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こちらアイスランド(98)生きた化石言語をオンライン学習。大学と同じ無料教材でアイスランド語入門!〜小倉悠加

中間試験も無事に終え、学生生活は続いている。60代の手習は若い頃とは目線が異なり、このような年齢で、それも海外で学びの場を得るとは、なんともラッキー。

アイスランド語を学びたいと思っても、留学するのは難しい。そこで日本に居ながらにして、手軽、気軽、そして無料でいかにアイスランド語を学ぶかを今回はご紹介したい。

アイスランド語、難しいと評判ですよね。確かに〜。中世から変わっていないと言われる複雑性を保ったままの古語。だからこそ、言語学者には魅惑の言語。アイスランド語が分かれば、中世の文学を読みこなせるとさえ言われる。

アイスランド語がどの程度難しいかは、インド・ヨーロッパ語族、それもゲルマン語系統の言葉を、どの程度会得しているかに大きく左右される。つまりは英語、ドイツ語あたりを会得していれば、古語とはいえ歯が立つ範囲だ。たぶん。

実際、初めて英語を学んだ時よりも、アイスランド語を学ぶことの方が楽だ。なにせ英語とアイスランド語は遠い親戚で、構成や見た目が似ている。格変化や名詞ごとの性別の変化には泣かされるけれど、それは慣れの問題でもあり、量や数をこなせば何とかなりそうな気配。たぶん。

便利な道具として、とりあえず覚えたいのは英語。アイスランド旅行に必要なのは英語であり、アイスランド語ではない(って言語の消滅危機じゃん!)。

それでも、オンラインであれば少し覗いてみたいという野次馬なサメタイ読者に、以下をどうぞ。

以下、紫文字をクリックでリンク先に飛びます。

Íslenska fyrir alla 外国人用アイスランド語教本
アイスランド大学のアイスランド語入門コースは、これが多用されている。民間語学学校でもこのテキストを採用。教本はすべてサイト上で無料公開されており、PDFを印刷して使用することができる。音声ファイルやワークブック等の教材もあり、文法に関しても、この教材が一番わかりやすい。現在、無料入手できる中では最適な教材。

Icelandic Online アイスランド語入門学習サイト
アイスランド大学のコースでも正式に使われている教材。サバイバルから中級程度まで。文法説明等がなく、いきなり格変化が出てくる。構成はインタラクティブでわかりやすくはなっているが、全くの下地なしにこのサイトを覗いて、完結できるかは疑問。日本で出版されているアイスランド語入門本などを参考に文法を理解していくことが必要。(*文法説明は別の場所[ココ]に置かれているが、すべて英語で書かれているため、英語力が必要。)

アイスランドの生活に則した内容で、オンラインコースに着手したのが2004年であったため、若干時代遅れな物事もあるけれど、大勢に影響はない。ご愛嬌といった程度。

プラス・コースは有料で先生につくことができる。サバイバス・コースの上の、Icelandic Online1及び2のコースのみのオプション。受講期間は大学と全く同じなので、憶測にすぎないが、大学の配信講座をそのまま流用しているのかな?という気がしないでもない。期間は八週間で、2022年10月現在料金は1コース5万アイスランド・クローナ(約5万円)。

このサイトを使用するには簡単な登録が必要。プラス・コース以外無料。

Smabokaskapu 子供用のインタラクティブ読み物
アイスランド語は絶滅危惧種に片足が入っているような極小言語だ。教本が少ない、教材が少ない。勉強のために何か簡単な本を読もうとしても、大人向けに簡単な言葉で書かれたものが存在していない。従って副教材は子供用の絵本に頼ることになる。

ここにあるのは音声ファイル付きの子供用絵本。途中、簡単な練習問題も出てくる。なかなか楽しいとはいえ、正解したからといって、ファンファーレを吹き鳴らされても(苦笑)。

とりあえずはこの程度でどうだろうか。Youtubeなどでもアイスランド語を取り上げている人もいるので、そういうのも探して参考にするのも悪くない。

あと、アイスランド語の理解に役立ちそうなサイトはいくつか見つけているけれど、結局すべて英語がベースなので、英語を理解できないことには何とも。。。結局、まずは英語をやっておいてね、ということになる。

最後に辞書を少しご紹介したい。私はまだまだ超初心者なので、上級者向けの辞書は使っていないし、使いこなすこともできない。なので、以下のサイトで辞書はとりあえず間に合うはず。

Beygingarlýsing íslensks nútímamáls 活用チェックはここ!
最もお世話になっている辞書がBÍNだ。アイスランド語は名詞毎に性別があり、動詞も形容詞もあれもこれも格変化が恐ろしく多い。一定の法則はあるけれど、例外や紛らわしいものも多く、いちいち調べることになる。辞書によっては原型でしか結果が出てこないものもあるが、この辞書はつづりの一部分でも候補が出てくるところが有難い。

Icelandic Online Dictionary  アイスランド語→英語のオンライン辞書
単語の意味を調べるのであればここ。アイスランド語から英語の一方通行。アイスランド語の特殊文字を使わずとも、候補が出てくる。詳しくはないが、活用、熟語や用法もある程度は見当がつけられるようになっている。

現時点で私が使っているのはほとんどこの二つだ。もう少し理解が進めば、例えばSnarraÍslensk nútímamálsorðabókが便利そうではある。

ここで何か気がづかない?実際にリンク先を見に行った人はわかったことと思う。そう、日本語は蚊帳の外。よくて英語、ほとんどがアイスランド語のみの表記だ。

世の中便利になったもので、今は機械翻訳がある。わからないことはグーグル翻訳にお願いしよう。その場合、アイスランド語を日本語にすると間違いが増えそうなので、親戚同士の翻訳にとどめるようアイスランド語←→英語に設定してある。日英の翻訳であれば、DeepLがお利口だ。けれど残念なことに、DeepLでのアイスランド語の扱いはまだない。

それから、Glosb辞書という辞書の寄せ集めをご存じだろうか。「勧める訳ではないけれど、学生がよく使っているらしいので、一応言及しておきます」という微妙な説明付きで講師側から入学当初に紹介された。なるほど、英語→アイスランド語にしたい場合はグーグル以外に道がなかったので、あちこちのリソースから内容を集めてくれるこのサイトはけっこう嬉しい。

ここまででほとんど見えたと思うが、アイスランド語学習に関しては、日本語よりも英語の方がやりやすい。日本語に置き換えるよりも間違えも少ないし、何よりもわかりやすい。言語が近いというのは、こういうことなのかとしみじみ。見た目は似ていても、性格が異なる従姉妹同士のような、そんな関係かと思う。

   例えばーーー
   アイスランド語: Ég gangandi í skólan.
   英語: I walk to school.
   日本語:私は学校へ歩いて行く。

これを書いて、「日本語だけが異質なのは当たり前じゃん!」と自分で突っ込んで笑った。見た目、違いすぎですよね。ちなみに、機械翻訳では上記のように訳されたけれど、私なら「私は歩いて学校へ行く」を選ぶ。

サメタイの読者の中に、何名アイスランド語に興味ある人が存在しているかは分からないけれど、言語学者の間では、そして文学好きの間では、どーせやるならアイスランド語!のような雰囲気さえあるーーーそういう印象なのは私だけかもしれないけど。とにかく、文学において実はとても重要な言語。中世からほとんど変化していない古代語であり、生きた化石言語をあなたもどうぞ。

小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。自己紹介コラムはこちら

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