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衆院長崎4区、参院徳島・高知「秋の2補選」〜岸田首相の解散戦略に影響〜立憲・泉代表は2敗なら窮地に、2勝なら維新失速を横目に再浮上も

10月22日投開票の「秋の2補選」が始まった。衆院長崎4区と参院徳島・高知(合区)。いずれも自公vs立憲の一騎打ちだ。

岸田文雄首相は来秋の自民党総裁選で再選をめざしており、その前に衆院解散に踏み切るかどうかが焦点となっている。今月で衆院任期は折り返し、いつ解散を断行してもおかしくはない。秋の2補選は解散戦略にも影響を与える。

補選の2議席はともに自民党が保持していた。ひとつは岸田派、もうひとつは麻生派だ。2敗すれば岸田政権の主流派にとって打撃となる。菅義偉前首相や二階俊博元幹事長ら非主流派が「岸田おろし」の狼煙を再び上げる可能性もある。

立憲民主党の泉健太代表にとっても正念場だ。今春の補選は全敗。「泉代表では次の衆院選は戦えない」との声が党内に広がり、「次の衆院選で150議席に届かなければ辞任する」と表明して何とか「泉おろし」を鎮めた。今回も2敗すれば「泉おろし」の再燃は必至だ。

一方で2勝すれば、低迷する立憲が再浮上するきっかけになりうる。野党第一党の奪取を掲げて立憲と敵対することで躍進してきた維新は、大阪万博の建設費上振れや鈴木宗男氏のロシア訪問問題で支持率が低下し、失速しつつある。立憲にとっては埋没感を解消する絶好のチャンスだ。

維新は今回、二つの補選とも静観の構えだ。九州と四国という、維新が浸透していない地域の選挙であることに加え、万博や宗男問題で逆風が吹きつけており、まずは党勢立て直しが必要と判断したのだろう。維新の勢いが止まったことは、立憲にとって反転攻勢の好機といえ、野党主導権争いの視点からも注目される補選となる。

2補選の個別の情勢をみてみよう。

🔸衆院長崎4区補選(長崎県佐世保市など)

自民党の北村誠吾氏の死去に伴う補選。

自民党は昨年政界を引退した金子原二郎・元農水相の長男で元証券会社員の金子容三氏(40)を擁立した。世襲候補とはいえ、これまで政治経験はなく、知名度はさほどない。北村氏も金子氏(父)も岸田派だったため、岸田首相にとっては負けられない選挙である。

これに対し、立憲民主党は前回衆院選長崎4区で北村氏に391票差で惜敗(比例復活)した元県議の末次精一氏(60)を擁立した。末次氏は衆院議員を辞職して出馬した。

末次氏は前回大激戦だったこともあり、名前は浸透している。共産党は自主支援、自民党に接近している国民民主党も地元組織は末次氏支援に回った。

現時点では立憲の末次氏優勢とも見方が強い。自民党の巻き返しが焦点だ。

🔸参院徳島・高知補選(合区)

自民党の高野光二郎氏が秘書暴行で辞職したことに伴う補選。高野氏は麻生派に所属し、河野太郎氏の側近として知られた。

今回出馬した二人はともに高知県出身だ。高知県内では高野氏の秘書暴行が大きな問題として報道され、自民党への逆風が強い。一方、徳島県では4月の知事選で自民党が3分裂したしこりが残る。

こちらも自民に逆風が吹いている。

自民党は新人の元県議・西内健氏(56)を擁立した。須崎市選出の県議を4期務め、地元紙報道によると「須崎のサラブレッド」「ボンボン」と呼ばれているようだが、全県的な知名度はいまいちだ。 

これに対抗して無所属で出馬するのは、衆参両議員を務めた歴々を持つ広田一氏(55)。父親は自民党県連幹事長を務めた大物県議で、自身も小渕恵三元首相の私設秘書を務めた後に自民党県議として政界入りした。その後に自民党現職に挑んで国政選挙に挑み、当選後に民主党入りした。全県的に知名度もあり、保守地盤にも浸透している。

自民党の最新調査では広田氏が7・8ポイントリードしており、調査ごとに差を広げているとの報道もある。こちらも立憲優勢なのだ。

とはいえ、今春の補選でも参院大分をはじめ当初は野党優勢と報じられながら自民党が終盤に追い上げて逆転するケースが相次いだ。今回も先行きは不透明だ。

鍵を握るのは公明党かもしれない。2補選とも、公明党の推薦はギリギリまでずれ込んだ。東京での自公対立に加え、関係修復が進んだ後に麻生太郎副総裁が山口那津男代表らを防衛力強化に関連して「ガン」と呼んだことが影響したとみられる。

公明党は非主流派の菅氏や二階氏と親しく、岸田首相ー麻生副総裁ー茂木幹事長の主流派とは疎遠だ。わざと手を抜いて2補選を敗北させ、岸田政権を揺さぶる可能性も否定できない。

一方、現在協議が続いている経済対策について、公明党は現金給付や所得税減税を強く主張している。これらの政策を岸田首相に受け入れさせ、公明党の「手柄」とする代わりに2補選を全面支援するというバーターが成立する可能性もある。

経済政策と公明党の動向がからみながら、10月22日の党開票日にむけて各党の激しい駆け引きが続きそうだ。


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