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オーストラリアから日本を思って(23)「増税しないと、良い福祉はできないの!?」日本でも消費税0%で救民内閣は実現できる!オーストラリアで分かったこと~今滝美紀

日本とオーストラリア政府の「税」と「お金の使われ方」を比べていると、それまで意味が分からなかった「税は国家なり」という言葉が浮かんできました。経済や税について、門外漢ですが、理論というより豪州で現実に行われていること、一般庶民としても分かる点でお伝えしたいと思います。

オーストラリアと日本は、大まかな税制の種類は同じですが、実情は大きく違うと思います。一般的には、豪州と日本は、“高税で高福祉”“(北欧の社会主義より)と”低税と自己責任“(アメリカの自由主義)の中間です。豪州は“中税金と良福祉”。しかし、日本の実態は、“裕福層・大企業優遇”“庶民冷遇の税制”だと言われるようになりました。

オーストラリアで、大切にされているのは「選択の自由」だということです。この仕組みが、庶民も高い税金を払わなくても、よい福祉を受け、老後を過ごせることを可能にしています。

言い換えるとオーストラリアは、裕福層などお金を使いたい人にはお金を使ってもらい、そうでない人々はお金を使わなくても良福祉が受けられるという、「選択の制度」です。ですから、裕福層がお金を使う分、それが、政治家ではなく庶民にバックされる所謂“富の再分配”の仕組みで社会が回っています。これは、オーストラリアで国民が共有する「国のあり方」です。

一方で、日本には「借金が多い!財政危機だ!」とよく聞きますが、実は資産から債務(借金)を引くと何十兆円も黒字になることが明らかになったとも聞かれるようになりました。

また、「消費税を減税/廃止すると年金が減る、福祉ができない、少子化対策ができない」という主要メディアやインフルエンサー、財務省、政治家たちに繰り返し吹聴されて、集団催眠にかけられたように減税恐怖症という日本独特の病が広く定着しているようです。     

しかし、増税・緊縮の中、“自己利益と利権分配”に使われる公金、“30年間衰退と低賃金”でこの間違いを非難する声が高まり、多くの人々がおかしいと気づきだしました。これを変える“救民内閣”のための政権交代を実現する、またとないチャンスが到来しています。                      

日本のGDP国内総生産は、ドイツに抜かれ世界第4位になると言われますが、まだ経済大国です。しかし一人当たりGDP世界32位です。オーストラリアのような“富の分配”を採り入れれば、泉房穂さんの提唱する救民チームの「消費税0%(食料と必需品など)へ引き下げる②医療、教育費を無償にする柱」は十分実行可能で、今なら日本を復活させることができると思います。

そのために日本に取り入れられる、オーストラリアの仕組みを紹介したいと思います。

1 豪州は日本より所得税率が低く手取りが高い、低所得者は税も医療保険も0% 

税率だけを見るとやや豪州の方が高いですが(参照1参照2)、日本では年収1000円から5%の税がかかり、100万円でも20万円近く取られます。下の表で日本と豪州の所得と手取りを比べると、日本では低中所得者に厳しい税制です。

豪州では、182万円以下は税率0%+医療保険$0)で、手取り率100%。全体的にも手取り率が高く、低中所得者層で約40万円も違います。


 年間の所得日本の手取り・手取り率豪州の手取り・手取り率
100万円  83万3,972円     83%100万円   100%
180万円145万3,636円     81%180万円   100%
200万円163万1,620円     81%196万5800円 98% 
300万円235万5,992円     80%271万5800円 91%
400万円311万9,828円     79%350万5800円 88%
500万円387万0,428円     78%422万8300円 85%
600万円457万7,300円     78%488万3300円 81%
700万円524万1,584円     76%553万8300円 80%
800万円589万9,136円     74%619万3300円 77%
900万円657万4,196円     73%684万8300円 76%
1000万円722万8,772円     72%750万3300円 75%
2000万円1292万0,904円   65%1353万3300円   68%
3000万円1773万3,704円   60%1883万3300円   63%
4000万円2263万4,904円   57%2413万3300円   60%
5000万円2721万7,204円   54%  2943万3300円   59%
一億円4917万8,604円   49%  5593万3300円   56%

(参照1https://studyfire.jp/?c=simulation/income_table 2https://www.musashi-corporation.com/wealthhack/annual-income-net-income#13https://moneysmart.gov.au/work-and-tax/income-tax-calculatorを基に現在の為替レートを概算で日本100円=1ドルで計算し、表にしました)


社会を維持していく上で欠かせない、看護師・介護士・教員・小売店・スーパー等で働くエッセンシャルワーカーは、決して高所得ではないけれど、大切な存在ですから、税も考慮されています。

2 オーストラリアでは、年金保険・介護保険・住民税を払わなくていい!

