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こちらアイスランド(56)見ちゃった。鮫島さんの知られざるXXX〜小倉悠加

今回の帰国でピカイチ有意義な午後のひととき。美味しかった、楽しかった!

SAMEJIMA TIMES愛読者のみなさま、やっとこの日がやってきました。「こちらアイスランド」を書き始めて早10年、ん?そこまで経ってないか。サメタイの要である鮫島さんと小倉悠加が、感動の初対面を果たしました。ジャジャーン。

サメタイでは切り口の鋭い数々の名文を残してきた鮫島氏。そして頭も体重も軽めのアイスランド脳の私。果たして互いの話が通じるのかーーけっこう心配。

そしてやってきました都心の地下鉄。入り口で待ち合わせた鮫島さんは思いのほか長身で、となりにはパートナーの女性まで!

うわっうわー、本物の鮫島さん!そしてパートナーさん!お二人揃ってお出迎えいただき、ありがとうございます。

そこから向かった「行きつけの店」。こんなおしゃれな地域に「行きつけの店」があること自体が、私には別世界。実はお会いする前に、食事は何を希望するかの候補として「行きつけの店」をいくつかご紹介いただいた。どの店も小洒落ていて、美味しそう。それでも私の選択は蕎麦。断然蕎麦。誰が何と言おうと蕎麦!

マスクを外した鮫島さんは、写真で見るよりも若い印象。やっぱり若い人は肌の艶が違う!10歳年上の私に若いと言われてもうれしくもないだろうし、外野からは「50過ぎのおっさんのどこが若い?」と突っ込まれそうだけど、まぁいいじゃん。

遡ること約一年前。見ず知らずの誰かに連絡を入れることなどない私が、朝日新聞を辞めるという一連の文章の中に何かを感じて、初めて連絡を入れた。

その時にほどなく届いた返信は、政治部の記者という真面目でとっつきにくそうなイメージに反して、驚くほど柔軟で温かい印象を受けた。へー、この人面白そう。その場での私の返信に、鮫島さんはまたすぐに返事を返してきた。それを読み、あぁこの人と私は気が合う、話が合う、と確信した。行間に流れる何かに、自分と同類のものを感じたのだった。

で、それがなんであるかを確かめたのが今日の対面だった。

もちろん、鮫島さんの体験や実績に私が及びもつく訳はない。けれど、考え方や物事の捉え方の基本は似てる。

気が合わない人と話していると、表面的には「確かにそうですよね〜」と相槌を打ちながら、内心では「それ、違うんとちゃう」とツッコミをいれてることが多い。けれど、鮫島さんと話していると、「そーゆーの分かる人、案外少ないんですよね〜」と、互いにウンウンと頷いてる。

お連れいただいた蕎麦屋はとびきり出汁が美味しく、私が理想に描く蕎麦屋だった。平日の昼間ではあったけれど、新年早々ではあるし、なかなか会えないし、初めて会えたんだしと、日本酒で乾杯。キリリと味わい深い。なんだかいい日になりそうな予感。

蕎麦屋のスタッフと新年の挨拶を交わす鮫島さんご夫妻は、いかにも「行きつけの店」。ほんと、おっしゃれ〜。政治部の記者とはもっと泥臭い存在だと思ってた。

泥臭いといえば、私がイメージする政治部の記者は、新橋の高架線下で清く正しくコップ酒と焼き鳥で憂さ晴らしや噂話をするような種族だ。なのに、鮫島さんは酒よりも甘いもの好きだという。酒はやめても、甘いものは絶対にやめないと宣言した。男は黙って酒!という、またもや私が抱く昭和のステレオタイプを壊した。

でもってお気に入りのたい焼き。

子供の頃、スーパーで買ってよく食べた皮がふわふわで、甘さがギトっと舌に残る下世話なやつではなく、皮は薄くパリッ、あんこはさらりと上品。この人どこまでおしゃれなん?!

そして本日の(私の中での)メインイベント。小倉悠加の鮫島浩家お宅訪問!

レアでしょ!レアでしょ!めちゃレアだよね!!

