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「#田村智子さんを総理大臣に」のトレンド入りが映し出す共産党躍進と「田村委員長」の未来

東京五輪の閉会式が行われた8月8日、ツイッターでは「#田村智子さんを総理大臣に」がトレンド入りした。田村智子さんとは、安倍晋三首相の「桜を見る会」疑惑の追及で一躍有名になった共産党の参院議員である。

野党第一党の立憲民主党の支持率も枝野幸男代表への期待感も一向に高まらないなか、自公政権への対決姿勢を鮮明にして権力を監視・追及する野党の役割を主導している共産党が存在感を増しており、今秋の総選挙で共産党躍進の可能性が高いことを私は繰り返し指摘してきた(以下の記事を参考にしていただきたい)。

99歳になった共産党が存在感を増す「小選挙区・二大政党制」の日本政界のいま

とはいえ、共産党へのアレルギーは日本社会において依然根強い。枝野代表も共産党と選挙で共闘する姿勢をみせながらも、政権構想をともにつくることには後ろ向きだ。枝野氏をはじめ立憲民主党には「共産党が政権入りするのは現実的ではない」「共産党と政権構想をつくれば中道勢力が離反してしまう」という考えが強い。共産党と政権構想をつくれば、自公政権の一部と連携した政界再編の芽をつむことになる。共産党を敵視する連合の影響も大きいだろう。

そのなかで共産党が「売り出し中」の田村智子氏が総理大臣になることを期待するツイートが(アンチ共産党による批判を含めて)トレンド入りしたことは、共産党の勢いが増していることの証しであろう。数々のツイートをみると、共産党支持者というより野党支持者が期待を込めて発信している内容が目についた。立憲民主党への物足りなさと共産党への期待感が交錯しているのが野党支持勢力の現状だ。

政治ジャーナリストとして「#田村智子さんを総理大臣に」のトレンド入りをみて最初に思い浮かべたのはふたりの政治家の顔である。永田町を長年取材してきて確信しているのは、強烈な嫉妬が渦巻く世界であるということだ。どちらも面白くない思いをしていると想像したのだった。

ひとりは枝野氏である。秋の衆院解散・総選挙で、与党第一党の自民党総裁である菅義偉首相と「総理大臣の座」を争うのは、野党第一党の党首である枝野氏のはずだ。それが二大政党政治の「掟」である。ところが、野党第二党の、しかも党首でもない田村氏が「総理大臣候補」としてもてはやされるのは、枝野氏への期待感が高まらないことの裏返しであり、面白いはずがない。自民党内の「菅降ろし」が本格化して秋の総選挙前の首相交代が実現したら「野党の総理大臣候補は枝野氏のままでよいのか」という機運が生まれる可能性があり、枝野氏としても他の「総理大臣候補」に神経質にならざるを得ない状況だ。

もうひとりは共産党の志位和夫委員長である。田村氏の人気が急上昇して共産党への支持が広がることは歓迎すべきことなのだが、やはり党首として複雑な思いがあるのではないかと思ったのだ。

共産党は強力な組織政党である。志位体制のもとで野党共闘を進め、イデオロギー的にも柔軟路線に転じて「野党連合政権」をめざす姿勢を鮮明に掲げるようになったとはいえ、党内序列を重んじる党風はそう簡単には消えてなくならない。

志位氏は2000年に46歳で委員長に抜擢され、20年以上にわたって共産党を指導してきた。枝野代表や国民民主党の玉木雄一郎代表よりも安定感を発揮しているといえよう。さりとて、すでに67歳。後継者問題を念頭に置き始める時期である。

田村氏の人気急上昇をみて、志位氏が党内序列を重視して日本社会にありがちな「出る杭は打つ」空気を醸成していくのか、それとは正反対に、この勢いに乗じて田村氏を後継者に抜擢するサプライズ人事を構想していくのか。志位氏の舵取りによって共産党の未来は大きく変わると私は思ったのである。

共産党の風通しが良くなったことは「#田村智子さんを総理大臣に」に並ぶツイートから感じ取れる。共産党の地方議員や役職者らが実名で賛意を示しているのだ(以下は共産党東京都委員会の青年学生部長のツイート)。党内序列を重視する昔の共産党では考えにくいことである。共産党の体質は明らかに変わった。

日本の政治分野のジェンダーギャップ指数は156カ国中、147位である。永田町のジェンダー格差を是正する取り組みは非常に遅い。

自民党では野田聖子幹事長代行や高市早苗前総務相が「初の女性首相」をめざして秋の総裁選出馬に意欲をみせている。小池百合子東京都知事も首相を目指して国政復帰するとの観測が絶えない。だが、野田氏や小池氏の背後には二階俊博幹事長、高市氏の背後には安倍晋三前首相の影がちらつき、いずれも政敵を牽制する「政局カード」として使われている印象が強く、自民党から女性リーダーが誕生する機運は決して高まっていない。片や、立憲民主党には首相候補として名前の上がる女性幹部さえいないのが現状だ。

そのなかで志位氏が田村氏を後継指名して共産党初の女性委員長が誕生すれば、共産党アレルギーを払拭する大きなインパクトがあるだろう。その効果は党名を変更するよりもはるかに大きいのではないか。

志位氏はこの20年、共産党を柔軟路線に転換させ、党風を大きく変えてきた。「田村氏を委員長に」というサプライズ人事は、野党連合政権入りへの強力なカードとなりうる。今秋の解散総選挙や来夏の参院選に向けて「切り札」を放つ絶好の機会を迎えているのではないか。

二大政党が「代わり映えしない昔の顔」を担ぐなかで、志位氏が華麗な世代交代を断行すれば、共産党が政権入りへ近づく大きな転換点となるだろう。今後に注目したい。

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