健康保険

医療について“選択”の制度が使われています。メディ・ケアという一般的医療が無料で受けられる医師や公立病院があります。高額な私立の病院を選んで、医療を受ける人々もいます。庶民は無料の制度を選択する人々が多い一方、裕福層は、よりお金を使い、公金を使わないということです。所得が年間182万円までの人は、健康保険料を払わず、無料で一般的医療を受けることができ、弱者を助ける仕組みです。

年金保険料はゼロ、しかし日本より高額の年金支給

年金と介護保険は、他の税収から賄われます。年金は、収入や資産の有無で、額が決まります。投資、不動産、報酬、労働などで収入が十分ある、裕福な年配の方は、年金を受けていません。最近、年金は上がり、上限はシングル(お一人さま)で4週間で約22万円、カップルで一人約16万6千円(二人で約33万円)です(こちら参照)。生活に年金が必要ない裕福層の年金が、必要な人々の年金となる、“富の分配”がされています。

派遣・転職でも保障される退職金

オーストラリアは、派遣や契約社員、転職者にも退職金が支払われるスーパーという退職金制度があります。

雇用者は給与の11%(2015には12%)の退職金を、労働者が登録する退職金会社の口座に定期的に支払う義務があります。これは、退職したり、高齢に達した時に支払われます。低中所得者も、これで数千万円を受け取ることができます。これが高齢になった時に、安心して暮らすための、豪州の重要な制度として捉えられています。                              

これは、1991年労働党政権で発明され実現したシステムです。口先の一般人に分かりにくい理念やイデオロギーではなく、この全ての労働者・庶民のために結果を残し維持し向上していることで、労働党の信用が高まりました。“政治は結果だ”を証明しています。

介護保険もゼロ、政府がほとんど負担

高齢者介護も経済的状況で援助額が決まります。裕福層は、自分で全額負担し、その分、必要な高齢者にお金が使われます。オーストラリア政府は、老人介護施設での生活費のほとんどを負担します。高齢者は、“国を支えてきた大切な存在”という考え方です(こちら参照)。

日本では所得税から保険料や住民税が引かれますが、オーストラリアでは、医療保険一律2%のみで、前述したように年収182万円以下は、医療保険も税も0%です。 

住民税もゼロ 

豪州では、自分の不動産を持つ人が、不動産の価値に応じて決められる税を、その地方地域に納めます。地域がそのお金を使い、地域のサービスや施設をつくったりします。だから、低所得者が多い、賃貸暮らしの人々は、払わなくてよい制度です。固定資産税もありません(こちら参照)。

3 弱者にやさしい消費税

食品・必需品は消費税0%

オーストラリアの消費税は日本と同じ10%ですが、基本的な食料やいくつかの生活必需品は0%。消費全体の約50%にしか掛けられていません。その分、法人税がアジア諸国より高いそうです。

日本では、ホームレスや収入のない人々にも負担を掛ける人頭税で、“国の在り方”が問われます(こちら参照)。

立憲民主党は、消費税減税/廃止ではなく、「低・中所得者に消費税の負担額の半分的に還付」を進めています。しかし、仕事や生活に忙しい庶民は、少額のお金のために、その内容を理解し、書類づくりに時間を割かなければなりません。オーストラリアでも「時は金なり」と言われます。庶民を助けるには、消費税減税/廃止の方が良いと思います。

オーストラリアの消費税は全額、各州/地方に分配される

日本では、地方には約2%のみが地方に分配されるのみです。しかし、オーストラリア全体で消費税は、税収全体の12%(日本は約30%)で、全て全州に配布され、州で使い道を決めることができます。国が責任を持つ福祉・教育・年金には使われません。また、人口が多い裕福な州から少ない州へ予算が送られています。消費税増税には、各州の賛成が必要です。

ここで泉房穂さんが言う廃県置圏(県名は地名として残して)の重要性が見えます。日本でも、消費税を圏に全額配布し、“地域のことは、地域の人々が考え決める”ことで、地方がもっと自由にクリエイティブになり、圏域が競い合い、日本全国に活気が戻るきっかけになります。

