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こちらアイスランド(225)アイスランド最強の“庶民の味方”、お食事処「Tjöruhúsið」〜小倉悠加

西フィヨルドへ行くと必ず寄る食事処がある。レイキャビクでは店の移り変わりが激しく、店構えは変わらずとも、オーナー・チェンジで中身がガラっと変わってしまったりする。特にコロナ後はそれが顕著だった。

アイスランドの地方もそんな感じで、「去年あった店が今年は・・・」と消えていることもあれば、中身がガタ落ちだったりすることも。

何も変わっていないはずだけど、たまたまシェフの調子が悪かったりすると、味や見た目の質に影響が出る。

そんな中、いつ行っても絶対にあのクオリティのものが出てくる!と太鼓判を押せるのがこの店だ。

西フィヨルドの中心都市、イサフョルヅルにある名物レストランのTjöruhúsið(チュルフーシッヅ)だ。

最初にこの店へ行ったのはいつだったのだろう。アイスランドに拠点を移す前に少なくとも3度ほど行った覚えがある。だとすると、最初は15年ほど前か。

私が知る限りこの店は全く姿勢がぶれない!客にもビジネスに変に媚びない!美味しいものを楽しく食べてもらいたい、自分たちはこういう感じの店にしたい、だからこのように運営しているのだ!という姿勢が本当によく現れている。

そして本当に美味しい❤️

かつては知る人ぞ知る存在だったこの店も、今や国際的に有名になりつつある。近年は予約が取れなくて泣くことが多くなってきた。西フィヨルドへ行くことを決めたら真っ先にここに予約を入れる。

アイスランドの最高峰だと思う。最高峰というのは、ミシュランの星がつくような意味ではなく、庶民の味方という飲食店の超基本的なところを押し通している点だ。

そういう意味では洒落た響きのある「レストラン」よりも、日本語の「食事処」がぴったりだと私は思っている。

魚が新鮮で味付けもいい。野菜類も豊富だし、食べ放題でコスパもいいし、座り心地がイマイチであることさえ、ここだからこれでいいんだよね!という独特の雰囲気が楽しい。知らない人との同席が基本なので、隣と会話をすることも常で、時には耳寄りな情報も入ったりする。

そんな訳で西フィヨルドへ行った際には必ず寄る。ここで食べることを計画に入れて時間設定もする。高いだけでがっかりすることもあるアイスランドの外食で、絶対に裏切られることのないこの店での食事は、ベリー、ベリー、インポータントなのだ。

ツイートの写真を見てもらえば分かるように、大皿料理だ。違う、大フライパン料理か!

この店は全席総入れ替え式で、昼は二回転(12時と13時半)、夕方は・・・3回転くらいさせるのかな、確か。いい時間帯はすぐに売り切れる。

気になる店構えはこんな感じ。店名は白いフェンスのところに書いてある通り。特に大きな看板だとか、目立つようなものがない。知らずに来ると、ここがお食事処だとはわからないかもしれない。

以下、ツイートとの写真とも被るけれど、順にご紹介したい。

入れ替え制なので、時間が来るまでは雪であろうが嵐であろうが、外でこうして待つことになる。

中に入ると、長椅子がズラリとあり、指定された場所に座る。指定外のところがいい場合は、オッケーしてくれることもあれば、NGを出されることも。予約のグループ人数により左右される。でも、どこに座ってもさほど変わりはない。

長椅子なので、出入りが非常にしにくい。文句を言ったところで状況が改善される可能性はないので、諦めて座りましょう。いかにも北欧のバイキング・スタイルっぽいといえばそうなのかもしれない。

座ると飲み物のオーダーをとりにくる。水のボトルは持ってくるし、水は無料。無料の水だけで済ますことは恥ずかしいことでもないし、アイスランドの水は美味しいのでぜひどうぞ。

全員が着席し、飲み物とパンが配られたところで、店のシステムの説明がある。面白おかしくやってくれる人もいれば、ごくサラリと済ます人もいる。アイスランド語と英語の両方の時もあれば、アイスランド人が多い時は英語は省かれる。

システムは簡単で、まずはスープを取りに行く。その間にあっつあつの巨大フライパンが運ばれてくるので、出揃った感じのところで、メインを取りに行けばオッケー。お代わり大歓迎。好きなだけ食べてね〜方式。

ここからは遠慮せず早く行った方がいい。一人がスープを取りに行くと、ほどなくスープが長蛇の列になる。

寒い国なので、暖かいスープが五臓六腑に染み渡る。私はあちこちのシーフードスープを食べ歩いてきた。ここのシーフードスープはとびきり具が多く、魚もえびもふわふわで美味しい。

「え?具は多くないですよね」を上の写真を見て思わないでほしい。これを食べすぎると後が続かないので、私は必ず「少なめ!子供の量くらいで」とお願いするからだ。

付け合わせのパン自体は普通だけれど、ニンニクとハーブが練り込んであるバターが最高過ぎて、これまた食べ過ぎ注意。

ここから飛ばして食べたらダメだからね、約束だよ!

そしてメインの魚がどっさり提供される。

タラ、オヒョウ、サーモン、いわな、あんこう等、その日によって魚の種類は変わる。ここを訪れる人が大好きなのは、タラのホホ肉の部分で、このお食事処の名物といっていいだろう。味付けも、オリエンタルな感じのものから、クリーミーなもの、イタリアンっぽい?というものまで。

ここは常に素材が良質で、ハーブ類もとてもフレッシュだ。本当にうまうまだよ!

