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統一地方選に向けて「れいわ政治塾」開催へ〜自治体でれいわの政治を「やってみせる」重要性、杉並区議選にも注目!

れいわ新選組が来春の統一地方選に向けて「れいわ政治塾」を立ち上げた。選挙に出る人や支える人を育てる。れいわの基軸政策である「積極財政」のほか、地方議員(経験者を含む)による選挙ノウハウの指導も行う。

塾長は参院選比例区に出馬した長谷川ういこさん。積極財政に関する海外の書籍の翻訳を多数手がけ、れいわの政策づくりを主導した山本太郎代表の右腕だ。緑の党の共同代表も長らく務めており、地方自治や地方選挙の現場にも詳しい。塾長には最適任者であろう。高井たかし幹事長も講師として登壇するそうだ。

れいわは2019年参院選前に山本代表が旗揚げし、重度障害者やシングルマザーら無名の当事者を候補者として次々に擁立し、舩後靖彦さんと木村英子さんを当選させる異例の選挙で旋風を巻き起こした。とくに熱烈で行動力にあふれる支持層を抱えており、選挙ボランティアの熱量は他党からも一目置かれている。

今夏の参院選でも山本代表のほか、世界で最も障害が重い研究者の一人といわれる天畠大輔さんと社会問題について発信してきた芸能人の水道橋博士の計3人が当選。衆参あわせて8議席まで議席を積み増し、参院では予算委員会と憲法調査会のイスを得るところまできた。

ただし、過去三回の国政選挙の比例票は200万票台前半で横ばい。熱烈な支持層を抱える一方、支持基盤は伸び悩んでいるともいえる。今夏の参院選では参政党が右派ポピュリズムの立場から旗揚げしたほか、NHK党もネット選挙を展開してコアな支持層を持ち、社民党は生き残りをかけた戦いを展開して、それぞれ1議席を獲得。与野党の既存政党への反発を少数政党が食い合っている構図も浮かんでくる。

れいわは結党3年をへて新たな支持基盤を拡大するためにも来春の統一地方選で地方議員の大量誕生をめざすことにしたというわけだ。

統一地方選は戦後まもない1947年にはじめて実施され、全国の自治体の首長選と議会選(ともに任期4年)が一斉に行われた。以後、首長が任期途中で辞任したり、地方議会が解散したり、あるいは自治体が合併したりして、統一地方選から離脱する自治体が続き、前回2019年の統一地方選にあわせて実施されたのは全体の27%まで減っている。それでも4つに1つ以上の地方選が全国一斉に実施されるインパクトは小さくない。

れいわのように地方組織がほとんど存在しない新興勢力にとって、各地域の窓口となる地方議員が誕生する意義は非常に大きい。足場となる事務所を管理して日常的に地元の人々と触れ合い、それぞれの地域の政治活動に議員報酬を得ながら常勤として活動に専念できる人材を確保することは政党活動の基本だ。

自民党や公明党の組織力が圧倒的に強いのは、県議会や市議会などに多くの党所属議員を抱えているからである。一方、旧民主党が組織力で劣っていたのは、地方議員の数がそもそも少ないうえに、彼らの多くは連合所属の労組関係者で、党よりも労組に忠誠心を持っているからだ。立憲民主党がつねに連合に追従するのは、自前の地方議員があまりに少なく、労組依存の選挙を続けてきたからである。

一方、日本維新の会が大阪で圧倒的に強いのは、知事や市長など首長ポストを次々に奪い、府議会や市議会でも最大勢力に躍り出たからだ。一方、大阪以外の地域で維新が伸び悩んでいるのは、地方議員が圧倒的に少ないことと無縁ではない。地方議員の数はその政党の足腰の強さに直結するといっていい。

れいわが野党の主役を目指す以上、一定数の地方議員を抱えることは避けては通れない道だ。今回の統一地方選を機にどこまで地方での足場を固めることができるのか、熱烈なボランティアのなかからどれだけ多くの人を統一地方選に擁立し、当選させることができるのか。れいわにとっては正念場の選挙になるといっていい。

