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高市早苗と参政党が連携? ウルトラ・ライト政権は現実になるのか

2025年参院選――注目の焦点は「自公与党の退潮」と「参政党の躍進」だが、ここに来て、ひとりの政治家の名前が再浮上している。高市早苗氏である。

安倍晋三元首相の命日である7月8日、高市氏は山口県長門市の安倍家の墓前に姿を見せた。同行したのは、旧安倍派の西村康稔氏や安倍氏のおい・岸信千世氏ら。高市氏にとって、安倍元首相は“政界の父”ともいえる存在であり、2021年の総裁選で無派閥からの出馬を後押ししたのも安倍氏だった。

昨年の総裁選では第一回投票でトップに立ち、「ポスト石破」の有力候補とみなされるも、石破茂氏が総理となって以降は影が薄くなっていた。与党が少数勢力に転落したことで、政局の鍵は「野党との連携」に移り、自民党内での高市待望論は一気に萎んだ。高市氏には野党人脈が乏しく、総理指名選挙で勝てる現実的な布石が打てなかったからだ。

だが、情勢が変わった。5月、「山尾ショック」によって国民民主党が保守層の支持を急速に失い、その支持層が次々と参政党へ流入したのである。かつて安倍支持層が受け皿にしていた国民民主党が失速し、代わって参政党が躍進。この流れが続けば、「高市+参政党」というウルトラ・ライト連携が現実味を帯びてくる。

参政党はすでに全国すべての選挙区に候補を擁立し、地方議員も150人超。草の根組織とSNSを活用し、「トランプ支持」「日本人ファースト」「積極財政」などのスローガンで保守層から無党派層まで広く浸透している。比例投票先では立憲や国民を抜き、自民に次ぐ勢い。東京や神奈川などの大都市圏だけでなく、地方でも支持を広げ、10議席超えも視野に入ってきた。

このまま参政党が躍進し、石破総理が退陣に追い込まれた場合、次のシナリオが見えてくる。自民党反主流派が、高市氏を総裁に担ぎ、参政党を連立に引き込むという展開だ。

参政党の神谷宗幣代表は「与党になるには時間がかかる」と慎重な姿勢を崩さないが、政権入りの可能性を排除してはいない。外交・安保政策では自民党よりも右寄りであり、価値観の共通点も多い。

ただし、参政党の躍進を支えているのは保守層だけではなく、既存政党に失望した無党派層の存在も大きい。中途半端な政権参加は、支持の急落を招くリスクがある。

政局の文脈で見れば、参政党の議席数だけでは衆院の過半数回復には届かない。だが、維新など他党と組めば、過半数を確保できる道はある。維新は関西圏外で伸び悩み、政権参加への意欲が強まっているとされる。維新と参政党が自民党と手を組めば、公明党抜きでも政権運営が可能になる。逆に、公明党は維新や参政党との連立を嫌い、進退を迫られることになる。

注目すべきは、参政党が石破総理のままでは連立に加わることはないという立場を明確にしている点だ。つまり、石破退陣が連立への“入口”であり、その“鍵”を握るのが高市早苗氏なのである。

高市氏が再浮上する条件は整いつつある。維新や参政党からの支持が得られれば、党内反主流派は安心して高市氏を担ぐことができるだろう。「高市政権+参政党+維新」という連立の枠組みは、現実的な選択肢となる可能性がある。

とはいえ、神谷代表が連立入りを急ぐ必要はない。参政党が「維新化」して政権内に取り込まれるよりは、現状のポジションを維持しつつ、独自路線を歩むほうが長期的には有利かもしれない。

だが、政局とは流動的なものである。参院選後の結果次第で、高市氏がふたたび脚光を浴び、政界の主役として返り咲く展開も十分にあり得る。

安倍元総理の影を背負いながら、埋没していた高市氏。
「石破退陣」「参政党連立」という2つの条件が重なったとき、
彼女はふたたび、政界の頂点を目指す舞台に立つことになるかもしれない。