政治を斬る!

こちらアイスランド(48)この冬、久しぶりに日本に戻ります。「一時帰国中のお仕事」大募集!〜小倉悠加

やった、これでやっと日本に戻れる!

航空便の予約ボタンを押した瞬間、嬉しさと同時に、今まで抑え込んでいた感情が湧き出て、思わず泣いてしまった。

二年間は長かった。

帰ろうと思えば、いつでも帰国することはできた。でも親から「今は帰ってくるな」と強く言われれば、「それでも帰る」と押し切ることはできなかった。

あぁ、これでやっと日本食が食べらえれる!ラーメンも、そばも、おにぎりもどこにでもある!ツイッターに流れてくる飯テロに悩まされることもない!うれしすぎる〜。

食欲の次にうれしいのが、生活必需品の買い替えだ。ヨーロッパの衣料品はサイズが大きすぎる。値段もあるが、その前に”存在しない”という困難が立ちはだかる。特に下着類は買い替えられずに困っていた。靴底も思い切りすり減っている。これでやっと買い替えることができる。日本は選択種が多い。人口過密さまさまだ。

もちろん単なる物欲も!バッグとかお洋服とか、小物とか。航空便を予約したその日は、夜中の3時まで通販サイトをなめるように見回した。何も買わなくても、すぐに入手できるというだけで心踊る。

あとは書籍だ!Kindleでも読めるけど、編み物やクラフト系のものは、結局ページを印刷しないと使えないので、印刷物の方がいい。

などなど、あれもこれもと盛りだくさんの欲が、喜びとともに天高く成層圏まで舞い上がった。ただし、問題は予算がなさすぎること・・・。

現実的には必要不可欠なものを購入する程度で、あとはウィンド・ショッピングで目の保養をする程度になろうと思う。実際に購入することはなくても、デパートを歩き回ることはできるし、あれもこれも見るだけで楽しい。アイスランドに移る前までのありふれた日常が、今ではとても貴重な非日常になっている。高島屋の食器売り場を考えただけでワクワクする自分が、変な人のように思えたりして。

ワクワクといえば、これで長い間会えなかった人とも会えるし、サメタイの読者のみなさんと会えるチャンスかもしれない。

カラフルな山肌が特徴。レイキャビクから1時間で別世界。とっておきの秘密スポット。

日本に戻るからには、その間に日本国内で実際に仕事をすることもできる。

そこで一時帰国中の仕事を大募集!
主には講演やトーク・イベントを考えているけれど、食事会等のゲスト参加も歓迎!

アイスランド関係の企画打ち合わせ等も、直接お会いできるこの機会にぜひ!連絡先はこちら

帰国に伴う自宅待機後、以下の期間で日本国内での仕事が可能です。

期間:12月10日(金)ー 1月25日(火)ただし年末年始を除く

主な講演テーマ
  (1講演40-60分:写真、表、音源等を使用し、わかりやすくお話します。内容は相談可。)

 *アイスランド旅行指南
   「生まれたての地球、感動のアイスランド」
   旅行で押さえておきたいポイント全般
   地域別(都市部、南部、西フィヨルヅル、北東部等)
   目的別(オーロラ、アイスランド一周ドライブ、温泉、滝等)     

 *アイスランド全般の紹介
   「世界一、世界初が詰まったアイスランド」
     政治、生活、教育、男女平等、エネルギー政策等
     男女平等、LGBT等に特化した内容も可能

 *アイスランドのポピュラー音楽史の発達
   「37万人の小国は世界の音楽大国」
   意外にも日本と似ていてるポピュラー音楽史
   伝統音楽から現在のポピュラー音楽までの流れ
   世界的に注目される土壌・環境の紹介

 *レイキャビクのアート
   「ストリート・グラフィティからハイ・アートまで、芸術の街レイキャビク」
   大御所の芸術家からコンテンポラリー・アート・アーティストまで
   アイスランドの代表的な美術館
   アート界と音楽シーンの結びつき

