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国民民主党と立憲民主党の支持率が逆転!日本維新の会の吉村新代表は国民民主党を離党した前原誠司氏を共同代表に指名、来夏の参院選で野党一本化に意欲を示して立憲に接近〜激変する野党勢力図

JNNの12月世論調査で国民民主党の支持率がはじめて立憲民主党を上回った。石破内閣の支持率も回復基調にある。自公与党が総選挙で過半数を割り、躍進した国民民主党の減税政策を受け入れて予算案を可決・成立していくほかない政治情勢の出現を、世論は歓迎しているようだ。

立憲民主党の政党支持率は8.5%。総選挙直後の前回から 4.3ポイントの急落である。国民民主党に主役を奪われてすっかり埋没した格好だ。

これに対し、国民民主党は8.8%。総選挙直後から微減(0.3ポイントマイナス)したのは玉木雄一郎代表の不倫発覚の影響とみられるが、打撃はそれほど大きくはないことがうかがえる。世論は「不倫より減税」を求めているといえそうだ。

立憲はかつて日本維新の会に政党支持率で抜かれ、野党第一党争いを繰り広げていた。維新が大阪万博で失速した後、野党第一党としての立場を回復させて総選挙では50議席を増やしたが、国民民主党の台頭でふたたび野党第一党としての立場が危うくなってきたといえる。

総選挙後、立憲党内は50議席増に浮かれていたが、世論は自公与党に反発しただけで、立憲への期待が高まったわけではなかった。その現実を直視しない限り、今度は国民民主党に期待が集まり、立憲はふたたび埋没・低迷期に入る可能性がある。

石破内閣の支持率は42.1%は3.2ポイント上がった。石破首相の人気が回復したというより、自公過半数割れによって国民民主党との連携が不可欠となり、所得税減税が実現することへの期待が高まっている結果である。

国民民主党が自公与党に迫っている「103万円の壁の引き上げ」(所得税非課税枠の引き上げ)に賛成は61%、反対は17%。財務省や地方自治体は減税による税収減を訴えて反対しているが、世論は圧倒的に国民民主党の減税を支持している。

名古屋市長選でも、減税を掲げる河村たかし前市長(日本保守党公認で総選挙愛知1区で当選)の後継者が、自民・公明・立憲・国民相乗りの大塚耕平・元参院議員に圧勝した。与野党相乗りの大塚氏は増税派とみられたことが決定的な敗因になったとみられている。

国民民主党の立ち位置としては「自公の連立政権に加わる」は16%にとどまり、「政策ごとに連携する相手を選ぶ」が52%で圧倒的だった。「他の野党と連携して政権交代をめざす」も23%しかなく、世論は政策ごとに是々非々で賛否を決めることを国民民主党に望んでいる。年末の予算編成で減税が頓挫すれば、世論は落胆して一転して反発を強まる可能性もある。

国民民主党が掲げる「原発新増設」への賛成は36%で反対51%だった。 国民民主党への期待はあくまでも「減税」であり、同党の政策全般ではない。そこを勘違いすると、行革を掲げながら大阪万博に巨額の税金を注ぎ込むことで失速した維新の二の舞になりかねない。

立憲と国民の支持率逆転を受けて野党勢力図は激変しつつある。そこで注目されるのは、総選挙惨敗を受けて執行部が変わった日本維新の会だ。

新代表に就任した吉村洋文・大阪府知事は「全国政党化」を見直し、来夏の参院選では重点地域を絞る意向を示した。自公与党との対決姿勢を強めて参院選1人区で野党一本化をすすめるため、立憲民主党との予備選実施もめざすという。

維新はこれまで「野党第一党の奪取」を掲げて全国政党化を進めてきた。自民よりも立憲を敵視してきたといっていい。吉村新代表は大きく路線転換し、来夏の参院選では自公与党との対決姿勢を強めて、立憲とはむしろ連携を強めていく構えだ。

さらに国会運営を主導する共同代表には、国民民主党を離党した前原誠司元外相を指名した。自公与党に接近する国民民主党ではなく、立憲民主党を重視した人事と言えるだろう。

立憲民主党が主導する「企業団体献金の全面廃止」にも歩調をあわせ、野党案を共同提出する方針だ。これとは一線を画する国民民主党との差別化を図ったものといえる。

立憲と維新が「アンチ自公国」で足並みを揃えつつあるのに対し、立憲を批判し維新とも対立してきたれいわ新選組はますます独自路線を務めるだろう。

複雑なのは共産党だ。総選挙後の首相指名選挙では野党で唯一、立憲民主党の野田佳彦代表に投票したが、維新には強く反発してきた経緯がある。立憲との連携路線を今後どうしていくのか、悩ましいところである。

国民民主党が躍進して自公与党との連携に傾き、立憲と維新が接近していることで、野党の勢力図は大きく変わりつつある。来夏の参院選にむけてどの政党が勢いづくのか、各党の激しい駆け引きが始まる。

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