※この連載はSAMEJIMA TIMESの筆者同盟に参加するハンドルネーム「憲法9条変えさせないよ」さんが執筆しています。
<目次>
0.はじめに
1.第1章「10月革命前夜」
2.第2章「石丸新党旗揚げ」
3.第3章「10月革命おこる(衆議院総選挙編)」
4.第4章「10月革命おこる(首班指名選挙編)」
5.エピローグ「10月革命その後」
0.はじめに
お盆休みも近い今回は、一昨年・昨年と同様に「短い小説」をお読みいただき、ゆるーい話でリラックスしていただければと考えております。
ちなみに、これまでに書いた短い小説は、こちらです。
本日掲載の「短い小説」は、「石丸伸二内閣誕生す」というタイトルですが、先にオチを言っておくと、これまで書いた小説と同様に夏の夜に私が見た夢の話で、現実の政治の動きとは全く関係がありません。
話に登場する政党や政治家等の名前は実在する政党や政治家等と同一ですが、政策においても性格においても政治行動等においても実在する政党や政治家等とは全く関わりありません。
完全なフィクションということで、「短い小説」をゆるーくお楽しみください。
1.第1章「10月革命前夜」
2024年秋。日本とアメリカは政治の季節を迎えていた。アメリカで民主党ハリスと共和党トランプによる大統領選挙の本選が11月に控える中で、日本では9月に野党第一党の立憲民主党の代表選挙と与党第一党の自由民主党の総裁選挙が行われた。立憲民主党の代表選挙では元総理大臣の野田佳彦が新しい代表に選出され、自由民主党の総裁選挙では幹事長の茂木敏充が新しい総裁に選出された。
岸田文雄に代わって新しい総理大臣に選ばれた茂木敏充は、「意外と敏充」をキャッチフレーズにキャンペーンを展開し、マスコミからの全面的な後押しを受けて、高い支持率で船出した。
「衆議院を解散するなら今だぞ!」
キングメーカーのあの人の声を聞くのが早いか、茂木敏充は総理大臣就任早々の「ご祝儀相場」の支持率に気を良くして、10月解散を決意したのである。
2.第2章「石丸新党旗揚げ」
「日本国憲法第7条により、衆議院を解散する。」
額賀福志郎衆議院議長の声が、議場に響き渡った。
解散の号砲とともに、小沢一郎が数名の議員を引き連れて立憲民主党を離党し、れいわ新選組へ合流した。
さらに永田町に激震が走ったのは、衆議院解散の翌日であった。
日本維新の会代表の馬場伸幸、国民民主党代表の玉木雄一郎、教育無償化を実現する会代表の前原誠司、そして前安芸高田市長の石丸伸二の4人(彼らは自分たちのことを「政治改革カルテット」と称した。)が揃って記者会見を行った。
「新党を立ち上げます。」
石丸伸二を党首とする新しい政党の名前は「碇新党」(いかりしんとう)。
馬場伸幸、玉木雄一郎、前原誠司の各党代表3人を除く3党の衆議院議員とその候補者が集まる「統一名簿政党」として、「碇新党」は発足することとなった。
3党の候補者だけでは289ある小選挙区は埋まらないため、候補者を公募することとし、同時に選挙資金のカンパも募った。
総選挙の公示日まで日にちがなく、それは時間との勝負であった。
そして斬新だったのは「碇新党」の公約だった。
「総選挙後に行われる特別国会の首班指名選挙の投票で『石丸伸二』の名前を書く。」
このことを選挙戦で掲げる唯一の公約とし、それ以外の公約については「選挙運動を進めていく中で、国民のみなさんの意見に真摯に耳を傾けて公約を練り上げ、特別国会の召集日までに政権奪取に向けてのマニフェストを完成させます。」としたのである。
3.第3章「10月革命おこる(衆議院総選挙編)」
衆院選公示日、「碇新党」(いかりしんとう)の陣容に世の中は驚愕した。
全国11ある比例ブロックの単独1位候補は、全員が選挙未経験者。
NPO法人代表、企業経営者、元プロ野球選手、元Jリーガー、地方タレント、フリーアナウンサーなど、「新しい政治」が始まることを予感させる多種多様なメンバーが比例名簿に名を連ねたのである。
各ブロックの2位には小選挙区との重複立候補者が並んだ。こちらは、ほぼ全員が選挙の経験者であった。
その顔ぶれの中には、立憲民主党から衆院選出馬を予定していた者の姿もあった。
