税金を使うコロナ関連事業がいくつもあります。
前回記事では「千葉県新型コロナウイルス感染症検査キット配布・陽性者登録センター」という千葉県の事業に対する疑問点を県にぶつけた経緯を紹介しました。
この事業で配布されるのは「定性検査キット」であること、この「定性検査」は2020年12月時点で既に「誤診を招く可能性がある」と東大河岡研の論文で指摘されていたことをお伝えしました。県担当部署も「陰性の証明にはならない」と認めているものです。
実際に千葉県ではどのように行われているのかを知りたいと思いましたが、「検査キットの配布を申請できる方」は「50歳未満」に限られ、私はいともたやすく山の彼方へ弾かれました。
そこで、今度は通称「ワクパケ」(ワクチン・検査パッケージ)と言われる「千葉県新型コロナウイルス感染症に係るPCR等検査無料化事業」を紹介されたので調べてみました。
千葉県ホームページによると、二種類の事業があります。
一つは『ワクチン・検査パッケージ等定着促進事業』です。簡単に言えば事業者やイベント業者向けのもので一般向けではありません。
検査対象は『健康上の理由等でワクチン接種を受けられない者が、「ワクチン・検査パッケージ制度」及び民間にて自主的に行うワクチン・検査のため必要となる検査を無料化』とあります。すぐには呑み込めない役所言葉ですね。
もう一つが『感染拡大傾向時の一般検査事業』です。簡単に言えば、コロナが疑われない限りは誰でも受けることの出来る無料検査です。
検査の種類はほとんどがPCRと抗原定性検査、一部には+αで定量検査もあります。
検査対象は『都道府県知事が特措法24条9項に基づき「不安に感じる無症状者は、検査を受ける」事を要請した場合、これに応じて住民が受検する検査を無料化』と記されていています。(*特措法24条9項「国民生活や経済を守りつつ、被害を最小限に抑えるような対策をとる」となっており、つまりは対策を早急に実施する必要アリと判断された場合、都道府県知事から事業者や個人に対して対策に必要な協力を要請できる法律です)
下記のように様々な都道府県で現在行われています。(ただし感染状況や医療のひっ迫度合いなど条件が変われば施行期間はまちまち)
各自治体のHPにパパッと飛んでみて下さるだけで結構です。
一見して納税者への広報としての差異が際立ちます。例えば文字の大きさ、全体的なまとまりや理解しやすさ等の”配慮”の深さが一目瞭然なのも大変興味深いのです。
自分の自治体が上記になければ検索してみましょう。
検索の要領は<住んでいる都道府県の名前+PCR+無料検査>の単語を入れて飛んでみて下さい。行われていれば殆ど簡単に行く突く事が出来るでしょう。そこで納税者である一人一人はどんな評価や体験をするでしょうか。気づいた事等があればコメントをお寄せくださると嬉しいです。
さて、東京都について調べてみました。上記HPの連絡先であった「外部の委託業者」から聞けた言葉は以下でした。
質問:あなたの会社名はどちらですか?
回答:「お答えできない事になっています」
質問: その理由は何ですか?
回答:「言えません」
質問:どうしてあなたの会社に決まったのかその経緯を教えて下さい
回答:「言えません」
質問:東京都の担当部署を教えていただけますか?もしそれも答えられないのであれば上長に替わっていただけますか?
上長の回答:「私が承ります」
質問:私が直接役場に伺うので役場の担当部署を教えていただけますか?
上長の回答:「私に時間があるので私が承ります」
質問:委託業者はどちらですか?
上長の回答:「お答えは出来かねます」
質問:自分で自分の会社の名前を言うことが出来ないという事ですか?
上長の回答:「出来かねます」
質問:どうやって御社に決まったのですか?
上長の回答:「……」
(質問を矢継ぎ早にし、いきなりハンドルを逆に切ってみました。)
質問:(委託)条件として(回答はならぬ)とあったのですか?
上長の回答:「ハイ」(不安に駆られたのか)「ちょっとお待ちください確認します」
ここで電話は切れてしまいました。
何故、税金を使った事業であるのに「答えられない」ばかりか、電話が不通とならなければいけないのでしょうか?
どなたか東京在住の方、調べてみてませんか?
千葉県におけるPCR等無料化事業を一度試してみようと県のHPを見ていたら、やはり様々な「?」が浮かんできました。そして、前回記事でお届けした時にやりとりした担当部署へまた質問をさせていただきました。
質問
1)実施事業者(ドラッグストアや処方箋薬局)と県の間に立つものは誰か?
