自民党と公明党が、ついに袂を分かった。1999年以来26年続いた自公連立が崩壊した。
マスコミ報道は「政治とカネ」への反発が原因とするが、それは表向きの理屈にすぎない。
実際には、麻生太郎が君臨する高市政権の誕生に先手を打った“防衛的離脱”である。
麻生主導の高市政権が発足すれば、公明党は切り捨てられ、解散総選挙で一掃される――。
その危機感が、公明党をして「切られる前に切る」決断へと駆り立てた。
一方の麻生も引き止めるそぶりを見せなかった。
国民民主党を味方に引き込み、公明抜きでも政権は維持できると踏んだからだ。
つまり、麻生が公明を追い出したのである。
決裂の真相
公明党が離脱理由に掲げたのは企業・団体献金問題。
「自民が規制強化に応じなかった」と説明するが、これは建前だ。
なぜなら、総裁選で本命視されていた小泉進次郎も、企業献金には慎重だった。
それでも、公明党が高市だけを拒絶したのは、高市の背後に麻生がいるからである。
麻生は高市政権の発足後、国民民主との連携を深め、公明の発言力を削ぐ構想を練っていた。
国交相ポストを取り上げ、事実上の「政権追放」を準備していた。
公明党はその動きを察知し、追い詰められる前に離脱を決断した。
「高市政権阻止」を掲げ、野党を巻き込んだ政局を仕掛けたのだ。
麻生太郎の腹の内
公明と近い菅義偉、森山裕らも離脱を止めなかった。
このままでは麻生独裁体制となり、自分たちが干される。
むしろ離脱を後押しすることで、麻生・高市ラインの崩壊を狙った節がある。
高市は土壇場で菅に助けを求めたが、応じてもらえなかった。
麻生も同様に「去る者は追わず」。むしろ連立離脱を織り込み済みだった。
裏金問題の象徴・萩生田光一を幹事長代行に起用したのも、「公明切り」を加速させるための布石に見える。
麻生が強気なのは、国民民主の榛葉幹事長と太いパイプを持つからだ。
立憲が玉木代表を担ぐ「野党連立政権」を呼びかけても、玉木・榛葉コンビが慎重なのは麻生との関係ゆえである。
麻生としては、高市政権を成立させた後、タイミングを見計らって解散総選挙で自民単独過半数を奪還する構想だ。
まさに、政界の大博打である。
公明党の迷い
とはいえ、公明党の腹はまだ固まっていない。
斉藤鉄夫代表は「政策ごとに是々非々で臨む」と述べ、完全な野党転換を否定した。
選挙協力は白紙としたが、「人物本位で応援できる地域もある」とも語っている。
それは、公明党が完全な決裂を避けたい本音の表れだ。
麻生が失脚し、菅や森山が復権すれば、再び自公連立を続けたい。
創価学会の組織力は低下しており、建設業界との関係を失えば選挙が戦えない。13年間独占してきた国交相ポストは本音では手放したくなかった。
もし野党と組まずに中途半端に終われば、麻生は近く解散総選挙に打って出る。
そのとき、公明党は壊滅的な敗北を喫する恐れがある。
公明党が本気で抵抗するなら、野党連立政権に踏み込むしかない。
しかし、その決断はまだついていない。
前代未聞の首班指名
焦点は首班指名だ。自民と立憲の多数派工作が始まる。
衆院465議席の過半数233をどちらが確保するか。
自民は国民民主を味方に引き込みたいが、連合が反発している。
確実な票は自民196。単独では届かない。
立憲は野田構想を断念し、玉木擁立という奇策に賭けている。
立憲148に維新35、公明32が乗れば過半数を超えるが、維新も公明も逡巡している。
国民の玉木・榛葉は、勝てる見込みがない限り、立憲に乗れない。麻生との関係が切れるからだ。
立憲が維新・公明を本気でまとめられるかが最大のカギ。
ここが固まれば、玉木が動く可能性はある。
だが、国民が乗らないのに他の野党が「玉木」と書けるのか。
あるいは第三の統一候補を立てるのか。
政界はいま、前代未聞の混迷に突入している。
高市政権の誕生か、それとも玉木連立か。
麻生太郎の大博打の成否が見えるのは、まだ先だ。