さらにその下の順位で、自前で選挙資金が調達できる未経験者がズラっと並んで立候補した。この「未経験者」たちが、「2005年郵政選挙の時の杉村太蔵」のように誰も予想しない形で当選を果たし、国会内を闊歩することとなるのであった。
「今回の総選挙は、日本の次の総理大臣を選ぶ選挙です。東京都知事選挙では、実質的に小池百合子さんと蓮舫さんと石丸伸二の3人で都知事の座を争って、私は勝つことができませんでした。しかし、今回の総選挙は違います。12年前の民主党政権の政治に戻りたいという人は、野田元総理のいる立憲民主党に投票するでしょう。そして、今の自民党政権の政治が続いてほしいという人は、茂木総理のいる自民党に投票するでしょう。しかし、新しい政治を実現したい、石丸伸二を日本の新しい総理大臣にしたいという人たちがみんなで碇新党に投票すれば、それでアッという間に日本の政治は変わるんです。」
石丸伸二は選挙戦でそのように訴えた。
そして「テレビで有名な前明石市長の泉房穂は3期12年で中学校しか給食費無償化を実現できなかったが、前安芸高田市長の石丸伸二は1期4年の間に小学校と中学校の給食費無償化を実現した。」と訴える短い動画が、TikTokとYouTubeショートを席巻した。
そのことは、泉房穂が行った明石市政と石丸伸二が行った安芸高田市政に対する全体的な評価としては適切とは言い難かったが、とはいえ、言っている内容自体は事実関係としてはウソではないため、政治家ではなくコメンテーターの立場にある泉房穂は、そのことに対する有効な反論を展開することができず、この動画の拡散を、指をくわえて見ているほかなかったのである。
「覚悟はいいか?いかりをあげて、前に進め!」
「裏金まみれの政治屋(自民党)と、批判ばかりの政治屋(立憲民主党)を、みんなの力で一掃しよう!」
テレビCMや街頭演説でスローガンが繰り返し連呼され、選挙戦が進むにつれて、石丸伸二率いる「碇新党」(いかりしんとう)に対する国民の期待はうなぎ登りに上がっていった。
そして遂に「10月革命」は起きたのである。
2024年10月投開票「衆院選」党派別獲得議席
碇新党:258議席
自由民主党:101議席
れいわ新選組:30議席
立憲民主党:28議席
公明党:24議席
日本共産党:10議席
社会民主党:1議席
国民民主党:1議席
日本維新の会:1議席
教育無償化を実現する会:1議席
参政党:1議席
日本保守党:1議席
みんなでつくる党:0議席
NHKから国民を守る党:0議席
無所属:8議席
4.第4章「10月革命おこる(首班指名選挙編)」
「本院は石丸伸二君を内閣総理大臣に指名することに決まりました。」
総選挙の後に開かれた特別国会で、石丸伸二は内閣総理大臣に指名された。
首相就任時の年齢は「42歳」で、初代内閣総理大臣の伊藤博文が持つ「44歳」という最年少記録を139年ぶりに更新し、日本の歴史にその名を刻んだ。
一方、退陣することとなった茂木敏充は、終戦直後に就任した皇族総理の東久邇宮稔彦が持つ「54日」という総理在職日数の最短記録を79年ぶりに更新することとなり、こちらは不名誉な形で日本の歴史にその名を刻む屈辱を味わった。
首班指名選挙が行われる直前、特別国会の召集日の朝に石丸伸二が公開した「首班指名選挙マニフェスト」は、次のような内容であった。
石丸伸二「首班指名選挙マニフェスト」
◎すぐやる実現政策
○全国の公立小学校および公立中学校の給食費無償化
○選択的夫婦別姓の導入
○プライマリーバランスの黒字化
◎中期的政策課題
○政治改革の実現
○教育無償化の実現
○持続可能な年金改革
◎長期的政策ビジョン
○高齢者に「安心」を
○若者に「希望」を
○子どもたちに「夢」を
このマニフェストが公開されるや否や、ネット上では「#石丸ポエム」というワードが飛び交った。
そして続けて「#進次郎ポエム」というワードも飛び出し、SNSでは大喜利が繰り広げられた。
そのような世の中の空気の中で、石丸伸二総理大臣(碇新党)、馬場伸幸副総理兼国際博覧会担当大臣(日本維新の会)、玉木雄一郎財務大臣(国民民主党)、前原誠司外務大臣(教育無償化を実現する会)の4人の「政治改革カルテット」を中心とする4党連立政権が発足することとなったのである。
