※この連載はSAMEJIMA TIMESの筆者同盟に参加するハンドルネーム「憲法9条変えさせないよ」さんが執筆しています。
<目次>
1.三権分立とは
2.国会による内閣と裁判所の監視
3.内閣による国会と裁判所の監視
4.裁判所による国会と内閣の監視
5.国民による裁判所の監視
6.国民による内閣の監視
7.国民による国会の監視
8.トピックス:衆参5補選
1.三権分立とは
今日は、三権分立と有権者による権力の監視について見ていきます。
「三権分立」とは、18世紀に出版されたモンテスキュー『法の精神』に記されている考え方で、権力が一つの機関に集中して国民の自由が脅かされることを防ぐ目的で、立法権、行政権、司法権を別々の機関に分有させるという考え方です。
日本では、国会が立法権を有し、内閣が行政権を有し、裁判所が司法権を有することとなっており、日本国憲法によって国会を「国権の最高機関」と規定したうえで、三権が互いに抑制し合って均衡を保つような政治体制が採られています。
そしてさらに、主権者である国民が、国会、内閣、裁判所をそれぞれ監視する制度になっています。
それらの制度について、一つずつ具体的に見ていきましょう。
2.国会による内閣と裁判所の監視
「国の唯一の立法機関」である国会は、政治の実際を調査する「国政調査権」を有しており、国会による内閣の監視は、「内閣総理大臣の指名」と「内閣不信任の決議」によって行われます。
また、内閣による裁判所の監視は、地位にふさわしくない行為をした裁判官を辞めさせるかどうかを判断する「弾劾裁判所の設置」によって行われます。
3.内閣による国会と裁判所の監視
内閣には行政の各部門の仕事を指揮監督し、法律で定められたことを実行する役割があり、内閣による国会の監視は、「国会召集の決定」と「衆議院の解散の決定」によって行われます。
また、内閣による裁判所の監視は、「最高裁判所長官の指名」と「その他の裁判官の任命」によって行われます。
4.裁判所による国会と内閣の監視
裁判所は法に基づいて紛争を解決する役割を担う機関で、裁判所による国会の監視は「法律の違憲審査」によって行われ、裁判所が有するこの権利は「違憲立法審査権」とも呼ばれます。
その中でも最高裁判所は、法律などが合憲か違憲かについての最終決定権を持つことから、「憲法の番人」と呼ばれることがあります。
また、裁判所による内閣の監視は、「命令・規則・処分の違憲・違法審査」と「行政裁判」によって行われます。
5.国民による裁判所の監視
国民による裁判所の監視は「国民審査」によって行われ、日本国憲法第79条2項に「最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。」と規定されています。
最高裁判所裁判官国民審査は、裁判官の氏名が印字された箇所の上にある記入欄に「×」(バツ)を記入するというやり方で投票が行われます。
裁判官の氏名の上にある記入欄に「×」を記入した票は、該当する裁判官に関して「罷免を可とする票」としてカウントされ、裁判官の氏名の上にある記入欄に何も記入されていない場合は、空欄のままとなっている裁判官に関して「罷免を可としない票」としてカウントされることになります。
棄権したい場合には、投票用紙を受け取らないようにするか、受け取った投票用紙を返却する必要があり、何も書かずに投票箱に入れてしまうと、「罷免を可としない票」(分かりやすく言えば「信任票」)としてカウントされてしまいます。
ちなみに、記入欄に「○」(マル)などの他の記号等を記入してしまうと、記入した裁判官に関してだけではなく、投票用紙丸ごと「無効」として取り扱われます。
そして、最終的に、「罷免を可とする票」が有効票数の過半数に達した裁判官は、審査結果告示日から30日後に罷免されることとなっています。
制度的にはこのような仕組みになっているのですが、今までにこの制度によって罷免された裁判官は一人もいません。
そういう意味では、この制度が果たして有効に機能していると言えるのかどうか、大いに疑問が湧いてきます。
6.国民による内閣の監視
国民による内閣の監視は、憲法や法律に明記された制度としては全く何もないのですが、学校の社会科の教科書には「世論」というものが記載されており、これは実際の政治に大きな影響を与えています。
経済評論家の植草一秀さんは、「2006年発足の第1次安倍内閣以降、内閣支持率が3割を割り込んだ内閣は10ヵ月以内に消滅する」という法則を提示しています。
