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統一教会問題と加計学園問題の構図は瓜二つ?この対比から見える清和会の凋落と岸田・麻生体制の強化

歴代最長となった安倍政権が残した「負の遺産」のひとつが加計学園問題である。

安倍晋三首相から「腹心の友」と呼ばれていた加計孝太郎氏が理事長を務める学校法人加計学園の獣医学部新設が、文部科学省の強い反対を退けて実現した。当時の安倍首相や菅義偉官房長官の強い影響下にあった内閣府が文科省に「総理の意向」として早期開学を迫ったとされる問題だ。

安倍・菅連合の強力な「カケ推し」に真っ向から反対したのが、文教族の大物である麻生太郎副総理だった。しかし麻生氏は安倍・菅連合に押し切られ、副総理としてのメンツは丸潰れになる。麻生氏と菅氏の対立が抜き差しならなくなったのはこの「カケ問題」からであるという指摘もある。

第二次安倍政権発足以降、文科相を務めたのは下村博文、馳浩、松野博一(現官房長官)、林芳正(現外相)、柴山昌彦、萩生田光一(現自民党政調会長)、末松信介の7氏。林氏を除く6氏は清和会所属である。文科省は清和会(安倍派)の牙城だった。

「カケ問題」当時の松野文科相や萩生田官房副長官も文教族の一員として慎重姿勢をみせた。しかし安倍・菅官邸の政治力は強大で、清和会の一員として最後は服従するほかなかった。

今回の統一教会問題で、清和会重鎮の下村博文氏が文科相時代に統一教会の名称変更を認めた経緯に批判が集中している。

元文科事務次官の前川喜平氏によると、文科省はそれまで統一教会が引き起こした霊感商法などの社会問題を薄めて、新たな被害を広げることを防ぐため、名称変更には慎重姿勢を維持してきたが、安倍側近の筆頭格である下村氏の政治判断で覆ったということらしい。

文科省の判断が、安倍氏率いる清和会の圧力で覆るーーこの構図は「カケ問題」と瓜二つである。どちらの問題も文科省の内情を前川氏がさらけ出していることも興味深い。

安倍政権の強力な政治力で「カケ問題」はうやむやにしたが、今回の統一教会問題では安倍氏はすでにこの世にない。麻生氏がキングメーカーとして君臨する岸田政権下において、清和会の凋落は顕著である。名称変更問題で下村氏の関与をうやむやにすることは簡単ではなかろう。

清和会凋落という文脈で今回の内閣改造人事をみると、やはり注目すべきは文科相ポストだった。清和会の牙城だった文科相を麻生派が奪い取ったのだ。

岸田首相が起用したのは麻生派の永岡桂子氏。衆院茨城7区選出の当選6回、初入閣である。

衆院議員だった夫洋治氏が清和会の小泉政権が進めた2005年の郵政民営化法案に当初は反対しながらも採決で賛成に回った後に自ら命を絶ち、直後の衆院選に専業主婦ながら担がれた。夫は亀井派だったが、妻の永岡氏は茨城県政界のドンだった山口武平県議が麻生氏と昵懇だったこともあり、初当選後から麻生派に身を寄せてきた。

麻生氏は「カケ問題」への怒りを忘れていない。悲願の文科相ポストを奪い返し、ついに清和会を掌握したという感慨が込み上げているのではなかろうか。

文科相ポストが清和会から麻生派へ移ったのは、清和会凋落の象徴的人事だ。麻生氏は清和会時代に分裂・弱体化した宏池会を源流とする麻生派、岸田派、谷垣グループを再結集して「大宏池会」を再興し、清和会をしのぐ最大派閥に躍り出る野望をついに実現させる時が来たと高揚しているに違いない。

内閣改造にみる清和会凋落については、プレジデントへの寄稿『安倍派を服従させ、菅元首相を完全につぶす…岸田首相の「優等生内閣」にある冷徹な政治意図を解説する』を、とりわけ文科相人事からみる清和会凋落については、ニュースソクラへの寄稿『清和会の牙城・文科相を麻生氏が奪還』を参照してください。これらの内容は鮫島タイムスのYouTube動画でも解説しています。



 

 

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