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ヨコハマの顔「みなとみらい」には太陽光パネルが見当たらない!神奈川県と横浜市が再生エネに無関心な本当の理由〜池野青空

上の写真は私が4月24日(日)に撮影したものである。ここは横浜市の顔である「みなとみらい」地区だ。ご覧の通り、神奈川県が誇るこの「未来の街」には、なぜか太陽光発電パネルが一枚も見当たらない。

大規模展示ホールの屋根は、太陽光パネルを設置する最適の場所であろう。駐車場の屋根もいい場所だ。それなのに、どこにも太陽光パネルが見当たらないのである。

神奈川県は県立高校の屋上への太陽光パネルの設置は進めているものの、県営住宅には全く設置していない。

横浜市は2024年春までに市立小中学校の65校の屋上に太陽光パネルを設置することを計画している。これは市内の全小中学校の1割強でしかない。その他の市有施設への設置計画は、私が調べた限り見つからなかった。

神奈川県にも横浜市にも太陽光パネルの設置を進める意欲がまったく感じられないのだ。

2020年度に新庁舎へ移転し、100%再生可能エネルギーを実現しましたーー横浜市は2020年度の「横浜市再生可能エネルキー活用戦略【概要版】」でそう胸を張っている。しかし、ほとんどが再生可能エネルギーの購入である。太陽光パネルは屋上部分に少しあるだけだ。

神奈川県が2012年3月にまとめた「かながわグランドデザイン基本編」の表紙(下図)をご覧いただきたい。各戸の屋根には太陽光パネルが設置され、風力発電の風車が2基もある。この構想は、東日本大震災後に電力が逼迫した状況でまとめられた。現在はほど遠い状況だ。

神奈川県と横浜市の環境政策を調べて感じたのは、以下の二点である。

(1)自分たちで再生可能エネルギーを生産するという発想がない。購入すればいいと思っている。

(2)カーボンニュートラルの意識が全くない。省エネ対策ばかりで、炭素を吸収する植林などの計画や実施状況が見当たらない。

カーボンニュートラルは「二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量から、植林、森林管理などによる吸収量を差し引いて、合計を実質的にゼロにすること」と環境省のホームページで定義されている。

(1)に関して、2021年7月の「かながわグランドデザイン評価報告書2020」の29ページには「太陽光発電の導入量(総数で単位は万KW)」が示されている。

2019年の目標は320万kwだったが、達成したのは92.2万kw(283世帯分)。達成率はわずか28.8%だ。

そもそもKPI(重要業績評価指標)として設定する数字が少なすぎる。2022年度の目標は455万KWで約1400世帯分にとどまっている。

共産党県議に取材すると、県の基本計画であるグラウンドデザインで設定される環境政策だけに限らず、全てのKPI値の妥当性さえ、県議会では議論されたことはないという。神奈川県庁が計画を決め、県庁内部で評価してきただけのようだ。

この評価報告書によると、各目標にKPIが設定され、毎年度PDCAサイクルを回し改善していくマネージメントサイクルが記述されている(4ページ)。しかし、達成率があまりに低いにもかかわらず、原因の究明もなされていなければ、改善策を計画して実行するPDCAサイクルも全く見当たらない。

マネージメントが全く機能していないのだ。民間企業ではあり得ないことである。

ちなみに岡山県のホームページを見ると、県の基本計画である「晴れの国おかやま 生き活きプラン」でKPIが設定され、フォローアップもされている。

県の担当者に電話すると、KPI値の妥当性を含め、PDCAサイクルは県議会で何年も前から議論されていると言う。神奈川県議会ではまったく議論されていないと伝えると、担当者はびっくりしていた。

岸田首相も去年12月の国会でKPIを設定し、PDCAのマネージメントサイクルを回して政策を実行していくと発言をしている。しかし、その設定値を含めて報道されることはない。

このKPI問題については次回以降、さらに問題提起を続けたい。


(2)に関しては、神奈川県も横浜市もボランティアに頼っている印象しかない(横浜市の道志水源林ボランティア事業など)。

神奈川県は新しい石炭火力発電所を小泉進次郎・元環境大臣の地元である横須賀市に建設中である。この発電所から新たに発生する温室効果ガスを吸収する植林を含め、カーボンニュートラルの計画を見直すことが必須だ。

