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こちらアイスランド(50)お肌すべすべの超軟水!世界に9カ国しかない「水道水をそのまま飲める国」〜小倉悠加

「こちらアイスランド」50回目記念は水と空気。あまりにも当たり前で素通りしてしまうが、これを欠いては生命維持ができない。私がアイスランドを大好きになった理由に水と空気がある。そのことは以前の投稿にも書いた通りだ。

アイスランドといえば大自然が売りで、それはオーロラだったり、滝だったり、地球の割れ目だったりする。初めてこの地を訪れた2003年は、観光に時間をさけない出張であったため、最も大きく印象に残ったのは音楽シーンで、その次が水と空気だった。

水と空気は、大自然やオーロラのような宣伝の謳い文句にはならないけれど、私は素晴らしい、そして誇るべきとても大きな要素だと思う。

ちなみに2018年国土交通省が制作した資料によれば、調査では「水道の水をそのまま飲める国(日本を含む9 カ国)、あるいはそのまま飲めるが注意が必要な国(21 カ国)は、世界の中ではごくわずかしかない」とある。アイスランドはその稀なる9カ国の中に入っている。その上、水質が素晴らしい。

溶岩にフィルタリングされた水が流れ落ちて優美な滝にもなる。

アイスランドの水道水は天然水で、氷河の水が何十年もの間溶岩にフィルタリングされ、家庭の蛇口をひねれば出てくる。もちろん水質検査はしているが、塩素等の薬品は一切加えられていない、ピュアな水だ。

水が当たり前に美味しい。超軟水できめ細かな舌触り。のどごしもさらりとしている。PHは8.4でアルカリ側なので、食事が酸性になりがちな現代人には、飲むだけで健康になれそうなありがたい水でもある。

軟水にはミネラル分が少ない。そしてアイスランドの水道水は超軟水だ。私は緑茶がとても好きなのだが、正直なところ緑茶を淹れると、よほど茶葉の量を多くしないと雑味が少なすぎて物足りなく感じる。ガツンとした濃厚さや、とろりとした甘味が希薄にしか感じられない。超軟水を使う場合、茶葉の種類による向き不向きもあろうことだろう。コーヒーはあまり飲まないので分からないが、緑茶に関しては、日本の水の方が向いていると思う。

水がきれいだということは、料理にも大きく関係してくる。アイスランドの料理全般が美味しいのは、水がいいということも大いにありそうだ。なにせ天然水で洗い、調理する。素材の持ち味を素直に反映する水ではないかと思う。この辺は、料理の専門家にぜひそお尋ねしたいところだ。

滝の近くの水は、その場ですくって飲んでも格別に美味しい。

アイスランドに観光客が押しかけるようになり、水でのトラブルが発生するようになった。悪質なホテルが、宿泊客に「水道水は飲まないでください。冷蔵庫のペットボトルの水をどうぞ。一本400円」のような貼り紙をしていたという。そのペットボトルの水を調べてみると、”飲まないでください”という水道水そのものだったという、笑えない事件が起こった(ちなみにそのホテルは潰れた)。

観光業界はこの出来事を重く見て、それを逆手にとっての観光キャンペーンを打ち出した。題して「無料でクラナヴァ(Kranavatn)をどうぞ」。いい感じの専用サイトまで用意した。
クラナヴァとはエビアンやヴィッテルのような、アイスランド・ブランドの水なのか?うんにゃ、日本語に訳せば「無料で水道水をどうぞ」でしかない(笑)。

これが「アイスランド各地の蛇口から無料でお飲みいただけるクラナヴァ」の宣伝動画。

ピュアな水は美容にも悪いはずがない。悪いはずがないどころか、毎日天然水で顔を洗うことができる。美容に気を遣う女性は、スキンケア製品などに投資をしていることだろう。そしてスキンケアの基本は洗顔と保湿。その洗顔を、ピュアな水で、それもふんだんに使えるのは最高の贅沢ではないか。

日本も私が子供の頃は、「水はタダ」と言われていた。美味しく安全な水がどこにでもあり、文字通り水はタダだとじゃぶじゃぶ使っていた。アイスランド人にはまだそういうところがある。子供の頃からの習慣だそうで夫は歯磨き中、水を流したままにする(私はそれがとてもいや!)。アイスランド国内のことは仕方がないが、日本滞在中は絶対にそれをやってはいけないと釘をさした。

火山国なので火山帯や温熱地帯が国のあちこちに点在している。

アイスランドの家庭の蛇口からは、温水と冷水が出てくる。同じ蛇口から出てくるが、水源が異なるため、温水は生活用水(風呂、洗い物)等に利用するためのもので、飲用は前提としていない。それでも、基本的には人畜無害で飲んでも害はないし、90%は飲料に適した質を保っているという。ただし、温水には若干硫化水素が混ぜられているため(パイプの腐食防止等のために注入)、若干硫黄臭があり、飲むと不味い。

温水の水源は地域により異なり、硫黄分を含む天然の温泉の場合もあれば、地熱発電所で冷却水として使われた温水が配られることもある。どちらにしても、地から湧き出す天然水には違いなく、ということで、アイスランドの家庭のお風呂も天然水で満たされる。

アイスランドのホテルはシャワーだけの部屋が多く、初めてゆっくりと「風呂」に入ったのは、友人宅に宿泊させてもらった時のことだった。それは猫足のついた、いかにも西洋のお風呂です!という出立ちで、なかなか迫力があった。そこにたっぷりと湯を張って入るとーーお湯がつるつるしてる!なにこれ、化粧水の中にでもはいってるのか?!ーーと驚いた。硫黄泉なので、かなり美肌効果がありそうなことがありありと感じられた。

そして本当に肌がきれいになる!5日間から一週間も滞在すると、日本に帰国する頃にはお肌がしっとりすべすべ。髪の毛がやわらか〜くなる。それが一生続けばありがたいが、だいたい帰国後3日間程度で元に戻る気がする。

世界的一の広さを誇るブルーラグーン。地熱発電所の冷却水が露天風呂に使われている。

アイスランドの水の効果がどれほどのものかといえば、帰国直後にジムへ行った時、一度こんなことがあった。ジムの一角に美顔器の臨時販売コーナーが設けられ、冷やかしに寄ってみたのだ。

定位置に私を座らせ、美顔器を当てる前に私の顔の肌を触った販売員の女性が「え?!」と小さな声をあげた。表情がガラっと変わったため、それほど肌の状態がひどいのかとドキっとした。

「お肌、ものすごくきめが細かくて柔らかいんですね」と。ん?それって褒め言葉じゃん。

美顔器を売りたいのであれば、あまりいいセールストークではないと思った。きめ細かな肌に美顔器は売りつけにくいだろう。「お肌の手入れ、どうしてますか?」と逆に尋ねられた。ジムの帰りなので、シャワーや風呂を浴びた人が多い。保湿がしっかりしている肌を触ってきたけれど、これだけしっとりきめ細かな肌は滅多にないと言われた。

うふふ、それほどにアイスランドの水は効果絶大なのだ。

美容に気を遣う女性には大いにアイスランドに来てほしい。美肌効果は長く持続はしないけれど、水が変わると、これほど肌が変わることを実感してほしい。アイスランド帰国後数日は、私はいつも顔や手を触りながら「アイスランドの水よ、ありがと〜。ほんと、すべすべで気持ちいいわぁ〜」と悦に入る。

おっと、水の話がひどく長くなってしまったので、空気に関しては手短に。総人口37万人の島国で、大半をグリーンエネルギーで賄っていることもあり、推して知るべしでーー

アイスランドの空気はおいしい!

小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。自己紹介コラムはこちら

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