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岸田政権の命運を握る政治資金規正法改正の行方は? 自民は猛反対、公明には大幅譲歩、立憲はハードルを上げる…与野党合意も強行採決もいばらの道

GWが終わり、後半国会が始まる。最大の焦点は、裏金事件を受けた政治資金規正法の改正だ。
岸田文雄首相は今国会中の改正を公約している。6月23日の会期末までに成立できなければ、国会を大幅延長してでも成立させるつもりだろう。それでも成立できなければ、9月の自民党総裁選で退陣だ。

法改正は①自公与党内協議②与野党協議③国会採決という順番で進んでいく。
①自公協議
自民党内は改正に後ろ向きだ。そもそも資金力こそ自民党の権力の源泉であり、資金集めに制約をかけたくはない。

さらに岸田首相による6月解散を阻止して9月退陣に追い込むには、法改正という手柄を渡したくない。この両面から自民党内は抜本改正にあの手この手で抵抗するだろう。

かねて世論の批判が強い旧文通費(歳費とは別に月100万円。領収書不要)の使い方や公開のあり方は見直す方向で容認するものの、本丸の政治資金規正法の抜本改正には徹底抗戦するとみられる。
公明党は自民党を説き伏せて一歩でも改正を進め、「与党にとどまっている成果」として総選挙でアピールしたい考えだ。安倍派幹部が「秘書が、秘書が」と言い逃れして世論の批判を浴びたことを踏まえ、秘書が刑事責任を問われれば議員本人も刑事責任を負う連座制の導入を強く主張している。

政治資金パーティー券購入者の公開基準を20万円から5万円に引き下げることも主張。自民党内には10万円を落とし所にする案も浮上している。

自民党の裏金事件が発端だけに、自民一党で強行採決するのは事実上不可能だ。与党公明党の理解は不可欠であり、自公協議は公明党ペースで進みそうだ。岸田首相は最後は公明案をほぼ丸呑みするしかないだろう。

②与野党協議
立憲民主党は裏金事件後は勢いづいている。一時は日本維新の会に追い抜かれていた政党支持率も回復傾向にあり、4月の衆院3補選に全勝。野党第一党としての基盤を固めたうえ、次の総選挙で政権交代を求める機運も出始めた。

政治資金規正法の改正は絶対に譲歩できないテーマだ。そこでかなりハードルの高い3つの要求を突きつけている。
・政策活動費の廃止

二階俊博元幹事長が5年で50億円を受け取っていたことで有名になった政策活動費は最大の争点だ。政治家個人が献金を受け取ることは違法だが、例外として政党から政治家個人には資金を渡すことが認められている。しかもこのお金は領収書なしで使用でき、公開する必要がない。「合法的な裏金」といってよい。政治資金規正法がザル法といわれる一つ目の要因だ。
・政治資金パーティーの全面禁止

政治資金をめぐる様々な規制の抜け道として利用されているのが政治資金パーティーだ。飲食を提供する見返りとしてパーティー券を買ってもらう。パーティー券は概ね1枚2万円、一人当たりの単価は数千円。差し引き一人当たり1万数千円が「利益」として政治家側に入る仕組みだ。姿を変えた政治資金といってよい。このようなイカサマな仕組みを認めているのが、政治資金規正法のザル法たる所以である。
・企業団体献金の全面禁止

政治家個人が企業団体献金を受け取ることは禁じら得ているが、政党は例外的に認められている。この抜け道を利用し、政治家達は自らが支部長を務める政党支部を通じて企業団体献金を受け取っている。これも政治資金規正法の大甘なところだ。

立憲民主党が掲げる以上の3点が改正されれば、政治資金規正法はかなりマシな法律となるだろう。もともと立憲執行部はここまでの抜本改正を求めることに慎重だったが、立憲若手たちが強く主張して容認した経緯がある。

しかし立憲執行部には別の思惑がある。立憲が抜本改正を掲げても、自民党は乗ってこない。与野党協議で譲歩して最終的には骨抜き案に落ち着くか、与野党協議が決裂して自民党が骨抜き法案を強行採決するか、いずれにしろ抜本改正案は実現せず、自分たちの首を絞めることはないと見通しているのだ。

これは極めて不誠実な対応である。法改正が実現しなくても、立憲は率先して以上3点を実行したらどうか。それではじめて世論の支持を獲得できるのではないか。

このような情勢を受けて、岸田首相が進むべき道は3つある。
1️⃣野党に大幅譲歩して成立
そもそも大幅譲歩を自民党執行部が認める保証はない。仮に大幅譲歩が実現しても野党との対立軸はなくなり、6月解散を断行する大義がなくなる。しかも自民党内には不満が募り、9月総裁選にむけて岸田離れが加速するだろう。

2️⃣野党と交渉決裂、自公で強行採決
立憲の要求を突っぱねて、骨抜き法案を与党で強行採決すれば、世論は猛反発する。そのようななかで6月解散は不可能だ。9月総裁選にむけて自民党内の人気もあがらない。法案成立とともに岸田政権はレームダック化しそうだ。

3️⃣与野党協議まとまらず

今国会で成立断念となれば、岸田首相の政治責任は免れず、退陣圧力が強まる。なんとしても成立させるため、6月23日までの国会会期を大幅延長し、成立を目指すことになるだろう。7月、8月の真夏国会に突入することになる。それでも成立できるのか、終盤国会は緊張感を増していく。


いずれにしても、岸田首相にとってはいばらの道だ。政治資金規正法の改正を今国会で成立させると約束したことによって、改正協議を人質にとられたといってよい。

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