党に同調しているかのようだ。

一例として、NHK報道『自民 松川るい氏 女性局長辞任 仏研修中の写真投稿で批判受け』をみてみよう。

記事冒頭から「自民党の松川るい女性局長は、フランスでの研修中に撮影した写真をSNSに投稿したことに批判が相次いだことを受けて、22日付けで女性局長を辞任しました」としており、この問題を「SNS投稿」に矮小化している。まさに自民党や松川氏と歩調をあわせる内容だ。

続いて自民党の対応を報じている。「茂木幹事長は党の役員会で、松川氏から21日改めて反省と謝罪があり「ひとつの区切りとして職を辞したい」として辞表が提出され、22日付けで受理したことを報告しました」としたうえで、茂木氏が記者会見で「今回の件は国民の信頼を損なうものだ。さまざまな意見や批判を真摯に受け止め、地道に活動を積み重ねながら信頼回復に努めたい」と述べたことを伝えている。

ここでも、今回の問題について松川氏が何を反省し、何について謝罪しているのかをあいまいにしている。SNS投稿の軽率さを隠れ蓑にして、核心的問題である「子連れ外遊」「観光旅行」スキャンダルを覆い隠す魂胆が透けて見える。

NHK報道は最後に、立憲民主党の岡田幹事長が記者会見で「自民党の女性局長を辞める、辞めないにかかわらず、説明責任は果たしてもらいたい。フランスでの研修に自身の子どもを同伴していたと報じられていて、まさか外務省の職員が子どもをみていたことはないとは思うが、そうであれば完全な公私混同となり、与党のおごりと言われてもしかたない。きちんと説明する責任がある」と述べたことを伝えている。

マスコミが自ら問題視するのではなく、野党の批判を掲載して「指摘はしましたよ」とアリバイ作りをする典型的な「ダメ報道」だ。マスコミが自ら権力を批判することを避け、野党の言葉を借りて報じるばかりだから、有権者の間では「与野党対立」としか受け止められず、スキャンダルの本質が伝わらないのである。NHKはそれを見越してこのような報道をしているのだ。

政治報道が麻痺すると、政治家も緊張感を失い、公私混同が激しくなって、ますます腐敗していく。

政治報道の第一の責務は「権力監視」だ。自民党や松川氏が覆い隠す「フランス研修」の実態を報じ、国会議員たちの「外遊利権」の抜本的改革を迫ることこそ、政治報道の役割であることを忘れてはならない。


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