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山本太郎会見で気づいた!経済制裁は早期停戦合意を妨げ、戦争を長引かせる。ゼレンスキー演説に拍手喝采し、ロシア制裁を叫ぶ与野党国会議員たちに欠けている視点

ウクライナ戦争に対して私がサメタイで示してきた基本的な考え方は以下の通りである。

①ロシアのプーチン政権によるウクライナ侵攻は、武力で一方的に現状変更をめざすもので、国連常任理事国が自ら国際秩序を乱す暴挙であり、非難に値する。

②ウクライナのゼレンスキー政権が自衛権を発動することは理解できるが、国家総動員令を出して民間人の「戦わない自由」を奪うことには賛同できない。

③ウクライナ政府が武力で徹底抗戦する以上、双方は戦争当事国となる。日本政府が一方に加担することは、平和憲法を持つ立場からも、停戦合意に向けた仲介役を果たすためにも、日本自身が戦争に巻き込まれないためにも、好ましくない。このため、ウクライナ政府への防衛装備品の提供にも、「ウクライナと共にある」と宣言する国会決議にも、ゼレンスキー大統領の国会演説をスタンディングオベーションで称賛することにも反対する。

④日本政府が果たすべき役割は、ウクライナの人々の命を守るための人道支援に全力をあげるとともに、一刻も早い停戦合意を目指して外交努力を尽くすことである。プーチン大統領とゼレンスキー大統領だけでなく、米国のバイデン大統領にも早期停戦への努力を促すべきである。

以上の考え方は、国家権力が国民の基本的人権を侵害することを防ぐため権力者の手足を縛る「立憲主義」や、悲惨な戦争を二度と繰り返さないように国家権力が戦争を遂行することを禁じる「平和憲法」に基づくものであり、私の信念は揺るがない。国家がいかなる「正義」を掲げようとも「正義を実現するための戦争」には断固反対するつもりだ。

これらの点において、唯一立場を共有したのはれいわ新選組だった。自民党も公明党も日本維新の会も立憲民主党も共産党も「戦争を遂行するゼレンスキー政権」に全面的に肩入れしたため、「正義を実現するための戦争」を正当化したといえる。これは立憲主義や平和憲法の考え方に反すると私は思う。「ロシアに味方するのか」というバッシングの嵐を浴びながら、唯一、立憲主義や平和憲法の考え方を貫いたれいわ新選組を、私はとても高く評価している。

ただし、れいわが示した判断に対して、私にはひとつだけ迷いがあった。それはロシアへの経済制裁に対する姿勢だった。

れいわ新選組は当初から経済制裁には慎重であり、大石あきこ氏は明確に「反対」との立場を示した。正直に告白すると、私は経済制裁については自らの立場をあいまいにしてきた。

戦争に加担することには明確に反対である。だとすれば、国連常任理事国で核保有国のロシアの軍事侵攻に対抗できる手段は経済制裁しかないのではないか。停戦合意に向けた外交交渉を重ねるにしても、ロシアを経済制裁で追い込んだ方が交渉妥結が進む可能性もあるかもしれない。

一方で、経済制裁は世界経済を二分し、安全保障的にも世界をますます不安定化させる恐れがある。第二次世界大戦も「経済のブロック化」が発火点となった。大日本帝国もアジア侵略に対する米英などの経済制裁を受けてますます戦線を拡大することになったのだ。

しかも欧米主導のロシア経済制裁に参加した非欧米国は日韓などわずかで、巨大な人口を持つ中国やインドをはじめ、東南アジア、中東、アフリカ、中南米などの諸国のほとんどは経済制裁に加わっていない。人口比でいうならば、経済制裁に加わっているのは世界の1〜2割であろう。「欧米=国際社会」とみなす時代はとっくに終わった。これら第三世界の存在感を無視できる時代ではもはやない。

私はそこで経済制裁については有力な手段としつつ、慎重に進めるという立場をとってきた。さまざまな論者の見解にも注意深く耳を傾けてきたが、「これだ」という回答はなかなか見つけることができなかった。

そのなかで唸るしかなかったのが、れいわの山本太郎代表の3月24日の記者会見である。私は改めて山本代表の揺るぎない信念に感嘆した。その記者会見を紹介したい。

山本代表はゼレンスキー大統領が国会演説で求めた経済制裁の強化について「停戦を求めるカードになり得ない」とし、れいわ以外の国会議員たちがスタンディングオベーションで称賛した様子を「いいのかな、これで、という思いで全員起立している姿を座りながら見ていた」と振り返った。そして「一刻も早い停戦というより、より孤立させていくことに全力を注いでいる」と指摘した。

ウクライナの人々の命を守るため一刻も早い停戦合意の実現を何よりも優先する立場から、経済制裁に慎重な考えを示したといえるだろう。だが、山本代表の真骨頂はこのあとの話である。

彼は経済制裁の強化には「覚悟しなければいけない点が多々ある」とし、ロシア国内で戦争に反対している人々も苦しめると指摘したうえ、その悪影響は国境を超えて広がり、世界中の立場の弱い人々にほど襲いかかる、すでにその影響は出ている、と指摘したのである。

