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自民党は9月総裁選で「石破首相ー高市幹事長」体制を発足させ10月解散総選挙!? 野党は「擬似政権交代」に備えよ!

自民党は衆院3補選に全敗し、国民から完全にそっぽを向かれた。次の総選挙で政権交代の機運が久しぶりに高まっている。

しかし、自民党は侮れない。これまでも窮地に立っては「擬似政権交代」を演出し、政権を維持してきた。

最たるものは、2001年の小泉純一郎政権の誕生だ。その前の森喜朗政権は支持率が一桁台に突入し、自民党は深刻な危機を迎えていた。そこで森氏が退陣し、小泉氏が「自民党をぶっ壊す」と絶叫して総裁選に勝利し、支持率はV字回復。直後の参院選に圧勝して自民党が完全復権したのである。

政権交代とは本来、与党から野党へ政権の担い手が変わることだ。しかし、同じ自民党のなかで「首相の顔」を差し替え、イメージを刷新することで、あたかも政権交代が実現したように装う。これが「擬似政権交代」だ。つまり自民党内での「権力をたらい回し」である。

森氏も小泉氏も同じ清和会(近年の安倍派)に所属したいた仲間だったのだから、森氏から小泉氏への首相交代が政権交代であるはずがない。しかも森氏は小泉政権でキングメーカーとして君臨した。まさに「自民党をぶっ壊す」という小泉氏の絶叫にマスコミも世論も欺かれて、自民党の復権を許したのだった。

近年では菅義偉政権から岸田文雄政権への交代も「擬似政権交代」といえよう。衆院任期満了が迫る2021年夏、菅氏は内閣支持率の低迷にあえぎ、解散総選挙をあきらめ、総裁選不出馬を表明した。後継首相に就いたのは影の薄かった岸田氏。「新しい資本主義」と掲げて安倍・菅路線からの転換を打ち出し、直後の衆院選で圧勝して自民党は政権を維持したのである。

その岸田政権で君臨したのは、安倍政権のナンバー2だった麻生太郎副総裁だった。まさに「擬似政権交代」が実現したのだ。

今回も不人気の岸田首相を9月の総裁選で退陣させ、目新しい首相を担ぎ出して「擬似政権交代」を演出し、直後の10月に解散総選挙を断行して政権を維持するというのが、自民党内の大勢が描く生き残り策である。

衆院任期は来年10月まで。来年7月には参院選がある。わずか3ヶ月の間に衆参両選挙を別々の日程で行うのは「税金の無駄づかい」との批判を浴びる。来年まで解散を先送りすれば、7月の衆参同日選挙の可能性が高まってくる。

衆参同日選は自民党にとってリスクが高い。かりに大逆風下で実施すれば、衆参双方で惨敗し、一気に権力から転落する恐れがある。リスクを分散させるためには衆参同日選は避けた方がよく、そこから逆算すると今年10月の解散総選挙が唯一の勝負時期となる。

公明党も衆参同日選には反対だ。創価学会の組織力をフルにいかすには、衆参選挙は別日程で行われるほうがよい。一方で、不人気の岸田首相のもとでの解散総選挙も絶対に避けたい。そこで9月の総裁選で首相が交代した直後の10月解散総選挙がもっとも望ましいということになる。

それではポスト岸田は誰がふさわしいのか。解散総選挙に勝つには誰が良いのかという視点で多くの自民党議員は総裁選に臨むのは間違いない。

最有力なのは、世論調査の次の首相で1位を独走する石破茂元幹事長だ。安倍政権以降、ずっと干されて非主流派に甘んじてきたが、裏金事件で安倍派が壊滅し、チャンスが巡ってきた。久しぶりにマスコミに次々に出演して「ひとり浮かれている」と陰口もたたかれているが、背に腹は変えられない。自民党大ピンチのもとで石破氏しかないという空気が強まる可能性は十分にある。

安倍政権で非主流派に転落していたことが幸いし、野党支持層に抵抗感が少ないのも強みだ。自民党が強い時はむしろ野党支持層での人気はマイナス要因となるが、自民党が弱っているときは野党支持層を引き込むことができるのはプラス要因となる。

立憲民主党の泉健太代表は一時、党内で「泉おろし」が吹き荒れていたが、補選全勝を受けて9月の代表選を乗り切る公算が高まった。裏を返せば、立憲は「党の顔」を刷新するチャンスを失ったともいえる。自民党が岸田首相から石破首相に切り替え、立憲が泉代表のまま代わり映えしないとなれば、世論の風向きは変わるかもしれない。

もうひとりのキーマンは高市早苗経済安保担当相だ。安倍晋三元首相に担がれ前回総裁選に出馬したことで、安倍支持層の熱狂的な支持を集めることになった。安倍氏が他界した後、安倍派5人衆から疎まれて自民党内では孤立感を深めていたが、安倍派解体で高市氏に近づく右派議員も増えている。

さらに安倍支持層は岸田政権に批判的で、作家の百田尚樹氏が旗揚げした日本保守党の支持へ向かうようになった。

自民党はこれまで野党を分断して政権を維持してきたが、今度は自民党側が分断されることになったのだ。安倍政権を支えた右派支持層が日本保守党へ流れ、自民党の岩盤支持層が壊れてきたのである。

この流れを食い止めるのは、高市氏を党の要職につけるのがいちばんだ。石破政権が誕生した場合、高市氏を幹事長に起用すれば、野党にも右派にも手を伸ばすことのできる布陣となる。

自民党は政権維持のためならなんでもやる政党である。野党は「石破ー高市」新体制樹立による擬似政権交代に備えて、次の総選挙の戦略を練った方が良い。

 

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