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こちらアイスランド(68)家に篭りきりコロナ生活から舞台へ!コーラスで気分転換。〜小倉悠加

篭りがちな生活から脱却したく、コーラス隊に入った。

どうも世間では、積極的で社交的な性格だと思われるようだけど、私は独りでいるのが好きだ。一人っ子のせいか、独りで過ごす時間は全く苦にならない。むしろ、独りの時間が持てないと心のバランスを崩してしまう。静寂な時間を過ごすのが好きなのだ。

そして静寂が好きなのと同じくらい、音量の大きな音楽も好きだ。ポップ音楽好きが高じてアメリカへ留学もしたし、レコード会社にも入った。アイスランドに関しては音楽レーベルも作ったし、企画ツアーも毎年やってきたし、果てはこうして転居までしてしまった。要は凝り性なのだ。

そんな凝り性をいい意味で積極的だと解釈してくれる人がいるのはありがたい。実際は、好きになると猪突猛進する単なるおバカさん。ただしそんなバカも、多少お利口でないとできないから、世の中ってなんだか複雑だよね。

目的があればそんな風に積極的に動くし、目的がなければ家に篭るだけ。特にコロナ禍に突入してからは、日本からの仕事がパタリと途絶え、「ステイホーム」のスローガンも手伝い、全く外に出なくなってしまった。もちろん人に会うこともなかった。完全な引き篭もりだ。

バルコニーに出れば、左手にハトグリムス教会、右手には国内空港があり大統領官邸も見渡せる。

篭り好きの私も、さすがにあの時期は参った。数ヶ月程度の辛抱だろうと思っていたのが長引くこと長引くこと。結局二年間も日本に戻れなかったし。

ただでさえ理由なく人に会うことが少ない私は、コロナですっかり家に篭る人になり、社交性がゼロに落ちた。幸か不幸かバルコニーへ出ればとても気持ちのいい景色がいつでも楽しめることもあり、一ヶ月に2-3度しか家の外に出なくなった。さすがの私も篭りすぎを自覚。外に出るとか、誰かに会うというコンセプトをごっそり忘れてしまったかのようになってきた。ちょっとそれはマズイよね。

少しでいいので外に出て、何か楽しいことをするきっかけが欲しかった。引き篭もり生活のリハビリだ。そんなことを考えている時にFacebookで見かけたのが、

「コーラスのメンバー募集。男女別や年齢は問わないが、音程がしっかりしてることが条件」という告知。

楽しいかも!コーラスはアメリカの高校時代にみっちりやっていた(部活ではなく、毎日1時間音楽の授業としてのコーラス)。それも生徒集会の時、英語で自己紹介をするのが億劫で、代わりに「さくら〜、さくら〜、や〜よ〜い〜の〜そ〜らぁわ〜」というあの歌を披露したところ、コーラスの先生からスカウトされた。

蓋を開けてみるとコーラスは2グループあり、誘われたのはマドリガルと呼ばれる、無伴奏でも歌える優秀なグループの方だった。びっくり!

幸い、英語が理解できなくても音符は読める。幼稚園児の時から8-9年間みっちりピアノをやっていた。高校への進学は音楽学校か?という話が浮上した時、泡を吹いて急いで止めた。ピアノが弾けるのは、ことある毎に重宝がられた。高校の留学生活が楽しかったのは、コーラス隊に属していたことがとても大きかった。

老舗の本屋を改造したコンサート会場。気に入った書籍は購入可能。

コーラスのメンバーを募集していたのは、知り合いのミュージシャンだった(アイスランド、あるある!)。

「参加希望。コーラスもやってたことがあるし、ピアノも弾いてたから楽譜は読める。どちらも大昔のことだから錆び付いてるけど、何とかなると思う」とメッセージすると、さっそく

「毎週火曜日が練習日だから、一度見にくる?」

きっと練習の前か後に簡単なオーディションでもするのだろうと思い、とにかく出向いた。指定する場所へ行ってみると、そこは小さな教会。え”〜、聞いてないよぉ。教会っつーことは、聖歌隊?!