野党にとって地方選が重要なのは、野党への信頼感や期待感を高めるブレークスルー(突破口)となりうることだ。

野党の最大の弱点は「やってみせられないこと」にある。立憲民主党が「野党は批判ばかり」という批判に耐えかね、「批判よりも提案」「提案型野党」を掲げ、政府与党への追及に及び腰になってしまったのも、「野党はやってみせることができない」という焦りからだった。

立憲の凋落を横目に躍進してきた維新にとっての強みは、大阪の府政、市政でさまざまな政策をやってみせることが可能なことだ。

その意味で、野党はまずは自治体の首長を制し、その自治体で独自の政策を実行し、その実績をアピールすることが、政権交代への機運を高め、野党への信頼感や期待感を高める効果的な戦略といえるだろう。

旧民主党はこれができなかった。各地の知事選や市長選で野党系が勝利しても、それぞれの地方議会は自公両党が多数を占めており、知事や市長は次第に自公と融和的になって、その自治体が民主党らしい政策を積み重ねて「民主党王国」と目されるという事例はほとんどなかった。そこが維新と決定的に違う点だ。連合に地方政治の現場を抑えられており、連合は各地では現職や自公と融和的な姿勢を維持していることが大きな要因である。

これに対し、子ども政策を充実させて人口増・税収増を実現させた兵庫県明石市の泉房穂市長や徹底した情報公開で安定的な支持層を持つ東京都世田谷区の保坂展人区長は野党国会議員出身の首長が独自の政策で存在感を発揮しているが、これらは首長自身の豊富な政治歴や突破力によるところが大きく、野党のバックアップを受けているとは言い難いのが実情だ。

その意味で、れいわがいずれかの知事選や市長選で独自候補を擁立して勝利し、その議会にも勢力を拡大し、「大阪の維新」型の自治体をひとつでもつくり、そこで「誰一人見捨てない」という山本代表の政治理念を徹底する地方自治をやってみせることは、れいわへの信頼感・期待感の高まりや党勢拡大につながる重要なステップアップとなるだろう。そのような目玉となる地方選挙を来春にひとつでもつくれるかどうかも重要なポイントである。

以上の流れは、ユーチューブでも解説したので、ぜひご覧ください。

私が注目しているのは、東京都杉並区だ。今夏の参院選目前の6月19日に投開票された杉並区長選で、立憲・共産・れいわ・社民・生活者ネットが推薦する無所属新人の公共政策研究者である岸本聡子氏(47)が、4選をめざした現職の田中良氏(61)に約190票差で競り勝った。

昨年の衆院選で落選した自民党の石原伸晃氏の地元で、自民党区議が石原氏や田中区長に近いグループと、批判的なグループに分裂しているという事情もあるが、それでも野党が共闘して現職区長を僅差で破ったインパクトは大きかった。

この杉並区の区議選が来春の統一地方選で予定されているのだ。

岸本氏は明石市の泉市長や世田谷区の保坂区長のような政治歴がない。いきなり区長として独自政策を展開しようとしても、現時点で自公が多数を占める区議会の壁を突破するのは容易ではない。そこで来春の区議会選で「岸本与党」が過半数の議席を占めることが極めて重要となる。

杉並区の多くを選挙区とする衆院東京8区では昨年の衆院選で、れいわの山本太郎代表が野党共闘候補として出馬する方向で立憲執行部が了解していたにもかかわらず、立憲の新人・吉田はるみ氏を支える地元支持層が一歩も引かず、最後は山本代表が野党共闘を尊重して選挙区を一方的に譲る結果となった。一連の経緯は双方の支持層に禍根を残しており、今回の杉並区議選でも吉田氏を支える立憲支持層と、山本代表を支えるれいわ支持層がしのぎを削る可能性は高い。

岸本区政のもとで区議選がどのように行われ、新たな勢力地図のもとでどのような区政運営がなされていくのか、野党再編の行方を左右するひとつの試金石といえるだろう。

岸本区長が維新のような自前の与党勢力づくりを目指すのか、区長選で応援をうけた立憲、共産、れいわなどの勢力のバランスをとりながら区政を進めていくのか。その手腕に注目したい。

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