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麻生太郎85歳、最後の大仕事は「公明切り」か〜国交相ポスト奪還、連立解消、そして解散総選挙を模索

高市政権の背後に、ひとりの「ラスボス」がいる。麻生太郎85歳―政界最高齢の長老が今、密かに仕掛けているのが「公明切り」だ。
高市早苗を総理の座に押し上げたのは麻生氏であり、いまや政権の実権は高市ではなく麻生にある。その麻生氏が描く最後のシナリオは、公明党を切り離し、自民単独あるいは新連立による政権再編。まずは、公明党が長年独占してきた国土交通大臣ポストを奪還し、「連立見直し」への号砲を鳴らす構えだ。

麻生の「逆転シナリオ」

もし進次郎が総裁選に勝っていれば、維新との連立は既定路線だった。進次郎を後ろから支える菅義偉は維新・公明双方に太いパイプを持ち、「自公維」3党体制を構想していた。しかし、高市が大逆転で勝利したことで、構図は一変する。

高市には野党との接点がなく、連立相手選びはすべて麻生任せ。麻生氏は国民民主党の榛葉幹事長と長年の信頼関係を築き、連合とも太いパイプを持つ。菅が維新・公明ラインなら、麻生は国民民主・連合ライン。野党間の維新と国民の対立は、実は自民党内の「菅vs麻生」の代理戦争でもあった。

その麻生氏が政権の実権を握る以上、菅路線の維新連立は白紙に戻り、国民民主党が新たなパートナー候補として浮上するのは必然だ。しかも麻生氏は筋金入りの「公明嫌い」として知られる。自らの選挙でも推薦を受けず、長年「自公連立の終わり」を狙ってきた。いまや、その時が来たと踏んでいるのだ。

過半数をめぐる綱渡り

だが、連立解消には数の壁がある。衆議院の現勢力は自民196、公明24の計220。過半数の233に13議席足りない。維新は35、国民は27。いずれかを取り込めば過半数を確保できるが、公明を切り離した瞬間、再び過半数割れに陥る。つまり「公明を切るには、次の選挙で勝つしかない」というわけだ。

しかも、維新はつい最近まで38議席を持っていたが、連立構想に反発した3人が離党して35に減った。この3人が残っていれば、自民と維新でぎりぎり過半数を超え、公明抜きの政権が可能だった。公明党が維新の連立入りに強く反対してきたのは、このためだ。

一方の国民民主は、公明を切っても過半数に届かない。だから公明にとっては「国民との連立」の方が安全。維新が連立に加わることこそ、公明にとって最大の脅威なのだ。

麻生氏はこうした数の計算を冷徹に読み、当面は公明党を維持したまま、次の解散総選挙で一気に切るシナリオを温めている。まずは高市を正式に総理大臣に指名し、国民民主を加えて「自公国」連立体制を発足。そのうえで自民と国民の関係を深め、公明を孤立させていく。そして選挙の大義を「公明切り」に置き、世論を巻き込んで自民単独過半数を狙う――これが麻生流の“政権再構築”だ。

公明の「三つの懸念」

公明党は麻生主導の「公明切り」を極度に恐れている。これまで公明は、麻生包囲網を築くため、二階俊博や菅義偉と連携してきた。しかし、二階は裏金問題で引退、菅も総裁選敗北で失脚。いまや麻生を止める勢力は消えた。

高市は総裁選勝利直後に公明党本部を訪ね、斉藤鉄夫代表と会談。「政治とカネ」「靖国参拝」「外国人政策」の3点について懸念を突きつけられたが、斉藤氏は連立維持を明言しなかった。これは極めて異例な対応だ。表向きは政策懸念だが、真の狙いは「麻生牽制」にある。

公明党としては、自ら連立を離脱する気はない。26年に及ぶ与党生活で「与党病」が根を張り、国交省ポストを通じた建設業界との関係は選挙基盤の中核になっている。連立を失えば、党勢は急速にしぼむ。それでも、公明が最も恐れているのは「自民に切られる」ことだ。高市総理誕生で麻生独裁が現実味を帯び、公明の危機感はかつてないほど高まっている。

国交省ポストが第一ラウンド

麻生氏が最初に仕掛けるのは、国土交通大臣ポストの奪還だ。公明党がこのポストを握るのは、実は二階俊博と古賀誠という建設族の大物が、小泉純一郎政権以降に台頭した清和会に大臣ポストを取られないようにするため公明に渡したことがきっかけだった。以来13年間、公明が独占してきたが、麻生はこの構図を壊すつもりだ。

まず国交相ポストを奪い取って「宣戦布告」。次に政策協議で公明を外し、徐々に政権の周縁に追いやる。そして最後の仕上げとして、解散・総選挙に踏み切る――麻生流の段取りは明快だ。

公明党は高市よりも麻生を恐れている。連立に残りたい一心で防戦するが、追い詰められれば「切られる前に切る」決断を下す可能性もある。その場合、立憲民主党との接近や野党再編の引き金になるかもしれない。