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岸田夫妻の国賓訪米は「卒業旅行」になるか? 首相不在中に決まった自民党の「補選3敗」〜小池知事の学歴詐称疑惑が再燃、東京15区補選の乙武氏推薦取りやめで自民は不戦敗へ

岸田文雄首相が国賓待遇の訪米で浮かれている間に、国内政局は大きく動いた。
小池百合子・東京都知事の学歴詐称疑惑が文藝春秋の報道で再燃し、小池知事が衆院東京15区補選に擁立した作家の乙武洋匡氏に逆風が吹きつけ、自民党は当初予定していた乙武氏の推薦を見送ったのだ。
これにより、自民党は4月16日告示・28日投開票の衆院3補選のうち、2補選で不戦敗が確定。残る島根1区も劣勢が伝えられており、全敗の可能性が強まってきた。
総理不在の間に「岸田おろし」へ外堀が埋められた格好だ。岸田首相の国賓訪米は「卒業旅行」となるのではないかとの憶測も永田町では広がっている。

4月の衆院3補選は、岸田政権の命運を左右すると言われてきた。ここで勝ち越せば6月解散・7月総選挙→9月総裁再選の流れが見えてくる。

一方、全敗したり負け越したりすれば「岸田首相では選挙は戦えない」との声が自民党内に広がり、6月解散は困難になる。その場合、岸田首相は9月総裁選に不出馬・退陣の可能性が高まる。
自民党は3補選のうち、長崎3区は早々に不戦敗を決めた。安倍派の裏金議員である谷川弥一氏の辞職に伴う補選で、そもそも逆風が強い上、次の衆院選で長崎は選挙区が1減となるため、地元では候補者擁立の機運が乏しかった。
島根1区も劣勢だ。旧統一教会問題やセクハラ疑惑で批判を浴びていた細田博之前衆院議長の死去に伴う補選で、さらに細田氏が安倍派会長だったこともあり、こちらも逆風が強い。おまけに自民党が擁立した財務省OBの新人の評判が悪く、立憲民主党元職に出遅れているという分析がもっぱらだ。

こうしたなか、補選全敗を逃れるための頼みに綱が東京15区だった。自民党公認で当選した衆院議員が2代続けて逮捕・起訴されたことで、自民党は早々に候補者擁立を見送り、小池知事が擁立する都民ファーストの候補者に相乗りする方針を決めていた。小池知事自身が国政復帰を目指して電撃出馬するとの見方もあった。

だが、小池知事は乙武氏を無所属で擁立。小池知事の出馬を期待していた公明党は乙武氏の過去の女性問題を理由に推薦に慎重な姿勢を見せ、足並みが乱れた。

そのさなかに岸田首相は夫人を連れ立ってアメリカへ出発。その直後に小池知事の元側近が、学歴詐称疑惑を打ち消すためにカイロ大学やエジプト政府に声明文の発表を働きかけていたことを告発する手記が文藝春秋から公表されたのである。

岸田首相は訪米で頭がいっぱいだった。英議会や晩餐会の英語スピーチの練習に励み、大統領専用車にバイデン氏と同乗して笑顔を振りまいた。国内政局どころではなかった。すべての対応を麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長に委ねるしかなかった。
こうした麻生氏や茂木氏ら留守番役の自民党執行部は、乙武氏の推薦方針を撤回して東京15区補選の不戦敗を決定。4月の衆院3補選の負け越しが確定したのだった。岸田おろしの外堀が埋まったといっていい。

岸田首相は帰国後、自らを取り巻く政治状況が厳しさを増したことを痛感するだろう。

総理不在の間に政局は動く。外遊を満喫した代償は思いの外、大きいかもしれない。

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