政治を斬る!

新刊『朝日新聞政治部』5.27発売! 保身、裏切り、隠蔽、巨大メディアの闇〜独立から1年、渾身の単行本

私が朝日新聞社を49歳で退職して1年。『朝日新聞政治部』(講談社)を刊行することになりました。

保身、裏切り、隠蔽、巨大メディアの闇。崩壊する大新聞の中枢。すべて実名で綴る内部告発ノンフィクションーー。新刊の帯にはおどろおどろしい言葉が並んでいます。

巨大新聞社はなぜ凋落したのか。私自身が政治部デスクや特別報道部デスクを歴任し、新聞編集の中枢で体験したことをありのまま描くことで、権力監視の責務を放棄している現在の新聞界に一石を投じる思いで書き上げました。

デジタル革命に乗り遅れ、誰もが自由に発信できるメディア新時代から取り残された新聞社の実像もリアルに明かしています。

5月27日発売です。すでにネット予約は可能です。


朝日新聞凋落の真相を克明に

朝日新聞社が安倍政権に屈服し、新聞ジャーナリズム全体が国家権力に萎縮し、さらには加担するきっかけとなった2014年の三大事件「吉田調書」「慰安婦記事取り消し」「池上コラム掲載拒否」。経営や編集を牛耳ってきた政治部出身の経営陣たちはどこで何を間違えたのか。

特別報道部デスクとして一連の事件の渦中に身を置いた私が、朝日新聞が伏せてきた事件の真相を克明に書き記しているところがこの本のクライマックスです。

そのうえで、私がこだわった3点について紹介したいと思います。

①政治報道の裏側をリアルに明かす

私は一連の事件の真相を伝えるにあたり、単なる「内部告発本」に終わらせたくはないと考えました。朝日新聞はなぜ失敗したのか、一連の事件を招いた過程をできるかぎり構造的に描くことにしました。

朝日新聞社を牛耳ってきたのは政治部出身の経営陣たちでした。長く政治部に在籍した私の先輩たちです。朝日新聞凋落の原因を究明するには、政治部とはどのような組織なのか、政治記者とはどのような人々か、その実像を明らかにすることが不可欠であると考えました。

政治報道に対する批判は世の中に溢れかえっていますが、政治部デスクを務めた者が内部から批判することはほとんどありません。そこは閉ざされた世界です。

私の政治記者としての取材経験を包み隠さず打ち明け、政治報道の実像をリアルに伝えることにしました。私が担当した与野党の政治家や朝日新聞の歴代政治部長をはじめ新聞記者たちが次々に実名で登場します。

永田町の取材現場や朝日新聞社内の編集過程のエピソードをふんだんに紹介しながら、外部からはうかがい知れない政治報道の現場をさらけ出しました。

②調査報道とは何か〜実際の取材例で伝える

私は政治記者としては珍しく、記者クラブに属さずに埋もれた事実を掘り起こす「調査報道」にも長くかかわってきました。

朝日新聞社が調査報道に専念するチームとして設置したのが特別報道部でした。私は初代メンバーとして参画し、組織づくりを主導しました。政治部、経済部、社会部という旧来型の縦割り取材を打破して調査報道を新聞報道の中心に据えることを目指したのです。各部の抵抗は激しいものでした。

この本では、特別報道部が実際に報じたスクープ記事の取材の内幕を紹介しながら「調査報道とは何か」をお伝えするとともに、首相官邸や検察・警察などの国家権力に寄り添う政治部や社会部に挑んだ特別報道部の社内闘争を克明に描いています。

特別報道部は新聞協会賞を連続受賞し、一時は政治部や社会部をしのぐ勢いを示しますが、最終的には敗れ去り、解体されてしまいます。特別報道部の挑戦と挫折の歴史をすべて明らかにしました。

③絶頂から奈落の底へ〜スリリングな企業物語

もうひとつ執筆にあたって心を砕いたのは、政治やジャーナリズムに関心のない読者にもハラハラドキドキしながら読んでもらえるように、ストーリー性を重視したことです。

私は幸か不幸か新聞記者としては浮き沈みの激しい数奇な記者人生を歩んできました。

自分が実際に体験したことに極力限定し、登場人物は極力実名としました。ノンフィクションであるけれども、企業小説を読むようなテンポで書き進めたつもりです。

39歳という異例の若さで政治部デスクに抜擢され、新聞協会賞を受賞して社内を大手を振って歩いていた私が一瞬にして奈落の底に転落する「実話のサラリーマン物語」を臨場感あふれる数多くのエピソードで綴る構成になっています。


新聞社を去り、小さなメディア「SAMEJIMA TIMES」を創刊して1年。ウェブサイトで、ユーチューブで、ツイッターで、読者の皆様と直接触れ合いながら、新聞記者時代は自分自身がいかに閉ざされた世界に身を置いて内向きなマインドで生きてきたかを痛感する日々を過ごしています。

新聞記者人生を総括し、次世代のジャーナリズムを生み出す決意を新たにして、渾身の思いで書き上げました。ぜひお手に取っていただければ幸いです。(ネット注文はこちらをクリック

『朝日新聞政治部』209頁に「朝日新聞朝刊に『吉田調書』入手の第一報が掲載された時点で『吉田調書』を読んでいたのは木村、宮崎、堀内、私の記者4人だけである」との記載がありますが、堀内記者が吉田調書を読んでいたという事実はありませんでした。訂正します。

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