回答:「千葉の近畿日本ツーリストさんです」
至極あっさり出てきました。
この事業は千葉県民の税金が千葉県の会社におさめられる事となるようです。
旅行代理店とコロナ検査がどのように結びつくのかに意外性を感じるかもしれませんが、旅先での事故や災害時などの対応の為に医療ともつながりを持つ事は当然ですし、GoToが吹っ飛んだり、コロナ禍の観光事業減収であれば人員を横滑りさせることが可能です。JALやANAなどの航空会社のCAアテンダントが全く異なる業種に横滑りした例は皆さんの記憶にも新しいと思います。
2)どのように決めたのでしょうか?
回答:「随意契約です。予めいくつか候補を絞ったうえで、条件をクリアできる場合に手を挙げて頂きました」
これも前回お伝えした事業同様、入札などにかける時間がない超特急の事業であるということでしょう。
3)その条件とは?
回答:「検査キットが確保出来る事(38万個の検査キットが入手出来る事)・ドクターへつなげられる事・過去実績がある事・コールセンターを作れること等です」
何と具体的な数字まで!
4)検査を実施される事業者さんはどのように決めたのでしょうか
回答:「やりたいと手を挙げて頂いたところに審査を経たうえでお願いしています。こちらから特定の業者にお願いしているわけではありません」
コロナ禍の事業において処方箋薬局さんなどの現場も手挙げ案件であるという事が分かりました。
この辺りで一度無料検査が受けられるかGoTo検査を試みる事にしてみました。
私は2020年に千葉に引っ越して以来、コロナ禍で必要時以外ほとんど家から出る事はありませんでしたから、千葉県の各行政区の位置関係も分かるはずもなく、HPのトップにある「検査実施店の一覧」を見てまず驚きました。
調べると2022年現在の店舗数ではツルハが2150店舗で1位ですが、3/9現在千葉県内の検査実施店舗は411店舗中わずか7店舗。PCRは医療に紐づいている都内の「にしたんクリニックのPCR」。電話で数件うかがった店舗内で抗原定性の在庫があったのは「富士レビオ」のみでした。
続くウエルシアは2位。(ウエルシアについては後述)
マツキヨは3位ですが「マツキヨ」がリストに掲載されていないのです。
マツキヨは以前の生活圏や仕事圏内では多かったのに一覧リストにはなかったので、マツキヨ担当部署に連絡してみました。
「何故、今回の国の事業であるPCRの無料化事業にマツキヨさんがないのですか?」
返ってきた答えは驚くものでした。
「今のところ予定がない」「明確な理由はお答えできない」「開示できない」「部署からの開示がないので答えられない」。
例によって質問方向を色々変えて「どうしてやらないのか?担当部署さんにつなげていただけますか?」と尋ねたところなんと「社外秘」ではなく、社内でもごく一部の者だけしか知る事の出来ないより厳しい「社内秘」であることがわかりました。
この事を教えて頂けた担当者さんが窓際に追いやられたり不利益をこうむったりすることが無い事を願います。マツキヨさんは大会社ですからそんな肝の小さなことは決してないでしょう。
私は次に逆にマツキヨの現場に電話してみる事にしました。すると、ここでもまた驚くような答えが返ってきました。
「動線の確保とか検査スペースの確保とか、なんだかいろいろ条件が面倒らしいのですよ」「つまり壁が高い?」「はい」。
言葉尻の端には、印象的には、気のせいか、何故やらせてもらえないのだろう?という気持ちが見えるようでした。それにしても「社内秘」なのに何故参入の「条件が高い」事を知っているのでしょうか。
この話を聞きながら思い出したのは森友学園の土地問題で大阪音大が却下された件でした。
モヤモヤしつつ検査事業者一覧を見ていると今度は逆にウエルシアの多さが目を引きました。調べてみたところウエルシア創業者の後継者が亡くなる前に「イオン」にウエルシアを託し、連結子会社になっていることが分かりました。そのイオン本社は千葉にあるのです。ウエルシアが千葉県のリスト中の多くを占めている理由が分かった気がしました。
リストの多くを占める業者がいるという事は反面、参入できない業者もあるという事ではないかと思い調べたところ、デイリー新潮の『都の新型コロナ「無料PCR」に不満を募らせる検査事業者「承認まで時間がかかり過ぎ」』という記事が見つかりました。