横浜市は花博の為に桜並木を伐採する本末転倒の計画を進めている。

県と市には環境政策が全く無いに等しいと思っていたら、4月26日に気になるニュースが飛び込んできた。横浜市が国の「脱炭素先行地域」に選ばれ、みなとみらい地区や小中学校の屋上に太陽光パネルが設置されるというのだ。

本来は横浜市が真っ先に予算を付けて設置を進めるべきなのに、国の予算で設置することになったようだ。横浜市民として情けないと言うか、恥ずかしいと言うか、申し訳ない気持ちになったが、少しでも再生エネに対する市民の関心が高まればいいと願う。

同時に、太陽光パネル設置工事やメンテナンスは、基本的に地元企業の仕事である。待ったなしの環境対策に国が予算を付けて本格的に動き出したことに、政官財の新たな利権の胡散臭さを感じるのは私だけではないだろう。

環境政策を強力に進める為には、以下の(A)が必須であり、それを実行する為に(B)と(C)が必須である。

A.再生可能エネルギー導入を確実に実行する政治家を選ぶ

東日本大震災後にまとめられた神奈川県の「グランドデザイン」の表紙から見てわかるように、当時は脱原発で再生エネ導入の国民的気分が高かった。私も数回、官邸前の脱原発デモに参加した経験がある。

その流れを大きく変えたのが、旧民主党の野田佳彦政権と、その後の自公政権の原発再稼働推進政策だ。

電力会社は再生エネの普及を望んでいない。電力供給が分散して売上が減るためだ。経済界も安定的な電力供給が不可欠で電力会社に逆らえない。テレビ局や新聞社もスポンサーを重視して脱原発の話題は避けがちだ。大規模デモはほとんど報道されなかった。

その結果、再生エネ導入の気運は急激に落ち込んでしまった。テレビと新聞がかつてあれほど持て囃した小泉純一郎元首相が脱原発を主張し始めたとたん、テレビと新聞に登場しなくなったのである。

これらの圧力に屈せず、カーボンニュートラルを確実に実行する政治家を選ぶことが唯一の選択肢である。

県と市の担当者と電話で話した時に、ある若い担当者がボソッと「もっと市民の後押しが必要です」と言っていた。確かに横浜市はここ何年も市民の多くが反対するカジノを誘致する市長との対決に多くの時間を取られてきた。

横浜市はカジノの他に、現在でも花博と旧市庁舎の利用に関する大きな問題が存在する。この問題も後日、まとめて報告したい。

カジノ反対を掲げる市長を選挙で選んだように、環境政策を確実に実行する首長、県議、市議を選挙で選ぶことが最も重要である。

B.市民一人一人が環境を意識し日々の生活で地球温暖化防止に取り組む

とはいえ、実行するには予算もかかり、一個人が出来ることは限られている。環境問題を重視する政治家を選挙で選んで行政を変えていくこととあわせて進めていくほかない。

個人の取り組みは、岡山県のホームページ「家庭でできる地球温暖化防止のとりくみ」で、簡潔にまとめられている。神奈川県と横浜市のホームページには見つからなかった。これも県政と市政の環境対策への関心の高さが影響しているのではないかと思う。

C.テレビと新聞の地方版の改善

今まで朝日新聞や東京新聞などを読んできた。しかし神奈川・横浜版は事件や事故の社会部ネタと、無料で配られるタウンニュースと大して変わらない情報ばかりである。環境政策だけでなく神奈川県政と横浜市政の情報、いわゆる政治ネタが掲載されることはあまりない。こんな状況では情報は自分で取りに行くしかない。

ホームページで議事録を読み、県議や市議に電話して情報を得るのは敷居が高く、時間もかかる。やはり知事や市長の記者会見に出席できるメディアの力が必須である。

テレビと新聞は、国政並みに自治体の環境政策の実施状況を報道し、市民の関心をもっと高める努力をするべきである。

池野青空(いけの・せいあ)

横浜市在住。日本の大手企業に20年勤務した後、25年間グローバル外資系企業で東アジアのITとセキュリティ担当のマネージャーとして勤務後、去年65歳となり引退。ITの経験者誰もが、普通に疑問に持つ、国や自治体のシステムをいろいろ、みなさんと考察したい。写真はハンブルグ出張時にビートルズのジョン·レノンが滞在したアパートの前です。