より地域に権限や自治権を与えて、市政など草の根政治は残しながらも、政治の自治の範囲を広めてより住民の思いが叶う政治で、地域を創っていく。これこそ民主主義だと思います。

一部の国会議員が北陸での地震後、人口減予想を理由に、過疎地の復興に反対し、都市集中型を訴えていますが。これも、中央政府が地方の在り方を決めようとする、日本の中央集権型政治の弊害だと思います。廃県置圏は、民意に反する中央の独裁政治を阻止できるものだと思います。

オーストラリアでは先日、人口が予想より約20年早く2700万人に達しました(こちら参照)。人口の予想は、あくまで参考で、増やそうと思えば増やせるものですが、人口減が予想されるから、と人口減ありきで、それを受け入れ人口減の地方を見捨てることは、日本の衰退を進めているようです。

例えば、最近サムソンは、13の言語を同時通訳会話できる通訳機能を開発したというニュースがありました。日本文化の海外人気は、絶大です。モダンテクノロジーと伝統的な日本文化を組み合わせて、地方のユニークな文化・習慣・生活を学んだり、体験するプログラムを提供したり、地方や過疎地に限定した、ワーキングホリデービザで、過疎地の収入や活性化が進み発展する可能性もあります。そこで経験した外国の人々が世界に日本文化を広めるでしょう。これらを国にコントロールされることなく、地域の人々が自分たちで考え行えるようなシステムづくりの廃県置圏に期待します。

日本の消費税は価格の10%+人件費もかかる

私が日本の消費税で驚いたのは、事業主は価格の10%だけでなく、人件費にも消費税が掛かっているということです。また、価格競争で消費税10%を上げられない小さな事業は、やり繰りが難しいそうです。ですから、赤字でも、税金を払わなければいけない。法人税+第二法人税(消費税)その結果、倒産、閉店する事業が増えているそうです。一方海外に輸出すできる大企業は、この消費税はかからず、ここでも裕福層への“逆所得の再分配”が行われています。消費税を廃止し、庶民が買えない高価なものに、物品税/贅沢税を掛ける提案がされています。

これは、れいわ新選組や山本太郎代表と一緒に街宣していた、安藤裕(前衆議院・前自民党)、立憲や自民党の一部でも繰り返し訴えていることです(こちら参照)。

ちなみに安藤裕さんは、理念や政策の違いはあっても、れいわ新選組からの国政選挙立候補を前向きに考えているそうです。この大同小異の広がりに期待します。

オーストラリアの消費税に、人件費税はかからない

オーストラリアでは年間売り上げ約800万以下には、消費税はかかりません。人件費税は州税で、NSW州の人件費税は1年間の人件費が1.2億を超える事業のみで、消費税の10%より低い5.4%の税率です。

消費税増税は経済連(大企業・裕福層)のため

また、中日新聞によると『自民党に毎年24億円献金、経団連会長「何が問題なのか」と発言の報道にネットの怒り沸騰』と癒着で超裕福大企業に更にお金を献上するために、消費税制度がつくられているようです。

4 先進国に例のない日本の低賃金 

オーストラリアの最低賃金は、全国一律で時給約2300円、週給で約8万9千円です。

所得が倍になれば、政府の税収も増えます。人口は少なくても、広いオーストラリアの国のインフラも維持しています。狭い日本で、オーストラリアの約5倍の人口で、所得が2倍になれば、人口減でも全国のインフラの維持できるのではないでしょうか。

安藤裕さん(前衆議員・税理士)によると日本は、消費税に人件費税が含まれているので、業者が税金対策で、給料を抑えるから賃金が伸びない、とのことでした。

消費税減税/廃止をせず、賃金を上げず、衰退止めの対策を打たず、インフラの維持ができないからと、地方を切り捨てることを訴える議員が目立つことが、気になります。

また、豪州では労働組合が賃上げや減税を強く政府に要求し結果を残しています。2023年に賃上げが実現し、この7月に全労働者に一人当たり約8万~40万の所得税減税が行われます。

しかし、日本の労働組合(連合)は、自民党とも近く、労働者への結果も出さず、労働者の加入も少なく、更に勝共連合で野党分断をつくり、庶民に悪影響さえ及ぼしているようです。解体し真に労働者のための組織が日本には必要ではないかと思います。