現在では超おしゃれになってるこの地域。目をつけた時はバブル崩壊後の匂いが残り、都内でもエポック的に不便で何もなかった。経済部の記者や不動産に詳しい人に尋ねても、この地域はダメだと口を揃えて言われた。そうか、ここはダメなのか、それなら絶対に買いだ!と思ったというあまのじゃくが、いまや完全なる先見の明。

室内に入るとまず目に飛び込むのは、宮沢賢治の言葉を殴り書きした大きなふすま!驚いた。こんな家、初めて見た。いや、でも、破天荒な心意気がなければ、今の鮫島さんはないのかもしれない。いい、とってもいい。こういう人、好きだ。

次に目に入ったのが、ダイニングに茂る大きな木。そしてアフリカの置物やエスニックな彫り物。ふすまの文字と不思議にマッチして、エキゾチック感を盛り上げる。

空間は全体的にウッディだ。ダイニングの大きなテーブルが居心地よく、時代を経た小さめの家具が時代の空気をワープさせ、古民家の中にいるような気分にさせてくれる。

壁の色も自分たちで塗ったそうで、入居してからあれもこれも改造を重ね、壁もぶち抜き、なんちゅーか、なんでも自分流!

へ〜、へ〜、さすがにここまでは想像していなかった。居心地のいい場所を求めて、お仕着せの、既存の物事を自分流に崩していく。なるほど、あの芯の通った、そしてどこか温かみを感じる文章は、こういう生活の基盤からもきているのかと、妙に納得。

その大きなテーブルを挟んで聞いた話は、興味をそそられることばかりだった。

SAMEJIMA TIMESを立ち上げるにあたり、初めて本格的にパソコンを使った時の苦悩と挫折。辛い体験はいろいろとあったが、本気で投げ出したいと思ったほど辛かったのが、パソコンと悪戦苦闘した一ヶ月半だったという。辛くて辛くて、本当に泣いちゃったそうで、ごめん、そのセリフ、ちょっと心の中で笑った。同時によくやったねと心の中でイイコイイコした。

ネトウヨウの話はかなりのエンタメ。注目してもらってナンボなので、ネトウヨウもブロックしないし、むしろ大歓迎と懐が深い。「時々いじってあげないとね。その方が喜ぶしさ」って(笑)。

特に尋ねたかったのは、どうすればもっと読者に喜んでもらえる文章が書けるか、ということ。

「文章が湧き出るままにサクっと書けばいい」と。だよね、だよね、だよね〜とは思うものの、読み直すとどうしても書き直したり、順序を変えたり、説明を書き足したりしてしまう。ライブ感があった方が読んでいて楽しい。小説や論文でもないので、構成に凝る必要もないし、軽く楽しく読めればいいんだから!ということには賛成。

賛成なんだけど、バカ丸出しにはなりたくない。けど、そのバカを読むのが楽しいのであれば、喜んでバカになろうかーー。「書き流せばいい」という言葉を聞いて、私の心は千々に乱れた。

そして政治記者であり編集者である前に、何よりも自分は文章の表現者・クリエイターであると捉えていることは少し意外だった。職業としての記者や編集者ではなく、クリエイターであり、ある種のアーティストであるという捉え方。分野も文体も異なるけれど、「文章で表現するのが好き」ということにおいては、私も同じ。つまりはクリエイターなのだ、と。

なるほど、かけ離れているように見える鮫島さんと私の同類は、そこだったのかと妙に納得。

そう考えて合点がいくのは、友達として私の周囲に残るのはアーティスト・クリエイターばかり。結局そこなんだ・・・。

本当はもっと話を聞きたかったけれど、長居は禁物。そう自分に言い聞かせつつも長居をした私。自販機の間から顔を出して、最後まで見送ってくれた鮫島さん、おいしいお茶をたくさん入れてくれたパートナーさん、今日は本当にありがとうございました。とびきり楽しい午後でした。

今度会えるのはいつになるやら。ぜひご夫妻でアイスランドにいらしてくださいね!

小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。自己紹介コラムはこちら

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