この記事によると「ある検査会社が何度申請書類を送っても都度都度書き直しが何度も要求され一向に通らない」「同業社の知り合いに聞いても状態は同じ」ということです。
やはりここでも思い出すのは森友の土地問題であった大阪音大が却下された件です。
さて、ウエルシアですが上記リスト中、沖縄以外の都道府県でもその名を確認することが出来ました。さすが「イオングループ」であり、本社が千葉ですから千葉県には沢山リストアップされています。
ところが、無料検査実施するにあたり、そのイオングループのウエルシアに生活・仕事圏の検査実施拠点中心に電話を入れ始めると、片っ端から電話を掛ける羽目になりました(次回の電話請求額が恐ろしい…)。何故なら「モノがない」のです。
定性検査については現場の多くが「受け付け中止」、PCRについては「制限あり」で医療に紐づいている「木下グループ」製。抗原定性は会社方針で「ロシュ」限定。
どの薬局も会社に関係なくPCR検査は定性検査よりも何故か入手しやすく、従って検査できるのはほぼPCRです。
他の会社の小さな処方薬局にもいくつか電話を入れてみました。まず、定性検査キットについてはほぼ入荷が無く、販売は今も無し、あるいはあってもごく少数。中には1カ月も入荷出来ない店舗も(3/1の段階)。
PCRについては定性検査より入荷状況はまだましのようですが、自分で銘柄指定することは出来ず、「入荷可能なものしか入手できない状態」のようです。処方薬局では入荷日や入荷数が分かった段階で、ネットに予約枠を更新していくそうです。自分に合う無料検査にありつきたければ、毎日生活圏にある処方箋薬局に目を光らせないとならない、という事です。
ネット環境のない場合だと自ら店舗を訪れて薬剤師に聞くか、毎日電話攻勢でしょう。仕事に追われてネット予約さえ厳しい方が大勢おられるのではないでしょうか。そしてこの事業はすべての国民が知らなければならないはずのものです。皆さんはこの事をご存じでしたでしょうか? 滋賀県にいる友人にも聞いてみたところ、やはり、検査へのアクセスは無理で、結局は自費でネット購入しているそうです。
無料検査の最前線である処方薬局では、原資が税金である役場の事業であるのにもかかわらず、平等に検査をまんべんなく受けられる機会が実際のところ難しいと言わざるを得ません。医療のひっ迫度と新規感染者数などの条件によっては都道府県各地でも行われている検査です。よって、処方薬局は違えども方法は同様と考えていいでしょう。
我々納税者が接触する最終現場である処方箋薬局等の対応は、ネット予約や電話や来店のみのところもあり、意外にまちまちで、それでも個人個人にとって検査にたどり着く扉はほとんど開いていないと思えるのが現状でした。
因みに、卒業式終わりに合わせたPCR検査の予約は、翌日にキャンセルメールが来ていました。また、3/12時点、異なる会社の処方薬局3店舗に足を運びましたが、いずれも在庫は何一つありませんでした。
つまり税金が平等に返ってきていないという事です。
最後にチョット小さな声でお知らせ。
「住宅密集地からやや離れたリスト中、少数処方薬局の幹線道路脇の店舗の場合、検査予約に空きがある傾向」です。
次回は検査結果が判明するまでにかかる時間や民間PCR検査会社についてお伝えしたいと思います。
続報「コロナ後遺症」/陽性を見逃す可能性が高いと指摘されていた抗原検査キットをなぜ私は使わされたのか?〜飯塚尚子
飯塚尚子(いいづか・たかこ)
東京都大田区大森の江戸前産。子供の頃から父親の一眼レフを借り、中学の卒業アルバムのクラス写真は自ら手を挙げて撮影している。広告スタジオ勤務を経て現在フリーランスの教育現場専門カメラマン。フィールドは関東圏の保育園から大学まで。教育現場を通じて、社会の階層化・貧困化、発達障害やLGBTを取り巻く日常、また、議員よりも忙しいと思われる現場教員たちに集中していく社会の歪みを見続けている。教育現場は社会の鏡であり、必然的に行政や政治にもフォーカス。夫は高機能広汎性発達障害であり障害者手帳を持っている。教育現場から要請があれば、発達障がい児への対応などについて大人になった発達障がい者と直接質疑応答を交わす懇談会や講演も開催。基本、ドキュメンタリーが得意であるが、時折舞い込む入社式や冠婚葬祭ブツ撮り等も。人様にはごった煮カメラマンや幕の内弁当カメラマン、子供たちには人間界を卒業した妖怪学校1年のカメラマンと称している。