聖歌を歌うことに異議はないし、讃美歌は好きだ。十字架を背負う聖歌でも、アラーの神に捧げる歌でも、そこらへんはどーでもいいけど、キリスト教徒じゃないとダメとか、改宗しろとか、それはちょっとぉと思った。

けれど、いまだに宗教のことは一切聞かれたことがない。ミサの場で歌っても、だ(笑)。

「いまだに」ということは、結局このコーラス隊に、知らない間に入ってしまったらしい。というか、入りました。はい。

なんか腑に落ちない書き方だけど、「一度見にくる?」と言われて足を運んだところ、いきなり楽譜を10曲分くらい渡された。

え、あのー、その前にオーディションとかしなくていいんでしょうか?

レパートリーは驚くほど幅広かった。讃美歌から、フリートフォックスから、ブラーから、アイスランド人歌手のヒット曲まで、1時間半みっちりと歌った。高校以来なので約45年ぶり。知らない曲ばかりで、音を追うのがやっと。歌詞は無視して全部「ラララ〜」で通した。そしてノドが痛い。

アイスランド語がおぼつかない外人が数名いるため、ありがたいことに必要な箇所は英語でも話してくれた。これなら不自由はない。

「本日の練習はこれまで。それじゃまた来週!」

そうか、みんなが帰宅してからオーディションするのか。ん?そういう雰囲気じゃないよね。私、どうしたらいいんだろう・・・。

「楽譜を有難うございます。で、私はどうしたらいいのでしょうか?」と手渡された楽譜を返そうとすると、

「どう、楽しかった?」と尋ねられた。

「思いがけず幅広いレパートリーで楽しかったですよ」と返すと、「それはよかった、それじゃまた来週」と。

「え?これでメンバー入りでいいの?」

「練習についてこられたし、全然大丈夫じゃないの?仲間になってくれてありがとう」

すごく意外だった。”音程がしっかりしてることが条件”とあったので、ビビってたら、普通に歌えればいいだけなんだ。ーーーとは言えないのかな?もしかして私の「普通に歌える」は、普通じゃないのか?

それからが少し大変で、メンバーが用意してくれたSpotifyのプレイリストを聞き、アイスランド語の歌は彼に発音を尋ね、カタカナ読みを書いた。以下が練習用に聞いていた演目のオリジナル曲。もちろんコーラス用のアレンジは全く違う。

カタカナ読みは恨めしい。英語の先生から、読みをカタカナで書いてはいけないと厳しく指導されて私は英語を覚えた。自分も教える立場になると、カタカナ書きは避けた方がいいと思うと話してきた。なのに、なのに、自分がアイスランド語を発声する時は、やっぱりカタカナ書きなのかよ!と突っ込んだ。

基本アイスランド語はローマ字読み。そこに特殊文字が少しだけ入り、若干のルールを覚えれば音として発声することは、それほど難しくない。超ゆっくりであれば、アイスランド語は読めるし、意味も通じてるらしい。けれど、歌となると、文字を見据えてゆっくり発声している時間がない。しゃーないから、振りましたよ、カタカナを。救世主なのに、なんちゅー敗北感。

カタカナに救われて、めちゃ早口の曲もとりあえずこなした。口の動きも、最初の子音さえ合っていれば不自然ではないはず。言葉としては全然滑ってると思うけど、いい加減でも済むのがコーラスのいいところ!という開き直りも大切!!

加入してからすぐに風邪で私が休んだり、音楽監督がコロナで休んだりと、2ー3月の練習日は少なかった。ただでさえ練習は一週間に一度なのに、たぶん半分しかやれてない。なのに、先日コンサートを開催。それも2年ぶりらしい。

コンサートは教会ではなく、街中の老舗本屋をクラブに改造したMal og Menningが会場となった。

舞台の並び順さえ決めてないゆるさ。右側の方にいるメガネの女性が私。

コンサートの出来がどうだったのか、正直私には分からない。彼が数曲、動画に撮ってくれたのを見る限り、特に悪くもないし、まぁまぁかな。

ちゅーことで、一週間に一度の練習が、ちょっぴり楽しみになってきた。お友達も何人かできそうだし、何よりも気分転換になる。お篭りからの本格的脱出につながるかは疑問だけど、とりあえずは人に会うというリハビリになりそうだ。

アイキャッチ写真撮影:John Arnar Sveinbjörnsson

小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、アイスランド在住メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。自己紹介コラムはこちら