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こちらアイスランド(95)アイスランド語は世界一複雑?!数字や固有名詞も容赦無く七変化〜小倉悠加

今回はいかにアイスランド語が複雑怪奇であるかの第一回目。数字の奇々怪々。

その前に近況を報告すれば、これを書いているのは9月末。まだ大学は辞めてない。それどころか、教室という環境の中で授業内容に集中するのが心地よい。早くも「ここに来なくなったら寂しくなるだろうなぁ」と感慨に耽ることさえある。

というようないけてる60代のキャンパス・ライフの話は後日にまわして、今日は習いたてのアイスランド語が、いかに(日本人感覚の)理から外れているかをご紹介したい。

日本語がどれほど理にかなった言語なのか、日本に生まれ育ち、母語として覚えた私にはよくわからない。どちらにしても英語を身につけるのはとても難しかった。なのにアイスランド語をかじるようになると、英語が意外なほど簡単に思えてくる。そして、英語をいかに身につけたかの体験に基づき、アイスランド語もアプローチできるるような気がしている。以前苦労して通った障害物競走と似ているような気がする。

英語は努めて正しく使っているつもりではあるけれど、実は英文法をよく知らない。文法の専門用語も知らずにここまで来てしまった。主語、動詞、名詞、前置詞、形容詞あたりまではいいとして、「格」はコンセプト自体がよくわからない。

ドイツ語には格があるそうなので、以前ドイツ語を学んでいたなら、理解の足しになったことだろう。学生時代にドイツ語を避けたことが悔やまれる。

そうはいえ、アイスランドは複雑とはいえ、時には簡単なこともある。

例えばアイスランド語の「私」は、「ég」しかない。よかった!!日本語の方がその点は複雑だ。私、あたし、あたい、小生、自分、おいら、おらっち、わらわ、我輩、我、オレ、俺、ボク、ぼく、僕など、平仮名やカタカナまで書き出せば、幾つあるやら。その点、アイスランド語は(今のところ)ひとつだけ。ありがたや!

アイスランド語はとにかく変化が激しい。語尾が変化するだけならまだしも、語中の母音も変化する。単語が辞書の原型とは似ても似つかない形になっていることがある。ありすぎるので諦めて覚えるしかない。

名詞は変化しても固有名詞はそのままだと思うと、それも甘い。地名も人の名前も変化する。

私の名前はYukaと横文字では書いている。一人称として使う分にはYukaのままでいけるが、場合によってはYukuに変化する。それを聞いても自分の名前ではないと思う外国人が続出するのも無理はない。固有名詞を変化させるとは、強引にもほどがある!

今回特にご紹介したいのは数字だ。数字は世界共通で普遍だと私は思っていた。アラビア数字で書けば問題はない、はず。でも読み方は注意が必要だ。

アイスランド語の数字には男性、女性、中性の3種類の形がある。日本では数字を性別で考えることはない。車なら一台、二台、馬なら一頭、二頭というように、何かを数える場合は対象物の単位が変化するだけだ。

  数字も変化するし、対象物も数により変化するものがほとんど

数字の後に続く名詞の性により語尾が変化するのはまだいいとしよう。けれど、同じ数列の中に別性の数字が混在するのが本当に解せない。

ただ、性別があるのは1-4の数字のみなので、5以降は全部同じ。よかったと言うべきなのか・・・。

例えば、機械式の腕時計が2,881,231 isk(アイスランドクローナ)だったとしよう。価格は数字だから、そのまま中性で読めばいいかというと、ジッジー、間違ってます。

「2,881,231」の100万の位は女性、その他は中性で、最後の一の位は女性になる。

それを文字に書き出すと、tvær milljónir átta hundruð áttatíu og eitt þusund tvö hundruð prátíu og ein krónur ( 正:króna ) となる。なんじゃそりゃ、ですね。これは数字の「単位」に性別があるのが理由。(注:最後の数字が1なので、それに続く価格のクローナは複数形ではなく単数であるというご指摘をいただきました。なのでkróna と訂正させていただきます。)

バラバラにすると、こんな風に読む。

2百万 tvær milljónir  百万の位=女性  
881千 átta hundruð áttatíu og eitt þusund 千の位=中性 
2百 tvö hundruð 百の位=中性
3十 prátíu   十の位=中性
プラス 1 og ein   一の位=女性
 milljónir = milljónの複数形 
 þusundは単数複数同じ 
 hundruð = hundraðの複数形 
 krónur = アイスランドクローナ 女性名詞 krónaの複数形 
og = andの意味で、最後の数字の前に付けるのがルール。

クローナが女性名詞なので、数字全体が女性形になるならまだ理解するけれど、なぜ最後の一桁のみが影響されるのか?そういうルールだから覚えてね、ということしか私には分からない。

