政治を斬る!

二大政党に広がるSNS規制論〜東京都知事選、総選挙、兵庫県知事選でユーチューブの影響力が炸裂!危機感を強めた自民・立憲が立花孝志氏の名誉毀損問題を機に新興勢力を抑え込む狙い?

2024年はユーチューブ選挙元年と言われている。

7月の東京都知事選で人気ユーチューバーの石丸伸二氏が立憲民主党の蓮舫氏を抜き、10月の総選挙ではユーチューブ戦略を駆使した国民民主党とれいわ新選組が躍進し、11月の兵庫県知事選ではユーチューバーの立花孝志氏の援助射撃を受けた斎藤元彦知事が大逆転した。

これまでユーチューブでの影響力は選挙の得票に直結しないと言われていたが、その常識が次々に覆った。この流れはとまりそうにない。

自民党や立憲民主党など既存政党はこれまでテレビCMや新聞広告など既存メディア中心の広報戦略を練ってきたが、ユーチューブなどSNSの影響力を無視できなくなっている。とりわけユーチューブをはじめとする「切り抜き動画」は強烈な拡散力があり、来夏の参院選にむけて各党は動画戦略でしのぎを削ることになりそうだ。

他方、兵庫県知事選で斎藤知事を援護射撃した立花氏は選挙中、真偽不明の情報を次々に発信していたことが明らかになってきた。立花氏の発信を信じて斎藤知事の支持に回った県民は少なくなく、ユーチューブを中心として「デマ」が選挙戦の行方を大きく変えてしまった可能性は極めて高いとみられている。

こうした流れを受けて、自民・立憲両党など国会では、SNSを使った選挙活動の規制を検討する動きが広がり始めた。兵庫県警が立花氏を任意聴取し、選挙中の発信が名誉毀損などの罪にあたるかどうか捜査を始めたのも、中央政界に広がる「SNS規制」の動きを歩調をあわせたものだろう。

たしかにSNSで拡散するデマが選挙の行方を大きく左右する事態は深刻だ。

一方で気になるのは、自民党や立憲民主党など既存政党が、SNSを駆使して台頭している新興勢力の勢いをそぐため、SNS規制を推進するという思惑が見え隠れすることである。

具体的にどうやってSNS選挙を規制するのかも簡単な問題ではない。

規制派は「ネットでデマが拡散した」というが、マスコミも誤報やミスリードは決して少なくない。選挙中は中立報道の建前に縛られて選挙報道を控えることもたびたび批判されてきた。

マスコミが政府の大本営発表を垂れ流して実質的に政府与党に加担する報道も数知れない。大手新聞社がこぞってスポンサーになった東京五輪報道や、ワクチン一斉接種の旗を政府とともに振ったコロナ報道は、マスコミ不信を増幅させた。

マスコミ報道の歪みをネットが指摘してきたのは紛れもない事実であり、ネットだけを規制するのは筋が通らないだろう。

規制派は「ユーチューバーは選挙動画を拡散して稼いでいる」とも指摘するが、マスコミも選挙広告で収益をあげているのは同じことで、ネットだけを規制するのは無理筋だ。

マスコミ情報は正しく、ネット情報は誤りと決めつけるほど、増大するネットユーザーの反発を招くのは間違いない。自民党や立憲民主党がネット規制に乗り出したとたん、左右問わず、猛烈な批判が噴き出すだろう。現実的にはネット規制のハードルは極めて高い。

私もユーチューブを配信しているが、左右問わず、過激なものほど熱狂的支持を受けて拡散しやすい傾向を日々感じている。そのような過激な情報をマスコミが「世の中に受けている」として取り上げ、さらに増幅していくという悪循環に陥っている。
それを阻止するには、ネット規制を強化するのではなく、「中道」の人々がどんどんネットに参入し、過激な主張の割合を薄めていくしかないだろう。
私もユーチューブを始める前は「鮫島浩」と検索すると「売国奴」などと誹謗中傷する動画が検索上位にあがってきた。それに負けないくらいに自分の動画を発信し続けたことで、今では検索上位から「売国奴」はほぼ姿を消した。

ネットの誹謗中傷や過激主張を薄めるためには、それらを上書きするほど「まともな動画」を拡散させるのがもっとも手っ取り早い。

SNSを規制するという発想から抜け出さなければ、自民党も立憲民主党も時代からどんどん取り残されて二大政党政治そのものが崩壊するだろう。

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