新しく発足した石丸政権について、脳機能学者の苫米地英人はテレビ番組で次のように語った。
「石丸政権が誕生して、世の中は大騒ぎになっていますが、これは別に石丸伸二さんにカリスマ性があるとか、そういう話じゃないんです。1930年代のドイツにはヒトラーが登場して、人々はヒトラーの演説に熱狂しました。2008年のアメリカにはオバマが登場して、オバマが“Yes, we can.”と言っただけで、人々は熱狂しました。2024年の日本には石丸伸二が登場して、石丸さんが『政治屋を一掃する』と言っただけで、人々は熱狂したというわけです。石丸さんがヒトラーだとか、石丸さんがオバマだとか、そういうことが言いたいんじゃないですよ。人々が熱狂したがっている状況が問題なわけで、その状況にピースとして当てはまる政治家の一言があれば、人々はそれで熱狂してしまうわけです。そういうことなんですね。」
5.エピローグ「10月革命その後」
石丸政権が約束した3つの「すぐやる実現政策」は、順調に実現していった。
参議院では「ねじれ」があったものの、予算案を早期に衆議院通過させることで令和7年度予算は年度内に成立し、「全国の公立小学校および公立中学校の給食費無償化」は無事に実現した。
「プライマリーバランスの黒字化」は、誰が総理大臣になるかといった話とは全く関係なく、円安による企業業績の好転と法人税収の増収、そして物価高による消費税収の増収がもたらした「棚ぼた」の結果だった。
「選択的夫婦別姓の導入」ができるかどうかが一番の難題であったが、通常国会における目玉法案として連日審議され、「大議論の末」という形ではあったが、最終的に自由民主党と日本保守党を除く全ての政党が賛成に回ったことにより、衆議院と参議院で法案が通過し、遂に「選択的夫婦別姓」は実現したのである。
自由民主党は、総選挙で大敗した後に総裁選を実施し、高市早苗を新しい総裁に選出した。
自由民主党の歴史上初の女性総裁の誕生で、あとは政権を奪還してそれが「史上初の女性総理の誕生」につながるのかどうかが焦点となった。
一方の立憲民主党は、総選挙で惨敗した後、「自民党を下野させることができたのは成果として間違いないので、非自民政権を応援する立場として与党に入ろう」とする者と「『新しい政権』といっても実質的に『維新』を中心とした政権なので、与党には入らずに野党の立場でこれを厳しく追及していくべきだ」と考える者で意見が分かれ、最終的に分党して、与党の道を行く者は国民民主党に、野党の道を行く者は社会民主党に合流し、そのどちらの党に行くことも潔しとしない者は無所属の立場で活動していくこととなった。
思いがけず所属議員の数が増え、さらに財務大臣の座も手に入れた国民民主党の玉木雄一郎は、大いに手応えを感じていた。
立憲民主党から議員を迎え入れた社会民主党は、翌年に迫った参院選を見越して、れいわ新選組と合併することを決めた。
合併して、新党「不屈のれいわ日本」を旗揚げすることとなったのである。
新党「不屈のれいわ日本」(略称:れいわ)
代表:山本太郎(れいわ新選組→不屈のれいわ日本)
共同代表:福島瑞穂(社会民主党→不屈のれいわ日本)
幹事長:辻元清美(立憲民主党→社会民主党→不屈のれいわ日本)
政調会長:大石晃子(れいわ新選組→不屈のれいわ日本)
国会対策委員長:多ケ谷亮(れいわ新選組→不屈のれいわ日本)
選挙対策委員長:小沢一郎(立憲民主党→れいわ新選組→不屈のれいわ日本)
それはまさに「日本版左派連合」の旗揚げであり、長年のファンとっては参議院統一会派「希望の会」の復活を思わせるようなドリームチームの結成であった。
この「日本版左派連合」で山本太郎と小沢一郎は再びタッグを組み、今後の日本の政治を大きく左右する「2025年参院選」で一大政治決戦を企てることとなるのである。
憲法9条変えさせないよ
プロ野球好きのただのオジサンが、冗談で「巨人ファーストの会」の話を「SAMEJIMA TIMES」にコメント投稿したことがきっかけで、ひょんなことから「筆者同盟」に加わることに。「憲法9条を次世代に」という一民間人の視点で、立憲野党とそれを支持するなかまたちに、叱咤激励と斬新な提案を届けます。