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こちらアイスランド(41)長くて2週間と言われる短い秋。紅葉、溶岩原、洞窟へ〜小倉悠加

アイスランドの紅葉狩りへと出向いた。

ーーーと書き出したいところだが、そういう風情のある話でなく、F道が閉鎖される時期になってきたため、早いところどこかを通りたい一心で出かけた。そこがたまたま風光明媚な場所だっただけの、単なるラッキ〜。

ん?前回のラキ火山群見学の翌日の冒険談はどうした?と思った方、有難うございます。前回の話を覚えているほど「こちらアイスランド」を愛読していただき、ものすごく嬉しいです!が、すいません、それは後日にさせてください。

今回は日本の季節感ともマッチするので、季節感がズレたやつはまた後で。

今回走りに行ったのはF578 号線(道路名:Arnarvatnsvegur)。南側から進むと途中からFの文字が消えて578号線となり、北西部へ到達する。違いは何かといえば、Fのつく部分の道路は夏のみの整備で、それ以外の時期は通れない。Fのついてない部分は冬でもある程度は整備されるので通行可能。

この道路を使い、北西部へ行ったところで、いつもの1号線を使って帰るのはつまらないため、F道を途中で引き返し、Kaldidalurという普通乗用車でも通れる夏限定道を使いレイキャビクへ。朝寝坊で出遅れたたため、行きは1号線を使い、518号線沿いのHusafellで給油。そこからF578へ。

説明が文字では分かりにくいので、これをGoogleの地図に落とし込もうとしたところ、地図上ではF道が途中で切れて、道が消滅する!ホント、グーグル・マップはいい加減だ!

←筆者の性格を写し出す超大雑把な地図。
いや、私のせいじゃなくてグーグル・マップに道がないのが悪い(と、他者のせいにする)。 ハートがレイキャビクの出発点。茶色が1号線&幹線道路。ピンクがF道。同じ道を往復。帰り道は緑色のKaldidalurと53号線を使用し、また1号線を使って帰宅。

アイスランドでは、グーグル地図で明後日の場所へ連れて行かれることがある。同じ地名があちこちに存在するのも問題だが、F578号線のように、実際に道は北西部まで続いてるのに、電子地図上では存在しないことになってる場合もある。こういった山道や細かい道を使う時は、印刷された地図は必携だ。スマホが常に使えるとは限らないし、印刷地図が一番頼りになる。

F578号線の特徴のひとつは、溶岩原ハットルムンダルフロイン(Hallmundarhraun)の北側を走り抜けるところにある。930年ごろに氷河ランギヨークトル(Langjökull)の下にある火山が噴火した。数年間続いた噴火は200キロ平方メートルにも及ぶ溶岩原を生み出し、「グレティルのサガ」によればハットルムンダルフロインの名前は、この地域に住んでいたハットルムンドゥルという男にちなんでつけられたそうだ。

噴火後1000年以上経過したこの土地には、背の高い木が一切なく、溶岩はフカフカの苔に覆われている。噴火後これほどの時間が経過しているのに、ほとんどが苔で、所々に低木や草が生えているる程度であることに驚かされる。

この道路の入り口近くにあるのは洞窟群。無料で見学することができる。以前は全て無料で入れたというアイスランドの洞窟。現在では業者が入り、足場などを組んで料金を取るところも多い中、無料で見学できるスルトシェットリル(Surtshellir)の洞窟群は貴重だ。

ヘルメットやヘッドライトを装備して来れば、洞窟の中を歩いていける場所もある。
昔はこういった洞窟に人が住んでいた。

洞窟群から離れると、見渡す限りの溶岩原。視界を遮るも木もなく、広大、壮大、雄大。どの言葉を思い浮かべても、必ず「大」の文字が入ってくる。

昔の人はこれほど広大な場所をいかに移動したのだろうか。馬を使うといっても、馬のえさや水も必要だろう。アイスランドは川の水が飲める国ではあるけれど、氷河の水は火山灰で濁っているため飲料には向かない。この近くに飲める水はあるのだろうか。

溶岩原とはいえ、1000年以上前の噴火。ほぼ植物で覆われている。

上の写真の奥に見えるのは、ランギヨークトルの西北側にあるエイリクスヨークトル(Eiríksjökull)で、北へ進むとランギヨークトルも見えてくる。

アイスランドにも春夏秋冬はあるが、日本人から見ると春と冬だけしかないように思うこともある。それでも、この写真を見てわかるとおり、溶岩原は秋の色合いを呈している。長くて二週間程度と言われる短い秋を、ラッキーにも垣間見ることができた。

天気のことを長々と話すつもりはないけれど、本当は土曜日に行く予定だった。それが最後まで天気予報に振り回され、半ば賭けで日曜日に出向いた。この日は午後の早い時間まで曇りと晴れが交互の天気で、その後は雨降りの予報だ。そして数日後には嵐や降雪が待っている。

寝坊した関係でF道に到着したのは正午を回っていたが、晴れ間の割合は高い。そして何よりも無風なのが嬉しい。

溶岩原を歩けば歩くほど、溶岩の割れ目や隆起したところがよくわかる。溶岩の模様も面白い。
溶岩大地の秋の色彩。基本的には日本の紅葉と同じで、なんとなく不思議な気がした。

道は溶岩原の際をなぞるように走り、道路を隔てた反対側はもう少し古い土地になる。そのためか、生えている植物も異なり、苔と草ではなく、低木が主になっていく。そういった変化をを見るのも楽しい。

こうして郊外のドライブへ出る度に飛び出す彼とのスッタモンダの話。今回はない。ひたすら「天気でよかったね。美しいね。気持ちいいね」としか話さなかった。面白くなくてごめんね(笑)。

せっかくなので、道中の動画を。火山噴火以来、火山や溶岩、ひいては岩石が好きな人が私のツイッターをフォローしてくれるので、そういう人向けに溶岩の割れ目などがよく見えるところを撮ったつもり。

冒頭にも書いたように、F道は最後まで走らず、途中で引き返すことにした。意外にも天気が夕方まで持ったので、帰路にもうひとつ洞窟に寄ってみた。

以前はこのような写真を見ても、「ハ〜、石ですね〜。で?」という感じだった。それが火山噴火や煮えたぎる溶岩の直接体験を通して、今は岩を見ると「あの熱い溶岩は、気が遠くなるような年月を経てこうなっていくのか・・・」と、一歩だけ突っ込んで見られるようになった(気がする)。

岩石ファンが意外と多いことも分かってきた。今までは音楽ツアーを作っていたけれど、今度は岩石を見るツアーでも企画しようかと、実は密かに思ってる(ということをここに書いたら、全然密かじゃないけどね。)

心がけが良かったのか、奇跡的に夕方まで天気がもった。

穏やかな色彩のアイスランドの秋。今回もまた「うわー、ウワ〜、きれいね〜〜」という少ないボキャブラリーだけを発声して、その色や景色をお腹いっぱい吸い込んできた。

帰宅時は幹線道路や1号線を極力避け、夏専用道であるカルディダルルを通ることにした。途中から少し雨は降ったけれど、視界がゼロになることはなく、むしろ、泥だらけになった車体を少しだけ雨がきれいにしてくれた。

午前9時半に家を出発し、帰宅は19時ちょうど。10時間家を離れただけで別世界。9月下旬、北部や内陸部では既に初雪が降った。

小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。自己紹介コラムはこちら

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