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デジタル改革は「政治を開く」切り札だ〜11.27オンライン・トークイベントで山田太郎参院議員や福井健策弁護士らと徹底討論します!

デジタル改革は経済格差や世代間対立を広げる危険なものなのか、それとも公正で透明な国家・社会をつくる切り札となるのか。

11月27日(土)14時から、国会議員、弁護士、学者、ジャーナリストが集まり、データ戦略とデジタルアーカイブの在り方を徹底討論するトークイベント「図書館とデジタルメディア、 融合の可能性」(主催・図書館総合展運営委員会)がオンラインで開催される。

私もジャーナリストとして登壇する予定だ。ここ数年、公文書改竄・廃棄や統計不正など「隠蔽政治」が相次いで発覚してきた。デジタル改革は政治改革・行政改革を進める強力な手段であるという立場から私見を述べたいと考えている。

このトークイベント、タイトルが堅苦しいのは著作権やデジタルコンテンツの最前線に立つ専門家が学術的にも十分に通用する内容を目指して企画・運営しているから。

けれどもイベント登壇者はかなり斬新な顔ぶれである。異色の組み合わせといえるかもしれない。私もひとりのジャーナリストとして視聴したいくらいのイベントだ。

その舞台にお招きいただいたのはとても光栄です。

まずもって、著作権ビジネスの最先端を走る福井健策弁護士と並んで登壇できるのは、身の引き締まる思いである。

私が福井弁護士にはじめてお会いしたのは、福島原発事故をめぐる調査報道「吉田調書」報道の責任を問われて朝日新聞特別報道部デスクを解任され、記者職も外されて、知的財産室の勤務になった2015年のことだった。失意のどん底にあるときに、著作権やデジタルコンテンツビジネスの最前線を学ぶようにと上司に命じられ、福井先生の講演に足を運んだのである。

このときの福井弁護士の講演に、私は目から鱗が落ちる思いだった。それまで大手新聞社に20年以上務め、政治部や特別報道部のデスクも勤務し、新聞協会賞も受賞し、新聞人として第一線で働いてきたつもりだったが、それは自分のまったくの思い上がりで、知らないうちにメディアの最前線から大きく取り残されていたことを1時間あまりの講演で思い知らされたのだ。

私は政治記者として数多くの政治家の講演を聞いてきたが、福井弁護士よりもインパクトのある講演を聞いたことがない。この時の私の衝撃は、連載「新聞記者やめます」で紹介した。以下の記事なのでご参照いただきたい。

新聞記者やめます。あと51日!【著作権との出会い〜「置かれた場所で咲きなさい」は本当だった】

福井弁護士の講演内容を私の理解でまとめると、以下のようになる。

デジタル時代が到来し、誰もが自由に発信できる時代になった。YouTubeに、Facebookに、Instagramに、Netflixにコンテンツは溢れかえっている。完全に供給過多なのだ。著作権を守り、コンテンツの対価としてお金をもらうというビジネスモデルは、供給が少なく、需要が多い時代の遺物である。もう限界だ。グーテンベルクが活版印刷術を発明して以来、発展を続けてきた著作権の世界は、IT革命によって大きく変貌した。そこで生き残るのはグーグルやアップル、フェイスブック、アマゾンといった巨大プラットフォーマーだけであろう。ネットで代替できるものに、人はお金を払わない。ネットで代替できないもので稼ぐしかない。著作権に固執する時代は終わった。この大変革に対応できないと、メディアはあっという間に淘汰されていくだろう

マスコミが情報発信を独占する時代が終わり、情報は供給過剰になったこと。よほど魅力的なコンテンツでなければタダでも読んでもらえないこと。著作権に固執する時代は終わったこと。新聞の世界で井の中の蛙だった私には、すべてが斬新だった。

各専門分野の「権威」は、過去の議論の積み重ねや学会全体の空気に配慮し、斬新な意見を避け、保守的な態度になりがちである。著作権界の権威である福井弁護士にはそのような気配がまったくない。逆に著作権を既得権益化せず、時代に即して大胆に変化させていくべきだという姿勢に、私はとても感銘を受けた。

これは福井弁護士の人となりに加え、著作権ビジネスという世界が極めてスピード感に溢れる最先端分野であることも一因であろう。この世界は技術の急速な進歩でめまぐるしく変遷し、過去の実績や肩書きにあぐらをかいていては、あっという間に時代に取り残されてしまうのだ。

私は新聞社がデジタル時代に完全に取り残され、もはや構造論的に再建は難しいことを、福井弁護士の講演を聞いてその場で直感した。それから福井弁護士の講演に5回は通った。ますます新聞社の未来は暗いことを確信し、自ら「小さなメディア」を立ち上げたい衝動に駆られた。それから新聞社を辞めて独立する準備を進めてきた。

知的財産室への人事異動と、福井弁護士との出会いがなければ、このSAMEJIMA TIMESが生まれることもなかったであろう。その福井弁護士とデジタル改革について討論する機会をいただいたのは感激である。

上記の連載「新聞記者やめます」の記事を読んで、私に連絡をしてきてくれたのが、共同通信で著作権問題に取り組んできた内田朋子さんである。今回のトークイベントでは司会役を務める。

内田さんは通信社で著作権問題にかかわるなかで、マスコミビジネスは著作権に支えられているのに、マスコミ人たちが著作権に対して極めて不勉強・無関心であることに疑問を感じてきた。私も何を隠そう、不勉強・無関心だった一人だ。知的財産室勤務となり、はじめてそれに気づいた。この「マスコミ界における違和感」で意気投合したことが、私が今回のトークイベントにお招きいただいた直接のきっかけである。

内田さんは会社や業界の枠組みを超えて著作権の重要性を広める活動をしている。仲間と一緒に出版した知財入門書『すごいぞ!はたらく知財 14歳からの知的財産入門』(晶文社)は難解な著作権の問題をわかりやすく解説した名著である。この本についても連載「新聞記者やめます」で紹介させていただいた。

新聞記者やめます。あと35日!【文春砲に学ぶ「権力監視に不可欠な著作権の知識」〜入門書『はたらく知財』オススメです】

トークイベントに登壇する吉見俊哉・東京大学大学院情報学環教授は、研究者の立場から大胆なデジタル改革やメディア論を唱えてきた著名な学者である。私は今回はじめてお会いするが、吉見教授の厳しいマスコミ批判を受けて、それに同調する部分と反論する部分があるかもしれない。真正面からの討論をとても楽しみにしている。

そしてもうひとりの登壇者が、自民党の山田太郎参院議員である。

2019年参院選に組織の支援なく出馬し、もっぱらSNS を駆使した選挙で自民党で二番目に多い54万票を獲得して当選し、旧来型の永田町の人々を驚かせた。岸田内閣ではデジタル大臣政務官に任命された。デジタル改革を担当する当局者である。

私は山田議員とお会いするのも初めてとなる。旧来的な利権政治が幅を利かせる自民党において、デジタルは大物議員たちの目が届きにくい新規分野だけに、山田議員が主導権を握るチャンスは十分にありそうだ。政権内部に身を置いて旧態依然たる政治にヤキモキしていることもあるだろう。率直な討論ができると思う。楽しみだ。

イベントは総合展アカウント(こちらをクリック)にログインして登録すれば無料で視聴できる。最先端のトークになると思う。デジタル改革やメディア論にご関心の方はぜひご覧ください。

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