上記をよく見ればわかるが、「2」という数字は百万単位は「tvær」で、百の単位は「tvö」になる。「1」の数字も千の位では中性の「eitt」で、一の位は「ein」となる。ややこし〜。それでもって、「eitt」の発音がエヒッみたいなので、私には英語の8に聞こえて仕方がない。

一の位が女性形になるのは価格に限ってのこと(他にも例はあるかもだけど)なので、例えば電話番号ではこういった変化はしない。ついでなので言及しておけば、時間の1-12時は中性形であるが、1-60分は女性形なので、2時2分は「tvær minútur yfir tvö」となる。同じ2の数字なのにぃ・・・。

それでは100万以上の位はどうなるのか?教科書に書いてある限り、10億からは男性形になるようだ。ちゅーことは、20億であれば「tveir milljarðar」になるので、これで数字「2」の3態「tveir, tvær, tvö」をご覧いただけたことになる。

前述の読み方は数字が主格の場合で、対格、与格、属格になるとまたまた似て非なる言葉が出てくる。牛歩で覚えるしかない。

何事も慣れとはいえ、あまり意味があるとは思えないこういう不規則な数字は、改めていただきたいと切に願う(=簡単に覚えられるようにしてよ!)。

実生活でアイスランド語を使って切羽詰まる場合は、英語で話すか、または全部中性形で発声すれば理解してもらえることだろう。それでも、知識として知っておくのは大切。

ここでSAMEJIMA TIMESの読者のみなさんはお気づきと思うが、なんとなく英語と似ていないか?

百の単位 英語:hundred アイスランド語:hundrað ( hundruð )
千の単位 英語:thousand  アイスランド語:þusund
百万の単位 英語:million  アイスランド語:milljón( milljónir )

英語とアイスランド語の音はほぼ同じ。ちょこっと崩せばいいだけ。さすがゲルマン語源の親戚同士だ。似ている。

似ているということは、ほぼ覚えなくていい?!いや、覚える必要はあるけれど、日本語の「百」「千」「万」という単位から、共通点のないhundred, thousand, ten thousandという言葉を覚えるのは大変だ。とても苦労した。それに比べると簡単。いや、簡単じゃないんだけど、さ(笑)。

アイスランド語の文法は訳わからずながら、発音はひどく難しいとは感じない。学び始めて一ヶ月も経たないため、まだ奥行きが見えないといえそれまでだが、中学生で初めて英語を勉強し始めた時のことを思うと、拍子抜けするほど分かりやすい。

英語の会得に関して印象深く覚えているのは、数字が最後の難関だったことだ。英語の会話は理解できても、発声される数字を瞬時に理解できるようになったのは、最後の最後だった。どれほど時間を要したかを覚えていないほど、数字には本当に苦労した。それもアイスランド語のように女性、男性、中性のない数字だ。ましてや変化の多いアイスランド語ーーー。

それがなんと、やはり親戚同士はありがたい。形が違うとはいえ、そして「1」が英語の「8」のように聞こえることに注意は必要だが、それ以外は英語と似ている。

「2」はtveir(ツヴェイル), tvær(ツヴァイル), tvö(ツヴー)で、全部「ツ」の発音が最初にくる。「3」以降も同様に「スリ」という音が付くし、「4」は「フョ」でfour(フォー)と似ている。

「5」は「フィム」(英語のfiveをローマ字読みにすればフィブ)。「6」は「セックス」と発音する。エロのセックスではなく数字の6なので間違いなきよう。

「7」は「シゥォ」という特殊な発音ではあるけれど、英語の「seven」の最初の音が無静音の「s」なので共通。「8」はアウタで英語「eight」と少し似てる。「9」は「ニーユ」で英語のnineをローマ字読みみしたニーネだと思えばそんなもの。「10」は「ティーユ」で最初の音が「t」だ。

これで数字の基本中の基本7割方は、英語からの類推で済ませることができる。実にありがたい。

そのせいか、アイスランド語の数字に関しては、英語の数字を覚えた時よりも楽な気がする。

似て非なるものではあるけれど、日本語と英語ほどは離れてない。アイスランド語が英語の親戚であることは本当にありがたい。英語を会得していることが、これほど有利であったとは。なるほど、ヨーロッパの人々が軽く数カ国語を話す理由が、やっと実感として理解できた気がする。

アイスランド語は難しい。アイスランド語に挑戦するのは一世一代の大仕事だと思う。英語は広く世界で通じるし、他のインド・ヨーロッパ語族ゲルマン語派を学ぶ際のクッションとしても大いに役立つ。アイスランド語の前に、まずは英語を会得することを強くお勧めしたい。

(お断り:アイスランド語学習初心者につき、勘違いや、認識不足もるかと思います。平にご容赦ください。間違いの指摘等は歓迎です。ぜひコメントに残してください。)

小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。自己紹介コラムはこちら




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