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高収入の高齢者への課税強化を検討〜現役世代が抱く不公平感の解消が狙いだが、所得だけに着目して課税ラインを決めるシステムが限界に 金融資産課税の強化が不可欠

石破政権が働く高収入の高齢者への課税強化を検討していると共同通信が報じた。

高齢者が年金と給与の双方の収入がある場合、控除額が大きく税負担が小さくなる。このため、現役世代に不公平感が広がっていることが背景にあるという。そこで高齢者の所得控除に上限を設定し、事実上の増税に踏み入るというわけだ。

夏の東京都知事選では現役世代の支持を集めた石丸伸二氏が躍進し、10月の総選挙では所得税減税で「手取りを増やす」と訴えた国民民主党が躍進した。

11月の兵庫県知事選では県議会から全会一致で不信任され失職した斎藤元彦知事が現役世代の支持を受けて再選を果たし、名古屋市長選では自民・公明・立憲・国民相乗りの元参院議員が減税を掲げる日本保守党の河村たかし市長の後継候補に惨敗した。

現役世代を中心に既存政党への不信感が広がっていることを自公与党も無視できなくなっている。

投票率の高い高齢者寄りの政策を続けていたら、今後の選挙でしっぺ返しを受けるという警戒感が急速に広がっているのだ。

しかし、根本的な問題は、経済力を測るにあたり、資産を無視して所得だけで判断するしくみにある。

高齢世帯が豊かな金融資産を持っているのに、所得は少ないため、低所得世帯向けの給付を受け取るケースも少なくない。逆に金融資産が少ないため、年齢を重ねても働き続けて所得を増やすしかない高齢世帯もある。

所得だけに注目して課税強化することは、高齢者間の不公平感もかき立てるだろう。やはり本質的には、所得だけでなく資産もカウントして課税のあり方を判断することが不可欠だ。

日本の税制は、財務省と自民党税調が密室で決めてきた。証券業界や富裕層の意向を踏まえ、金融資産課税を軽減してきた歴史がある。ここにメスを入れることが公平な税制実現には不可欠だ。

所得だけで課税ラインを分けるのは不公平そのものである。世代間対立をあおることなく、資産課税を強化するほうが健全な富の再分配につながるのは間違いない。

財務省と自民党税調が牛耳る今の仕組みを温存したまま、税制システムを根幹から転換するのは難しい。

自公与党が過半数割れして政策決定システムが大きく変わろうとしている今、税制改正プロセスも大きく変わる好機である。

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