 *「翔けるのは熟年だから!」
    50代後半で日本を飛び出すまでの話や、子育て後の人生をいかに生きるか
    萎縮しがちな日本女性を励ます提言 

「アイスランドの旅行関係」「アイスランド全般の紹介」は各種学校団体、旅行代理店、オンライン・セミナー等で実施。独自ツアー企画は10年以上最高実績あり。

「ポピュラー音楽史の発達」は早稲田大学の「アイスランドの言語と文化」コースの正式授業の一部として8年間話してきた内容。

小倉からアイスランドの話を聞きたい、小倉と話す機会があれば面白いかもしれない、実はこんな企画を考えてるがどうだろうか?等、ぜひこの連絡フォームからお声がけください。


さて、ここからは少し泣き言コーナー。

顔では笑っていたし、必ず何とかなるとは思っていたけれど、この一年半ほど形容し難い重苦しさがあり、時に押しつぶされそうになったこともある。サメタイの読者は心やさしそうなので、ここで少し吐露させてほしい。

私はトーキョーノーザンライツフェスティバルという北欧映画祭の第一回から関わり、毎年アイスランド音楽のイベントを行ってきた。その10周年記念イベントを2020年4月初旬に予定していたため、イベントはキャンセル。イベントはなくても帰国だけはとも考えたけれど、土壇場でキャンセル。航空便が急激に欠航になっていた時期で、帰国したところで誰にも会えないだろうと踏んだ。とても桜が見たかった。

その後は、何だか訳がわからなくなり、途方に暮れた。

仕事は全部飛んだし(フリーランスは辛い)、先行きが全く見えず鬱々と過ごした。本物の鬱に陥らないよう、努めて何も考えないことにしたけれど、それでも毎朝、毎夕、特に高齢の両親のことが気になって仕方がなかった。それが針の束のように心をチクチクと刺した。時々、突然ボロボロと涙を流す私に、彼は気を使い、元気付けてくれた。けれど、世の中の話題はどこを見ても「コビトにーちゃん」だらけ。

にーちゃん、にーちゃんと連呼されると、どうも不思議な気分になった。アニメの普及により、日本の言葉が国際語として使われることが時々ある。さては鬼滅の影響で、お兄ちゃんが世界的に有名になったのか?ンなワケないだろう!というセルフつっこみはどうでもいい。

COVID-19をアイスランド語ではコービッド・ニーチャンという。19は「9=ナイン(ニー)」「10=テン(ティアン)」なのだ。にーちゃん、にーちゃんと連呼されるのを聞きながら、「コロナはにーちゃん扱いなんだ。だとしたら、ねーちゃんはインフルかな?」とか、日本人にしか通じないアホなことを考えて気を紛らわせたものだった。

アイスランドに日本人が入れなくなった。企画ツアーはできないし、コーディネーターとしての仕事もゼロ。それは未だに回復していない。旅行企画はできないし、先も見えない。仕事がゼロの間、気を落とさないように、時々オンラインでのバーチャル・ツアー企画を試みたり、編み物で気を紛らわしたり。

ICELANDiaショップ(オンライン・ショップ)は15年以上続けているが、開店休業状態になっている。心意気だけでやっていたようなものなので、私がいないと日本でのオペレーションが回らない。アイスランドの商品の仕入れはできるので、日本に協力者がいれば、本当は続けたいところだ。

2020年は肩で息をしながら、貯金を切り崩して過ごした。2021年も基本的な状況は変わらないが、それでも、日本からアイスランドに人を送りこめないからという理由での仕事が、ポツリポツリと入ったりする。全くのゼロではなくなった。

そんな時、ひょんなことから寄稿することになったのがこのSAMEJIMA TIMESだ。鮫島さんが新聞社を退職し、残りの人生をかけた貴重な場所の一角を借りることになる。何の縛りもないボランティア執筆でも、できる限り定期的に寄稿していこうと自分に課した。実際「こちらアイスランド」は、生活に心地よい刺激とリズムをもたらしてくれた。

夏のアイスランド一周旅行では、いっしょに旅をして毎回コメントをくださる方も現れた。それが励みになり、とても楽しく書かせてもらった。

一時帰国中に鮫島さんにはぜひお会いしたいし、読者のみなさんともお目にかかる機会があればと願っている。なのでアイスランド関係で何かご用があれば、ぜひお声がけください。お待ちしてます!

小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。自己紹介コラムはこちら