ロシアはエネルギーや小麦の輸出大国であり、経済制裁によって早くも原油や食料品の急激な物価高が世界中を襲っている。裕福な人々はそれほど厳しい影響とは感じないかもしれない。しかし、所得が低く生活苦に直面している人々には極めて重くのしかかるのだ。

私はゼレンスキー大統領の国会演説を拍手喝采した与野党の国会議員たちに最も欠けているのはこの視点であると思った。高額報酬を得ている国会議員たちは経済制裁による物価高で一気に生活が苦しくなることはなかろう。しかし一般庶民はすでに苦しんでいる。もうギリギリだ。その視点を忘れていないか。

国会議員が「安全保障」や「国際政治」という「大義」を掲げて経済制裁に踏み切るのなら、その悪影響を弱い立場の人ほど強く受けるという現実から目を背けるべきではない。国策による経済政策のしわ寄せが弱い立場の人に集中するのはあまりに理不尽だ。

経済制裁で物価高を招くのなら、ガソリン税を廃止し、消費税を廃止し、さらには国民一律の現金給付を実施して国民生活を支える。財源が足りないのなら、政治家や経営者をはじめ社会の指導的立場にある人々に特別課税したらいいではないか。そのくらいの覚悟がないまま国策として経済制裁に踏み切り、弱い立場の人々がさらに苦しむ姿に目を塞いでよいのか。

山本代表は「誰一人見捨てない」という政治信条を掲げてれいわを旗揚げした。彼の視線はつねに弱者にある。戦争から消費税まで、彼が政策を判断する際の立脚点はつねに「誰一人見捨てない」に置かれている。だからこそ戦争を遂行する大統領ではなく戦争に巻き込まれる人々の視点に立てるのだ。

これに比べ、他の与野党は、所詮はエリート集団である。結局のところ「個人」より「国家」を優先する。「戦争に送り出される人々」より「戦争に送り出す権力者」の目線である。だからこそ「正義を実現するための戦争」を支持するのである。

れいわとその他の政党の間には、与野党の間よりも大きな対立軸があると私は思った。

山本代表の記者会見でもうひとつ見逃せないのは「経済制裁は長期化する傾向がある」と指摘したことだ。

過去の経済制裁の効果はどうだったのか。山本代表は「新米国安全保障センター」が調査報告書で、米国が過去に経済制裁を加えたなかで成功したのは36%にとどまり、制裁だけでは目的は達成できないと評価していることを紹介した。経済制裁はむしろ米国への反発を強め、状況を泥沼化させているというのである。

さらに国会図書館などの調べで、経済制裁で停戦が実現した過去の例も紹介した。南アフリカやアンゴラ、スーダン、イランなどへ経済制裁を加えてから解除されるまでにかかった歳月は5年、10年、10数年と非常に長く続き、その間、それらの国々で何の責任もない一般の人々を苦しめたうえ、周辺国の人々にも悪影響を与え、世界中の立場の弱い人々に打撃を与えたと指摘したのである。

いったん経済制裁を強化すれば解除するのは簡単ではなく、その間に多くの犠牲を生み出すことが避けられないというわけだ。

山本代表はそのうえでロシアへの経済制裁は日本の国内経済にも長期間にわたって大打撃を与えると指摘。ただでさえこの25年間、日本政府の無策で長い不況が続き、そこへコロナ禍が襲いかかり、経済格差がますます拡大したのに、政府が十分な手当をしないなかで、所得は上がらず、電気代やガス代や食費など生活必需品の物価だけがどんどん上がっていく状況をさらに後押しする経済制裁を日本が進めていいのかーーと訴えた。

山本代表は最後に「長期戦を目指しているのか?ということだ」と述べ、一刻も早く停戦合意を実現させることが政治の役割と重ねて強調したのである。見事な記者会見だった。

私は前回記事で、米国のバイデン大統領がウクライナの人々の命を守るための早期停戦合意よりも、戦争を長引かせて経済制裁でプーチン体制を揺さぶり転覆させることを優先しているという分析を示した(以下参照)。

バイデンはなぜ早期停戦に動かないのか?ウクライナの人々の命を奪う戦争を長引かせてプーチン体制の転覆を狙っているのか?

経済制裁強化を支持するれいわ以外の与野党の立場もバイデンと同じといえるだろう。つまり、日々失われていくウクライナの人々の命を守るため一刻も早い停戦合意を実現させることよりも、ロシアへの経済制裁強化によるインフレに苦しむ世界中の弱い立場の人々の生活を救うことよりも、ウクライナの人々に武器を持たせて戦争を長引かせ、国際秩序を破ったロシアに対する懲罰(経済制裁)を強化してプーチン体制を転覆させる「経済戦争」を優先しているのである。

経済制裁は戦争を長引かせる。早期停戦と経済制裁は相矛盾する。ウクライナの人々の命を守るため、インフレに苦しむ世界中の弱い立場の人々の暮らしを救うため、一刻も早い停戦合意と和平の実現を本気で訴えている政党はれいわ新選組だけではないかと思った次第である。