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派罰の呪縛にとらわれない人事を断行した後に衆院解散で国民の信を問え!岸田首相の4月裏金解散のキーマンの一人は浜田国対委員長〜麻生・茂木に代わって存在感増す

岸田文雄首相が派閥解散を打ち出した後、麻生派・茂木派・岸田派の主流3派体制は崩壊した。岸田首相と麻生太郎副総裁の関係は冷え込み、茂木敏充幹事長とは今や険悪な間柄である。茂木幹事長の更迭論が飛び交う状況だ。

そのなかで存在感を増しているのが浜田靖一国会対策委員長である。

浜田氏は岸田首相と1993年初当選の同期。かつて野党に転落した自民党で岸田首相が国対委員長を務めた時、委員長代理として支えた。岸田首相よりも国会対策には精通した「国対族」だ。

岸田政権では防衛大臣にも起用された。林芳正官房長官とは「ギインズ」というバンド仲間だ。岸田官邸とは緊密な関係とみていい。

首相が衆院解散の時期を決めるにあたり、幹事長と並んで相談するのが国対委員長だ。岸田首相と茂木幹事長の関係が冷え切っている今、岸田首相は浜田国対委員長を通して国会情勢をつかんでいる。

岸田首相が画策する「9月の自民党総裁戦前の解散総選挙」への詳細なスケジュールを描くのが、浜田氏の最大の任務といっていい。

自民党の国対委員長は国会の審議日程を立憲民主党の国対委員長と密室で話し合って決める。

いつ解散するかを決めるにあたり大切なのは、予算がいつ成立するか、解散前に成立させておかなければならない法案はあるのか、といった国会の審議状況を理解しておくことだ。

浜田氏抜きには岸田首相の解散戦略は描けない。

昨年秋の臨時国会まで自民党の国対委員長を務めていたのは、安倍派5人衆のひとり、高木氏だった。高木氏が裏金事件で更迭され、後任に起用されたのが、無派閥の浜田氏だ。

その浜田氏が産経新聞の「夜の政論」という連載取材で「先のことはわかるわけがない」と断りつつ、踏み込んだ発言をした。

この「夜の政論」は、産経の水内茂幸記者が担当するコーナーで、政治家を居酒屋に連れ出して本音を聞き出すユニークな企画。私は水内記者を朝日新聞時代から知っているが、有能な政治記者だ。最近では立憲の枝野幸男前代表や国民民主党の玉木雄一郎代表も登場した。

浜田氏の取材が行われたのは、東京・神楽坂の居酒屋。ここで大注目の発言は飛び出した。以下の内容である。

「首相に『もう1回首相をやろうなどと考えず、自分が正しいと思ったことを思い切りやった方がいいですよ』と伝えたこともある。

「岸田さんが国にとって大事だと思うことを精いっぱいやり、成果を残せば、さまざまな道も少しずつ開けていく」

「衆院解散の時期も大切だろうが、その前に派閥の呪縛にとらわれない人事を断行できるかも焦点だ」

岸田内閣の支持率は低迷し、自民党内での人気も高まらない。そのなかで国民世論や党内世論にすり寄っても逆効果だ。むしろ「自分が正しいと思ったこと」を大胆に実行した方がよい。そこで成果をあげれば、国民世論や党内世論はあとからついていくーーというわけだ。

そのうえで、浜田氏は具体的な道筋を明確に示している。「衆院解散」の前に「派閥の呪縛にとらわれない人事」を断行せよというのだ。

岸田首相は裏金事件を受けて派閥解消を訴え、麻生・茂木両氏と決別した。派閥解消の具体策として、派閥の資金源を断ち切り、派罰推薦に基づく人事をやめると宣言したのである。それをまずは実行してみせたうえで衆院解散を断行し、国民の信を問えということだ。

念頭にあるのは、首相と不仲説が広がる茂木幹事長の更迭である。それでこそ、岸田首相が本気で派閥解消を進めようとしていることをはじめて国民は理解するのだ。そのためにはやってみせるほかない。

具体的なスケジュールとしては、三月末に予算成立→安倍派幹部らの処分→茂木幹事長の更迭を柱とする党役員人事(内閣改造を含む場合も)→衆院解散・総選挙ということになる。これを早ければ4月に、遅くても今国会末の6月までに実行し、9月の総裁再選への流れをつくろうという戦略だ。

浜田氏の助言にのれば、岸田首相は麻生氏と完全決別することになる。さて、どちらをとるかが当面の政局の大きな焦点といえよう。

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