5 無料の教育費 

オーストラリアでは、公立の小中高は、無料です。一番優秀だとされるのは、公立高校です。義務教育は高校1年までですが、2,3年も無料です。日本では、教材費・遠足代などが等しく集金されますが、オーストラリアでは、払える保護者は寄付として払い、払えない保護者に支払いは強制されません。さらに保育園と幼稚園も無料化が進み、クイーンズランド州では、国も援助して週15時間が無料となりました(こちら参照)。ここでも“選択の自由”の仕組みで、私立学校に通いたい人々は、高額な学費を払っています。

オーストラリアで技術職の免許認定は、州立の技術高等学校(TAFE/ Technical and Further Education)で行われています。ここで、国と州が1000億円の資金を出し合い、多くのコースが無料化しています。無料になる興味深い分野に“国家の主権を守るための能力”コースがあります。他の無料分野は“高齢者・障害者介護・幼児教育・健康管理・テクノロジーとデジタル・おもてなしと観光・建築・農業”です。(こちら参照

6 ビジネス(教育など)での収入

オーストラリアの大学は、ほとんど公立で、ほとんどの学生が政府から授業料の援助を受けられます。授業料支払いの延期も認められ、遠隔地に住む学生には、奨学金が出ます。豪州人への授業料は高くないのですが、留学生には何倍もの授業料が設定されています。特にアジアの裕福層の留学生たちが集まり、これが年間約30兆円も経済効果を生んでいます(こちら参照)。

日本ではなぜか逆で、地方や低所得家庭は大学を諦める子どもたちが多い一方、留学生に授業料・生活費・旅費まで政府が手厚く支払います。

“税が財源”だと、増税の主張を続ける、議員の方々は、発想の転換をして、政府がビジネスを起し、“収入を増やし、税を減らす”工夫ができるはずです。世界で日本文化人気は高く、アニメやマンガだけでも、多く人々が学びたいはずです。前述したように、多言語同時通訳機能で、その他のビジネスの枠も大幅に広がるはずです。

7 税金が戦争を続けることに使われている!?

米国のブリンケン氏は、ウクライナとロシアの人々が日々命を失い、国土が破壊されているのに、自国の経済のために続けたいという旨を次のように記者会見で述べていました。

「ウクライナに与えられた米国の資金の90%が米国に戻って、米国の工場で(軍事)製品がつくられ雇用を生み出している。『双方にとって利益』であり、米国の経済成長の機会であるから続けたい」(こちら参照

ロシア外相は国連で非難する様子が豪州のSBS(公共局)で報道されていました。(こちら参照

これは、日本や西側諸国政府は、巨額の税金をウクライナに送っていますが、その多くが米国の軍事産業の利益になっている、“キックバック”ということでしょう。

ジュリアン・アサンジさんが10年以上前から指摘する「目的は、成功しなくても終わらない戦争を続けること」の意味をブリンケン国務長官が自ら説明した形になりました。そして、勝たなくても抵抗勢力となる国々にダメージを与えることが目的でしょう。日本や豪州でも危険な軍事品製造と輸出を認める議員が多数を占めるようになりました。救民内閣で、これを止めて、もっと国民のために公金を使うことはできないのでしょうか。

おわりに  

日本では庶民に苦痛を強いる“高福祉・高税”を当たり前のように主要メディアや一部の政治家たちは拡散しているようです。 もっと労働者/庶民に寄り添い“良福祉・低税”で多くの人々がより幸せに暮らせる社会がつくれる。経済力のある日本ならなおさらだと思うようになりました。

また税は人々に手間をとらせない、間違いで懲罰を受けない“シンプルで分かりやすい”制度が良いとも言われています。下の動画のように日本の複雑で煩雑な税制度は、人々に苦痛を与えるものでもあります。税制改革は社会を変えるためのキーポイントになると思いました。

冒頭の写真は、夏のシドニーです。今南半球は、夏真っ盛りで、今年は例年にない猛暑に襲われています。


今滝 美紀(Miki Imataki) オーストラリア在住。 シドニー大学教育学修士、シドニー工科大学外国語教授過程終了。中学校保健体育教員、小学校教員、日本語教師等を経て早期退職。ジェネレーションX. 誰もがもっと楽しく生きやすい社会になるはず。オーストラリアから政治やあれこれを雑多にお届けします。写真は、ホームステイ先のグレート オーストラリアン湾の沖合で釣りをした思い出です。

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