魚がメインではあるけれど、隠れた推しがこの野菜類。家族や友人に連れられ、ベジタリアンもやってくる。だから普通のレストランよりもサラダ類がとても充実している。アイスランドにしては珍しいほど大量の野菜で、おまけに味付けが意外にもおしゃれ!

アイスランドに住むと野菜不足になる。野菜がものすごく高いのと、日本人が食べたくなるような葉物や根菜類がほとんど無いのだ。

だからこの時とばかり野菜を大量に皿に盛る。野菜が三分の二、魚が三分の一が私の黄金比だ。

私の皿の写真を見せてもどこに何があるやら〜、かもしれない。とにかく野菜もりもり、魚は一皿に二、三種類までと決めている。

野菜マシマシの私の皿を見た夫は「ここに来たら魚だよ、魚!魚を食べないでどーする?!」との指摘を受けた。も、本当にアイスランド人は食に関してダメだなぁ、と心で嘆く。

「あなたの取り方だと、同じ質感のものばかりで飽きるよ。野菜をまめに挟んだ方が美味しく食べられるし、これ一度で私が済ませると思ってる?あと2度くらいお代わりするよ。そしたら魚を美味しく6種類制覇できて、その上に野菜もたっぷりとれる。その方がバランスもいいでしょ!」と丁寧に教えた、つもり。

最初の2回はだいたいこんな感じでがっつりだ。ガツガツと見事に食べ続ける私を横目に、魚ばかり取ってきた彼は半分でギブアップにリーチがかかってきた。

「ね、脂っこいものが多いから、途中で重々しくなってくるでしょ。野菜のカリカリした食感、ドレッシングの酸味で口をさっぱりさせてから、また魚に移動するのが得策。やってみればわかるから」と。

彼は私の適切な指導により渋々野菜を追加してきた。「確かに・・・」と。

というようなことを過去に何度かやったので、現在の彼は私ほどではないけれど野菜もしっかり盛ってくるようになった。妻の言うことが正しいのだ。絶対に!

という感じで私はこのお食事処では普通3皿分を平らげる。アイスランドでこれほど野菜をしっかり食べられるチャンスは滅多にない。それも茹でたら小さくなってしまう葉物だけではなく、ブロッコリーやカリフラワー、時にはラタトゥイユやナスの煮物なども出てくるから、本当にどれだけ嬉しいやら。

一通り平らげると、次は紅茶かコーヒーをセルフで頂く。デザート的なビスケットやチョコレートも自由に食べられる。写真がなくてごめんだけど、そういったスイーツはスーパーに売ってるものなので割愛でいいかと。

これだけ食べられて今回(2026年4月)のランチは一人7500だった。涙が出るほどお安い!超庶民の味方!!そして本当に美味しい!!!

安くて感涙?7500円って高くて泣かないか?と思った人はアイスランドの物価を全く知らない。

アイスランドは外食が本当に高い。フライ・ポテト付きのハンバーガーは今や円安も手伝って5千円に達しようとしている。魚料理一品で7-8千円もする。普通のステーキ一皿1万円が普通だ。ちなみにビール一般は2千円から2500円くらい。

なのに、なのに、ここはスープ、魚と野菜が食べ放題で1名7500円!本当にいいんですか?!夢じゃないっすよね?!ほっぺ、つねってもらえますか?!でしょ!

西フィヨルドまで来たら、ここで食べなくちゃ損だと思わない?

一度マジで入れなかったことがあり、我々の落胆たるや・・・。

店内での無料ライブ。フジ・ロックにも来るオブ・モンスターズ・アンド・メンのヴォーカル、ナンナが演奏中。

このお食事処、別の意味でも結構な名物店で、酒を取り扱うライセンスを取得しておらず、役人が来るとタダ酒を飲ませてもみ消していたとか、店にトイレがないから飲食店の基準に合わないとか、噂を含めてまぁいろいろとあり、行政側が潰そうとしたことがあったらしい。

「あぁそうなの、それじゃいいよ。店閉めるから」と素直に閉めてしまったところ、地元住民から「ぜひ店をやってくれ」コールが高まり、行政側に圧倒的な圧力がかかってきた。役人もタダ酒が飲めなくなった。

 小さい街なので、そんな指導をした役人が隣の家のおじさんだったりする。庶民の楽しみを奪う役人は恨まれる。居心地が悪い。

とにかくまぁ現在もあの形態で営業し、いまや国際的に話題の店になってしまい、もう閉められないよね。実際。観光業の目玉が消滅することになる。それは街全体の損失でもある。とかなんとか。

 美味しいし、お腹もいっぱいになるし、話のタネにもなる店なので、西フィヨルドへ行く際はぜひどうぞ。

小倉悠加(おぐらゆうか)
東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド在住。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。高校生の時から音楽業界に身を置き、音楽サイト制作を縁に2003年からアイスランドに関わる。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、社会の自由な空気に魅了され、子育て後に拠点を移す。休日は夫との秘境ドライブが楽しみ。愛車はジムニー。趣味は音楽(ピアノ)、食べ歩き、編み物。