日本維新の会が、石破政権を支える立場を明確にした。国民民主党を抜いて石破政権に接近し、高校無償化の受け入れを条件に予算案へ賛成する方向だ。少数与党の石破政権を延命させる一翼を担ったといってよい。
石破茂首相と維新の前原誠司共同代表は防衛族議員として長年の盟友関係にある。今や自民党内の政権基盤が弱い石破政権の最大の応援団である。
維新と自民の関係変化
維新は結党以来、自民党との関係を維持してきた。創設者である橋下徹氏、松井一郎氏は安倍晋三元首相や菅義偉元首相と親密な関係にあり、維新は自民の支援を受けつつ野党勢力を分断する役割も果たしていた。
しかし、安倍氏の死去や菅氏の影響力低下、橋下氏・松井氏の政界引退により、維新と自民の関係は変化した。維新は昨年の衆院選で立憲民主党に代わり野党第一党になる目標を掲げたものの惨敗。吉村洋文代表(大阪府知事)は全国政党化と野党第一党の座を断念し、今夏の参院選1人区では他の野党と予備選を実施して候補者一本化を進め、自公与党を参院でも過半数割れに追い込む戦略に転じた。
一方、国会運営では、石破首相と親密な前原氏を共同代表に据え、石破内閣への協力を強めた。石破首相は前原氏が唱える所得制限なしの高校無償化を受け入れ、前原氏は予算案賛成で応じる方向に。維新は今や石破政権を最も支える野党となった。
参院選での試練
維新が石破政権と一蓮托生の関係となった一方で、政権の先行きには不透明感が漂う。
内閣支持率は訪米後やや回復したものの、不支持が依然として高く、7月の参院選に向けて自民党内には「石破では戦えない」との声が強まっている。
自民党の森山幹事長は、石破首相を支え続けて参院選敗北のリスクを負うよりも、参院選前に首相を退陣させて新首相を担ぎ出し、引き続き幹事長職を続けて主流派の中枢に踏みとどまる方が得策だと考えている。念頭に置いているのは、林芳正官房長官の擁立だ。
麻生太郎元首相も石破降ろしの動きを活発化させている。森山氏や主流派と結託するか、それとも旧安倍派の萩生田光一氏らと連携するか、石破降ろしを最優先に政局を組み立てていくだろう。
石破政権が崩れ、新政権が誕生すれば、維新の立場は大きく変わる。石破首相と前原共同代表の親密さだけを頼みに政権に接近してきたため、「お役御免」として影響力を削がれる可能性が高い。
維新の国会戦略は、石破政権存続を前提としている。参院選前に石破政権が倒れれば、維新も瞬時にして政界での居場所を失い、7月の参院選でも逆風が吹き付ける可能性がある。