ニュース番組などでも紹介される有名な話としては、かつて「参議院のドン」と呼ばれた自民党の青木幹雄さんが「青木率」という政局の見方を提唱していて、「内閣支持率+自民党政党支持率<50」になったら内閣が倒れる、ということが法則として語られています。
「世論の力で内閣が倒れる」ということ以外に、「世論の力で内閣が何らかの政策を断念する」という話で言えば、「♯検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグのことが記憶に新しいのではないかと思います。
政権が吹き飛んでもおかしくないような重大な政治事件をことごとく「不起訴」にして闇に葬り、「官邸の守護神」と呼ばれた東京高等検察庁の黒川弘務検事長の定年延長問題に絡んで、「内閣や法務大臣が認めれば定年を最長で3年まで延長できる」とする検察庁法改正案が国会で審議されていたのは、2020(令和2)年の春のことでした。
2020年5月8日(金曜日)午後7時40分に、一民間人である「笛美」さんが、次のようなツイートをします。
このツイートがはじまりとなって、「#検察庁法改正案に抗議します」のハッシュタグを付けたツイートを一般の人々だけではなく著名人も多く発信するようになり、ツイートの輪が広がって、3日後の5月11日(月曜日)にはツイートが500万件にまで達しました。
最終的にツイートの件数は1,000万件を超え、5月18日(月曜日)に政府与党は法案成立を見送ることを決め、検察庁法改正案は廃案となりました。
この時はコロナ禍の真っただ中で「ステイホーム」が強く推奨されていた時期であり、みんなが家にいて国会などの政治の動きに関心を持っていたという特殊な事情もありますが、それでも、世論の盛り上がりで政府与党を動かしたという事実は、大いに称賛される内容だと思います。
7.国民による国会の監視
最後に、国民による国会の監視ですが、これは「選挙」によって行われます。
選挙の際に投票を行うことができる「選挙権」は、実はかなり貴重なものです。
選挙権を持つ人々の範囲がどのような形で広がっていったのか、その歴史的な変遷を振り返ってみましょう。
選挙権の変遷
1889(明治22)年 黒田清隆内閣により公布
選挙人:直接国税15円以上を納める満25歳以上の男子
1900(明治33)年 山県有朋内閣により公布
選挙人:直接国税10円以上を納める満25歳以上の男子
1919(大正8)年 原敬内閣により公布
選挙人:直接国税3円以上を納める満25歳以上の男子
1925(大正14)年 加藤高明内閣により公布
選挙人:満25歳以上の男子(納税額による制限なし)
1945(昭和20)年 幣原喜重郎内閣により公布
選挙人:満20歳以上の男女(納税額による制限なし)
2015(平成27)年 安倍晋三内閣により公布
選挙人:満18歳以上の男女(納税額による制限なし)
納税額による制限がある「制限選挙」から納税額に関わらず誰でも投票できる「普通選挙」に変わったのは1925(大正14)年、男性のみにしか認められていなかった選挙権が女性にも認められるようになり「婦人参政権」が確立されたのは1945(昭和20)年のことです。
国会の議席配分を決めるのは私たち有権者の1票1票の積み重ねです。
2021(令和3)年衆院選の投票率は55.93%、2022(令和4)年参院選の投票率は52.05%ということで、4割以上の有権者が投票権をドブに捨ててしまっています。
やはり一人でも多くの有権者が投票所に足を運んで、国会をしっかり監視していくことが大切なのではないでしょうか。
8.トピックス:衆参5補選
4月23日(日曜日)は、統一地方選挙の後半戦と衆参5補選の投票日です。
衆参5補選について、順番に見ていきましょう。
まずは衆議院千葉5区の補欠選挙から。
次は衆議院和歌山1区の補欠選挙。
続いて衆議院山口2区と山口4区の補欠選挙。
最後に参議院大分選挙区の補欠選挙。
立憲民主党にとっては、千葉5区の矢崎堅太郎さん、山口4区の有田芳生さん、参議院大分選挙区の吉田忠智さんの3人で何勝できるのかが今後の党勢を占ううえで非常に重要になってきます。
また、自民党にとっては、和歌山1区の門博文さんと山口2区の岸信千世さんの議席獲得が成るかどうかが今後の党内政局を大きく占うことになります。
非常に重要な選挙、該当する選挙区にお住まいのみなさまは、ぜひ投票所に足をお運びください。
憲法9条変えさせないよ
プロ野球好きのただのオジサンが、冗談で「巨人ファーストの会」の話を「SAMEJIMA TIMES」にコメント投稿したことがきっかけで、ひょんなことから「筆者同盟」に加わることに。「憲法9条を次世代に」という一民間人の視点で、立憲野党とそれを支持するなかまたちに、叱咤激励と斬新な提案を届けます。