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橋下徹が維新キラーの大石あきこを提訴した狙いと山本太郎が腹を抱えて笑った理由

維新キラーとして颯爽と登場したれいわ新選組の大石あきこ衆院議員が、日本維新の会の創設者・橋下徹氏に「たびたび攻撃的な表現行為を繰り返している」として名誉毀損で提訴されたことは、最近では破格の話題性を持つ政治ニュースとなった。

大石氏の「ちょ、待て 橋下徹にうったえられたんだが」という突然のツイートでいきなり発覚することになるこの訴訟事件は、彼女の「#大石あきこ橋下徹に訴えられたってよ」というハッシュタグに乗って瞬く間に拡散し、政界の話題を独占したのである。

どこまでも地味な岸田文雄首相率いる自民党と、何がしたいのかわからず埋没している泉健太代表率いる立憲民主党の二大政党の影が薄くなるなかで、「維新vsれいわ」に関心が集中する今の政治情勢を象徴するニュースとなったのだ。

大石氏は「私が橋下徹に訴えられたと聞いて、山本太郎が腹抱えて笑ってたという情報が」とも明かしている。れいわの山本太郎代表が「腹を抱えて笑った」のはおそらく真実であろう。彼は強がって笑ったのではない。大石氏が橋下氏に訴えられたことを心から歓迎しただろうし、宿敵・橋下氏が提訴に踏み切った理由を想像して可笑しくて仕方がなかったのであろう。

れいわが維新を「自民党より酷い」と酷評し、今夏の参院選に向けて「維新vsれいわ」の対立構図を盛り上げようとしていることはサメジマタイムスの記事YouTubeで繰り返し指摘してきた。その主戦場は維新の本拠地であり、大石氏の地元である大阪である。

前回参院選で大阪選挙区(改選数4)は「1位維新、2位維新、3位公明、4位自民」で、立憲民主党と共産党は共倒れした。れいわは今夏の参院選でその大阪にタレントの八幡愛氏を擁立し、山本代表と大石氏が「打倒・維新」を掲げて大阪に乗り込み、自公維が独占している4議席の一角を切り崩す「劇場型選挙」を展開し、その波動を全国に広げる狙いなのである。格上にケンカを仕掛けるのは台頭を目指す新興勢力の常套手段だ。(立憲民主党は衆院選で落選した辻元清美氏を参院選で地元・大阪選挙区ではなく比例区に擁立することを決定。大阪選挙区の対応は未定)。

大石氏が維新や橋下氏を「攻撃的な表現行為」で挑発し「維新キラー」として名を馳せたのは、山本代表の「維新vsれいわ」の対決構図を盛り上げる選挙戦略を忠実に実行したものである。大石氏の持ち前の「軽やかさ」と「ど迫力」が「打倒・維新」の機運をいっそう盛り上げ、れいわの存在感は増す一方だ。山本代表の狙いは的中しているといっていい。

しかし、維新は「れいわは相手にせず」という姿勢をとってきた。維新は立憲民主党から野党第一党の座を奪うことを最優先目標としており、立憲民主党批判に力点を置いてきたのだ。

橋下氏は当初、立憲民主党の菅直人氏が、橋下氏や維新は「ヒットラーを思い起こす」とツイートしたことにかみつき、維新は立憲民主党に抗議した。「維新vs立憲民主党」の対決構図を仕掛けたのである。

ところが、維新が菅直人批判(立憲民主党批判)を強めるなかで、橋下氏は徐々に軌道修正していった。そしていきなりれいわの大石氏の提訴に踏み切ったのだ。「維新vs立憲民主党」から「維新vsれいわ」へ、舵を切ったのである。

橋下氏が仕掛けた「維新vsれいわ」を山本氏が大歓迎したのは当然だろう。「維新vs立憲民主党」が盛り上がって「維新vsれいわ」が埋没することをもっとも恐れていたに違いない。ところが、維新の創設者である橋下氏のほうから「維新vsれいわ」に参戦してくれたのだ。「腹を抱えて笑う」ほど嬉しかったに違いない。

では、山本代表をわざわざ喜ばせるまでして橋下氏が大石氏を提訴した狙いとは何なのか。橋下氏の作戦も極めて合理的なのである。

橋下氏の思惑を読み解くにあたり、最初に理解しておかなくてはならないのは、維新の現時点での最優先目的が「立憲民主党を今夏の参院選で惨敗させ、解党に追い込み、野党第一党の座を奪い取る」ことであるという事実だ。橋下氏や維新はこのため、立憲民主党への批判を強めてきたのだった。

私はこの維新の戦略はあまり上手ではないと思っていた。なぜならば、立憲民主党は連合にすり寄るばかりで、共産党との共闘を自ら否定し、野党共闘支持者からもそっぽを向かれている。支持率は低迷して維新に追い抜かれ、政界での存在感は薄れる一方だった。それなのに、衆院選で躍進した維新がケンカを仕掛ければ、話題性のない立憲民主党に話題を与えてしまうことになる。その意味で、維新が菅直人氏に仕掛けたケンカは「敵に塩を送る」ものであった。

橋下氏がケンカの相手を立憲民主党の菅直人氏かられいわの大石あきこ氏へ移したのは、極めて正しい戦略である。立憲民主党は埋没させておけばいい。むしろれいわを引き立てることで、立憲民主党の存在感をますます下げることができる。れいわが躍進して最も割りを食うのは立憲民主党だ。れいわが野党支持層の票をかき集めるほど、立憲民主党は参院選で議席を減らすだろうーー橋下氏はそう考えたに違いない。つまり「維新vsれいわ」の対決構図が盛り上がることは、維新にとってもれいわにとっても大歓迎なのである。

菅直人氏が維新にケンカを仕掛けたのは、立憲民主党が埋没してれいわに話題を独占されることを避ける狙いがあったのだろう。橋下氏は当初はその誘いに乗ったが、すぐに軌道修正したのは、さすがに機を見るに敏である。落ち目の立憲民主党にわざわざ世間の関心を引き寄せてあげる必要はない。そのうえ、政治家としてピークを過ぎた菅直人氏とのケンカを長引かせるよりも、人気急上昇中の大石氏とのバトルを繰り広げるほうが、吉村洋文・大阪府知事の台頭で世代交代の波にさらされている橋下氏へ世間の関心を引き寄せる効果は抜群だ。

橋下氏も大石氏も山本氏もケンカ上手である。

菅直人氏もケンカ上手といえばそうかもしれない。だが、肝心の泉代表率いる立憲民主党の執行部は菅氏の意図を理解できなかったようだ。「維新vs菅直人」とケンカを傍観し、このケンカに参戦しなかったのである。

維新の躍進を目の当たりにして怖気付いたのか、自公政権に対抗するために維新と連携する「幻想」を抱いているのか、泉代表が「維新vs立憲民主党」のケンカに尻込みする理由はまったく理解できない。だが、このままでは立憲民主党は参院選にむけて埋没する一方である。橋下氏や山本氏と比べて泉氏は役者が一枚も二枚も劣っているという印象を否めない。

参院選にむけて日本政界は想像以上の地殻変動が起きている。自民党と立憲民主党の二大政党政治はもはや風前の灯だ。第三極の維新やれいわがますます台頭し、参院選後で野党再編が起きる可能性が高まっている。参院選前に立憲民主党が空中分解し、野党再編になだれ込む可能性も捨てきれない。「#大石あきこ橋下徹に訴えられたってよ」のツイートが野党再編への号砲となる予感が私はしている。

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