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こちらアイスランド(123)日本車礼讃。ワイルドな道も軽々とこなすトヨタ、スズキ、横浜タイヤ、ありがとう!〜小倉悠加

アイスランドに夏が到着した。お待ちしていました。夏ご一行様、ささ、こちらへどうぞ。

2023年4月20日、昨日は夏の初日だった。以前にも書いたが、夏はいつ到来するか、アイスランドでは法で定められている。なので、大変にめでたい夏の初日は公休日となっている。

夏の初日が法律で定められているとは、少し驚きますよね。天気は天気のなすがままなので、人間が勝手に法で定めるものではないと思うのは、私が日本人のせいでしょうか。

去年まで、この季節からがドライブの本番だと思っていた。当たっていないことはないけれど、今年はその思いが劇的に変化した。気候が緩み、雪解けが進むこれからの二ヶ月くらいが、ドライブ好きとしてはジレンマの多い季節になる。

それにしても、私はいつからドライブ好きになったのだろう。もちろん自然は大好きだ。「自然」という大きな括りであればキャンプでも、植物観察でも、地学でも、気象学でもいい。特に地学の分野では、アイスランドでの研究を憧れとする学者諸氏が少なくないと聞いている。

要は「自然」の括りで取り組むことのできる主題が多く存在している国であり、研究対象として貴重な自然環境を有している。

頭が軽くできているので、学問に取り組むような崇高な心がけを私に求めるのは無理な話だ。そしてドライブ好きとは言っても、私は車を運転しないし、ゴールド免許は身分証明書でしかない。

郊外へドライブに出るようになったのは、発端として特筆するまでの物事ではなく、ありふれた日常の延長だった。レイキャビクの街中にいるだけではつまらない。彼は以前から友人とあちこちでハイキングを楽しんでいたので、私をハイキングに連れ出したい。けど、いきなり山登りハイキングでは大変だろうから、まずは車で行ける範囲で自然を楽しもう。

最初は車も所有しておらず、彼のお姉さんから時々車を借りては遠出をした。自家用車がないと不便なので、一年後に中古車を入手した。

2018年3月末、イースター休暇前に見つけることができたトヨタのヤリスでの初ドライブ記念写真

それがトヨタのヤリスだ。車に対する興味ゼロの私は、聞いたことがない車種だった。けれど、車は走ればいい。トラックやバスなどの大型車と、小型乗用車しか区別がつかない私には、車種などどうでもよかった。「安全に走る車」であれば、あとはお任せ。

アイスランドの物価が高いことはご存じかと思う。10年以上型落ちだったが、日本円にして100万円近いお値段だった。購入後に手を入れたこともあり、日本だと軽乗用車を新車で買えるほどの値段をこの車に費やした。

ここで私はいかに日本車が優秀なのかを知ることになる。このヤリスは安定した走りを披露してくれた。燃費も最高で、フルタンクでさすがにアイスランド一周は無理でも、三分の二周をこなせるほどだ。走れる道はこのヤリスで全部走った。道が許す限り高地へも行った。

二駆で走れる道がなくなり、やはり四駆だろうということで選んだのが再度の日本車。私のスタンスはここでも「安全に走ればいい」で、彼が選んだのがSuzukiのJimnyだ。以前から、見た目はかわいいし、ジープだし、いいな、いいなぁと思っていたそうだ。

経済的に厳しいので新車は買いたくない。けれど、Suzukiのこの車は大人気で、中古車の値段が新車と変わらない。幸いなことに、アイスランドでのジムニーの新車はすぐに入手できる。日本では2年待ちとか?!

これで旅行先の自由度が爆上がりした。アイスランドの有名観光地はそれはそれで素晴らしいけれど、この地を旅する醍醐味は、やはり大自然にどっぷりと浸かることのできる場所であり、主には高地になる。

そんな道の中で最も有名なのが、アイスランドの南北をつなぐKjölur( キュールル)と氷河山の間を走るKaldidalur(カルディダルル)だ。以前は道路識別番号の前に「F」がつく山道指定だったが、現在はFがなく、自家用車であれば二駆でも通ることができる(レンタカーの二駆は禁止)。

四駆専用道であること、マナー厳守は当たり前で道路以外の場所(オフロード)走行は厳禁。

トヨタ車でこの道を走破した私たちは、がぜん高地の別の道に興味を抱くようになった。四駆がなければ話にならない。彼はいてもたってもいなくなり、遂に新車に手を出したのが2年前の6月だった。

最初こそトヨタ車の走行性との差に戸惑ったものの、トヨタは二駆で、Suzukiは四駆。

以来、大きな川を渡る以外はすんなりと上手にこなしてくれるこの車で、アイスランドの大自然を満喫させてもらっている。SuzukiのJimnyの足の相棒はヨコハマ・タイヤだ。オールイヤーのタイヤで、冬の滑りやすい道もしっかりとグリップしてくれる。砂の危ない道も上手にこなしてくれた。

Suzukiとヨコハマタイヤの黄金の日本コンビの性能を引き出してくれるのが家人で、彼の運転はとても安定している。難しい場所は一旦外に出て、道をよく見てアプローチを考えてから前進する。無理をしないのが大前提で、「無理そうなら引き返そう」が合言葉だ。実際に、道路の状態が悪いため引き返したことが何度もある。

ここでお断りを。Suzukiとヨコハマタイヤの宣伝のように見えるかもしれないけど、本当にありがたく使っているのでみなさんに知ってもらいたい!というだけです。スポンサー関係はない(そんな案件があれば大歓迎です!)。

今年も夏にどこへ行こうかと、既に心躍っている状態だ。けれど、最初に書いた通り、実はこれからの数ヶ月がとても辛い。

高地の道路はデリケートだ。雪解け時期の未舗装道を多くの車両が通ると、道がグシャグシャになり、その後の整備が非常に大変になる。最悪の場合は道が使えなくなってしまう。周囲の自然環境への影響も考慮する必要があるため、この時期、高地の道路は閉鎖される。

夏の道のオープン日は定められていない。夏日は法律で定めるのに、道路の夏のオープン日こそ、天気の勝手、道路状況次第で、早いところでは6月中旬ごろから、遅い道は8月にはらないとオープンしない場合もある。

冬に閉鎖される道もあるが、実際は自己責任を前提に通れる道も少なくない。自己責任というのは、その道を走って事故を起こすと高額負担になりますよ、という意味だ。Jimnyは小型なので、深い雪道には向かない。けれど、少々の雪であれば問題がないので、今回の冬は少し冒険をしたし、だからこそ学んだことも多かった。

今回のアイキャッチにした道はスナイフェルスネス半島の570号泉だ。先週(4月15日)は自己責任道扱いだったのが、今週に入り一旦閉鎖された。「閉鎖」道を走るのは違法で罰金が待っている。先週と今週ではエライ違いだ。

そして本日(4月21日)アイスランドの道路状況をサイトで確認すれば、F道路はほとんどが「閉鎖」されている。赤く縁取られた黄色の丸が通行止め道路だ。

アイスランドの道路状況はroad.isで!

F道のような凝った道を走ろうという旅行者は少数派だとは思うけれど、走りたいのであれば、時期の見極めをしっかりとお願いしたい。

昨日は夏の初日で会社が休みだった。その上、天気にも恵まれた。早速高地へと繰り出したかったが、道路状況は全滅。それでも冒険先は見つけられるもので、話はマニアックな方へと益々エスカレートしていく。

小倉悠加(おぐらゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。

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