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野党が国会で自民党の裏金を追及する裏側で立ち上がった「超党派会議」の正体〜財務省が消費税増税の与野党合意(場合によっては与野党大連立)を視野に動き始めた

自民党の裏金事件をめぐって与野党が国会審議で対立する裏側で、自民、立憲民主、維新、公明、国民民主の与野党有志80人超が参加する超党派会議が動き出した。民間有識者らの政策組織「令和国民会議(令和臨調)」に賛同する「日本社会と民主主義の持続可能性を考える超党派会議」だ(こちら参照)。

この「令和臨調」も「超党派会議」も、仕掛け人は財務省である。ズバリその狙いは財政健全化、つまり消費税増税だ。

国民向けには今年にも予想される解散総選挙をにらんで与野党対立を演じる一方、水面下では消費税増税のための与野党合意(場合によっては与野党大連立)への布石を着実に打っている。政界はまことに信用ならない。

超党派会議は3月に初会合を開き、「経済・財政・社会保障」など4部会で提言をまとめ、1年後をめどに公表するという。

財務省が裏で仕切っている以上、提言内容は見えている。「持続可能な財政と社会保障を実現するには、消費税増税が不可欠だ。与野党合意のもとで早急に議論を進めなければならない」というものだ。

民主党政権のもとで、自民、公明、民主が社会保障のための消費税増税で手を握った「3党合意」と再来である。これも裏で糸を引いたのは財務省だった。

当時の中心メンバーは、自民党が谷垣禎一総裁、公明党は山口那津男代表、民主党は野田佳彦首相だった。現在の立憲民主党の岡田克也幹事長は民主党政権で副総理、安住淳国対委員長は財務相を務めた「財務族議員」の象徴的な存在で、最高顧問を務める野田氏(元首相であり、元財務相でもある)とともに立憲民主の党運営を牛耳っている。

今回の超党派会議の特別顧問に就任したのは、自民党の大島理森元衆院議長と立憲民主の野田元首相だ。ここからも野田元首相と財務省の濃密な関係がにじんでいる。

そして筆頭代表世話人を務めるのは、自民党の小渕優子選挙対策委員だ。財務省は今後の「財政再建派=消費増税派」の中核に小渕氏を据える構想のようである。

小渕氏の父・小渕恵三元首相は財務省と親密だった。小渕元首相が率いた平成研究会(現在の茂木派)は今、岸田文雄首相が打ち上げた派閥解消論のなかで派閥からの離脱が相次ぎ、崩壊状態である。その引き金を引いたのは、派閥本流である小渕優子氏の離脱表明だった。茂木派がいったん崩壊した後、「小渕派」として再興する可能性が高い。財務省とは距離のある茂木氏から小渕氏への「世代交代」を財務省も後押ししているのだろう。

そのような目線で超党派議員の顔ぶれを分析すると、ここに名を連ねているのは「財務族議員」の主力メンバーといっていい。

超党派会議の代表世話人は、筆頭世話人の小渕氏のほか、与野党5党からそれぞれ選出されている。

自民党から小渕氏と並んで代表世話人に就任したのは、岸田首相最側近として知られる木原誠二幹事長代理だ。妻の元夫の不審死事件で妻が警視庁に事情聴取されながら不自然な形で捜査が打ち切られた「木原事件」で世論の批判を浴びて官房副長官を退いたものの、岸田首相最側近の立場に変わりはなく、首相官邸と自民党の橋渡し役を務めている。もともとは財務省のキャリア官僚だ。小渕氏とも親しい間柄である。木原氏は財務省にとって超党派会議の代表世話人にはうってつけといえるだろう。

立憲民主で代表世話人を務めるのは、大島敦氏。旧民進党で幹事長を務めたものの、知名度は低い。自民党の裏金事件をめぐって国会で追及している最中、岡田氏や安住氏ら党執行部が代表世話人に名を連ねるわけにいかず、大島氏を送り込んだということだろう。野田元首相が特別顧問に就任している以上、立憲として超党派会議に賛同する意思は十分に伝わっているということだ。

維新は藤田文武幹事長。ここは党執行部を堂々と送り込んできた。自民と立憲が財務省の仲介で大連立を視野に接近することを警戒している様子がにじんでいる。「維新も乗り遅れるわけにはいかない」ということだ。

国民民主は古川元久国対委員長。この人も財務省出身だ。党執行部を送り込んだのは維新と同様、自民と立憲の接近を警戒してのことである。古川氏は民主党時代は当選同期の安住氏とライバル関係にあった。安住氏が財務相に就任して「大物財務族」にのしあがったことへの対抗心もあろう。

各党の世話人の顔ぶれも興味深い。

自民党で注目されるのは、小渕氏とともに茂木派を離脱したばかりの青木一彦参院議員だ。父親は小渕内閣で官房長を務め、参院のドンと呼ばれた故・青木幹雄氏。昨年他界するまで小渕優子氏の後ろ盾として岸田首相にも小渕氏登用を迫っていた。小渕氏側近として世話人に加わったとみていい。

加藤鮎子・こども政策担当相も世話人だ。父親は宏池会のプリンスと呼ばれた故・加藤紘一元幹事長。民主党政権で消費税増税への「3党合意」を決断した谷垣氏の「親分」だった。この人選にも財務省の意向がにじんでいる。

立憲議員では当選1回ながら世話人に起用された本庄知史衆院議員が注目だ。岡田幹事長の秘書を長年務めた岡田最側近である。超党派会議に対する岡田氏の並々ならぬ意欲が透けているといえよう。

その他のメンバーで注目されるのは、解散した清和会(安倍派)の再興を目指す自民党の福田達夫元総務会長だ。清和会創始者で祖父の福田赳夫元首相は財務省出身。父の福田康夫元首相も財政再建派だった。安倍派5人衆が失脚した後、財務省は福田氏を押し立てていくつもりなのだろう。

立憲で注目されるのは、大串博志・選対委員長だ。財務省出身で野田元首相の最側近である。この人選からも立憲の超党派会議への入れ込みようが浮かんでくる。

超党派会議が提言をまとめるのは1年後、来年の春だ。その時にはおそらく解散総選挙は終わっている。

岸田文雄首相が6月までの今国会会期中に解散総選挙を断行して9月の自民党総裁選で再選を果たしているかもしれないし、あるいは、岸田首相が9月の総裁選出馬を断念して新たな首相が選出され、新内閣のもとで10月〜11月に解散総選挙が行われているかもしれない。

いずれにしろ、1年後(来年春)には解散総選挙は終わり、自公連立政権が継続しているか、そこに野党の一部が加わって連立政権の枠組みが広がっているか、いずれかの可能性が高い。

来年7月には参院選が行われる。この参院選が与野党激突型になりそうなら、超党派会議の提言は、参院選後に先送りされるだろう。逆に総選挙後に新たな連立の枠組みができた場合(自公連立に維新や国民が加わる場合もありうるし、自公立の大連立に発展している場合もありうる)、参院選にむけてそれを正当化するために超党派議連が提言を発表することも考えられる。

いずれにせよ、今年と来年に行われる衆参両選挙と自民党総裁選をにらみながら、それらがすべて終わった後の消費税増税の与野党合意を目指して、財務省がいまのうちから布石を打ち始めたのが、この超党派会議の正体だ。私たち有権者は「与野党接近」の動きをよく理解しながら、来るべき衆参選挙で投票先を決めなければならない。

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