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防衛費財源は「増税か、国債か」の財政論争に惑わされるな!間違っているのは防衛費を倍増させる安全保障政策だ!

岸田文雄首相は12月8日、2023年度から5年間の防衛費を現行の1・5倍にあたる43兆円に大幅に増額することを表明した。財源を確保するために27年度まで複数年にかけて増税を段階的に実施することを検討すると明言。23年度の増税実施は見送るとした。

さらに27年度以降は防衛力を維持するために毎年4兆円の追加財源が必要になるとし、4分の3は歳出改革(つまり他の予算の削減)などで賄うとする一方、残り4分の1にあたる1兆円は増税で賄う考えを表明した。

岸田首相は具体的な増税項目を示さなかったが、「所得税が増加する措置は行わない」と約束。消費税は社会保障財源と説明してきた経緯があり、マスコミ各社は法人税増税が有力視されると報じている。

一方で、東日本大震災を機に導入された復興特別所得税(2037年まで。所得税の2・1%)を防衛費に転用する案も浮上しているとの報道もあった。これが事実なら岸田首相は「ウソつき」との批判を免れないだろう。

財源確保をめぐって岸田政権はてんやわんやのようだ。

この難解なニュースに潜む疑問をいくつかあげてみよう。

①そもそも防衛費の大幅増額は必要なのか?

防衛費を倍増してGDP比2%(年間約11兆円)に引き上げるべきだという声が自民党で高まったのは、ロシアのウクライナ侵攻がきっかけである。米中対立の激化による台湾情勢と北朝鮮情勢の緊迫に備えて防衛費を大幅に増やすべきだという主張を主導したのは安倍晋三元首相だった。

私はウクライナ戦争から学ぶべき教訓を完全に間違えていると思う。ウクライナに侵攻したロシアは確かに悪い。ただ、外交の究極の目的は戦争の回避であるという立場からは、ロシアの軍事侵攻を招いたウクライナは外交に失敗したともいえる。

ウクライナはロシアを仮想敵として米国から大量の武器を購入した結果、逆にロシアの警戒感を高めて軍拡競争をあおり、軍事的緊張を高めてしまった。防衛費の増額はロシア軍の侵攻を食い止めるどころか、むしろ誘発したのである。単なる無駄遣いにとどまらず、安全保障政策上も失敗だったのだ。

同じ構図は東アジアでも当てはまる。日本は防衛費を増額して米国から敵基地攻撃能力のあるトマホークなどミサイルを購入する予定だ。米国の軍需産業を潤わせ、東アジアの軍事的緊張を高めるだけだろう。憲法の専守防衛を逸脱するという違憲性の問題だけではなく、安全保障政策としても逆効果だ。

大事なのはミサイルを撃たせない、軍事的緊張を高めない外交努力である。防衛費を大幅増額すれば日本を守ることができるという発想自体が間違っている。大切なことは東アジアの軍事的緊張を高めないことだ。最初にこの点は指摘しておきたい。

②防衛費増額が必要だとしても、増税の必要があるのか

自民党内では清和会(安倍派)を中心に「防衛費増額は必要だが、増税はすべきではない」という声が強まっている。財源は国債発行で賄うべきだという主張だ。財政収支均衡(プライマリーバランス)を重視する緊縮財政派に対抗し、独自通貨を持つ国家は大胆な国債発行が可能であるという積極財政派の立場といっていい。

私も経済政策的には積極財政派を支持している。ただし、清和会のように「防衛費増額のための積極財政」は絶対に支持しない。

今回は詳しい解説は省略するが、緊縮財政によるデフレ政策は、富裕層の既得権益を守り、教育無償化や社会保障の充実を阻害し、貧富の格差を拡大させ、さらには階級格差を固定化する根本原因だと私は考えている。日本社会がこの30年、デフレに陥ってきたのは、緊縮財政を続けてきたからだ。

れいわ新選組が唱えている「誰一人見捨てない社会」を実現させるためには積極財政が不可欠である。国家財政の破綻を避けるために財政収支を均衡させなければならず、そのためには教育予算や社会保障予算の削減も止むを得ないという緊縮財政の立場を私は取らない。

しかし、積極財政の考え方を軍事予算にあてはめるのは大反対である。防衛費を増額するために国債を大量発行しても財政破綻はただちに起きないだろうが、軍事的緊張が高まって戦争を誘発し、多くの国民が命を落として国土が焦土と化す恐れは高まるだろう。経済政策としてではなく、安全保障政策として反対なのである。

積極財政を唱えるれいわはこの点を強調し、「国債を発行して防衛費増額を」という自民党清和会の積極財政論とは一線を画す必要がある。

③24〜27年度に検討する「段階的増税」とは?

岸田首相の増税に対する説明はいかにも難解だ。23年度の増税は見送るというのは、単に来春の統一地方選挙にむけて批判が高まるのを恐れたためだろう。いまは「物価高だから」と言う理屈は通らない。日本経済は国際競争力を失っており、23年度よりも24年度のほうが国民生活はさらに悪化している可能性もあるのだ。

それならば、24〜27年度の段階的増税とは何なのか。所得税、法人税、消費税の主要3税ではなく、たばこ税や酒税などを想定しているのかもしれない。いずれにせよ、さまざまな税収をかき集めるという極めて漠然とした計画なのだろう。要は、何も決まっていないのだ。

④27年度以降の「1兆円増税」とは?

岸田首相は27年度以降に安定的に必要となる4兆円のうち、1兆円は増税で財源を確保すると明言した。一方で所得税増税は否定している。

消費税は社会保障財源ということで増税を重ねてきた経緯があり、マスコミ各社は消去法で「法人税増税が有力」と報じている。

しかしそんなに簡単に決まるのか。私は疑問だ。何しろ自民党政権は経済界の味方である。これまでも経済界の要求を丸呑みして法人税減税を重ね、消費税増税で穴埋めしてきたのだ。

岸田首相の表明の翌日には早くも西村康稔経産相が記者会見で「経済界が過去最高水準になるような投資への意欲を示し、賃上げについても多くの企業が意欲的な方向性を示している。この5年間が日本経済再生に向けたラストチャンスだ」と述べ、法人税増税を警戒する経済界を代弁した。

そもそも岸田首相の政治基盤は弱く、2024年の自民党総裁選で再選を果たせる可能性は低い。その首相が27年度の増税の話をしたところで、どれほど当てになるだろうか。要は何も決まっていないのだ。経済界の強い反発を受け、けっきょくは国債発行か、さもなくば所得税や消費税の増税で財源を確保する羽目になる恐れは十分にある。

⑤「増税か、国債か」ではない!

結局のところ、防衛費増額の財源については何も決まっていない。「増額する以上は増税で財源を確保すべし」という財務省と「大胆な国債発行で確保すればいい」という自民党清和会のバトルが繰り広げられるということである。財務省と伝統的に親しい宏池会の流れを汲む岸田派や麻生派や、消費税増税を掲げた民主党の流れを汲む立憲民主党は、財務省に加担するだろう。

しかし、この二項対立のどちらか一方に正解があるわけではない。そもそも防衛費増額は不必要であるばかりか軍事的緊張を高めて日本列島を危険にさらす愚策なのだ。

いま問われているのは根本的な安全保障論である。「増税か、国債か」の対立に惑わされないようにしたい。


鮫島タイムスYouTubeの週末恒例企画「ダメダメTOP10」でも防衛増税を取り上げました。ぜひご覧ください。

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