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共産党の志位委員長の総選挙総括を読み解く〜来夏参院選の野党共闘の行方は?

今年の衆院選で野党連合政権をめざして立憲民主党との選挙協力を進め、議席を減らした共産党。11月27日の「第4回中央委員会総会」でこの選挙結果を総括し、来年夏の参院選の戦い方を示した志位和夫委員長の幹部会報告がしんぶん赤旗に掲載された。きょうはそれをもとに共産党の今後の動向を展望してみよう。

志位氏は今回の衆院選で二つの目標を掲げていた。

第一の目標は「市民と野党の共闘の力で、政権交代を実現し、新しい政権ーー野党連合政権をつくること」だった。

志位氏は「自公政権の継続を許したことは残念」としつつ、「市民と野党の共闘は、今後の課題を残しつつも、確かな成果をあげました」と総括。「野党は初めて本格的な共闘の態勢ーー共通政策、政権協力、選挙協力で合意をつくって総選挙にのぞみました」「最初のチャレンジとして歴史的意義をもつものだったということを、まずみんなで確認したい」と強調している。

第二の目標は「日本共産党の躍進を実現すること」だった。しかし、共産党は比例代表で11議席から9議席へ、得票数で440万票から416万票に後退し、志位氏は「常任幹部会として責任を痛感しています」と述べている。

志位氏が「共産党の議席減」を招いた最大の理由に掲げるのは、歴史的な野党共闘に危機感を強めた自公政権側の激しい反撃である。

志位氏は「自公と補完勢力から見れば、心底恐ろしい展開となりました。野党共闘によって、多くの候補者が小選挙区で敗北する危険が生まれただけではありません。彼らにとって最悪の場合には、日本の歴史でも初めて、日本共産党が協力する政権が生まれることになるからです」「『限定的な閣外からの協力』という形態であっても、日本共産党が協力して実行する政権が生まれたら、これまでの政治を根本から変える巨大な一歩となり、支配体制を土台から揺るがす」と指摘。「危機感にかられた支配勢力ーー自公と補完勢力は、一部メディアも総動員し、必死の野党共闘攻撃、日本共産党攻撃を行いました」「支配勢力が今回の総選挙で基本戦略においたのは、野党共闘の推進力として奮闘している日本共産党に攻撃を集中することで、共闘を分断し、破壊することでした」と分析している。

野党共闘に危機感を募らせた自公与党や日本維新の会が一部メディアとともに共産党攻撃を集中展開した結果、議席減・得票減に追い込まれたという総括である。

志位氏は野党共闘について①一本化した59選挙区で勝利し自民党重鎮や有力政治家を落選させた②このうち56選挙区で共闘勢力の比例得票合計を小選挙区候補の得票が上回る「共闘効果」が発揮されたーーとして「野党がバラバラにたたかっていたら自民党の圧勝を許した」と分析。野党共闘の成果に「日本共産党が貢献した」と胸を張っている。

その上で「共闘によって生まれうる新しい政治の魅力を、さまざまな攻撃を打ち破って広い国民に伝えきる点で、十分とはいえませんでした」「野党が力をあわせて、共同の反撃の論陣を張るまでには至らなかった」と反省を述べ、「共闘態勢の構築が選挙間際まで遅れたことは、大きな反省点」と総括。野党共闘に参加する政党の「対等平等」「相互尊重」に至らなかった地域も多くあったと述べた。

志位氏の野党共闘総括をまとめるならば、歴史的に重要な第一歩を踏み出した意義は大きく、自公与党に大きなプレッシャーをかけたのだが、そのぶん強烈な逆襲を受け、野党共闘の魅力を広く国民に伝えきることができなかったため、自公政権の継続を許し、共産党も議席を減らす結果に終わったーーということになる。

志位氏はこのような野党共闘の総括を踏まえたうえで、今後の方針について「いまの選挙制度のもとで政治を変える道は共闘しかありません」「総選挙に向けて野党各党がかわした共通政策および日本共産党と立憲民主党の党首会談での政権協力の合意は、公党間の合意であり、それを掲げて総選挙をたたかった以上、国民への公約であります」と強調。野党共闘をさらに進める姿勢を鮮明にしている。

志位氏とすれば、多くの共産党候補を降ろして野党一本化を進め、議席減という結果まで招いて「野党連合政権への歴史的一歩」を踏み出した以上、もはや後戻りはできないということであろう。立憲民主党は泉健太新代表のもとで共産党との共闘を見直す姿勢を強めており、共産党との決別を明確に迫る連合に配慮を重ねる状況だが、そのなかであえて野党共闘路線の継続を掲げたことは、もはや志位体制のもとでは共産党単独路線はとりえず、志位氏は野党共闘路線に進退をかけたといえるのではないか。

一方で、志位氏は野党共闘について「『対等平等』『相互尊重』の姿勢を貫いてこそ、共闘は深いところから力を発揮し、発展することができる」とも強調している。選挙区調整で立憲民主党に大幅に譲歩したことに対する党内の不満を踏まえ、野党共闘を掲げながらも、来夏の参院選では共産党の立場をより強く主張していく姿勢を示したものといえるだろう。衆院選に続いて参院選でも議席を減らしたら、志位体制の責任論が噴出しかねないーーそんな危機感があるのではないか。

では、志位共産党は来夏の参院選にどう臨むのか。

志位氏は参院選の目標を二つ掲げた。

第一は「市民と野党の共闘をさらに発展させ、参議院で改憲勢力の3分の2獲得を許さず、さらに自民・公明とその補完勢力を少数に追い込むことをめざし、政権交代への足掛かりをつくる」ことである。このため、全国32の1人区は最大限、野党統一候補を擁立することを表明。1人区では候補擁立を見送り野党一本化に協力する姿勢をにじませた。

第二は「日本共産党の躍進を必ず勝ち取る」ことである。比例代表で「必ずやりきる目標」として「650万票」獲得による「5議席の絶対確保」を掲げた。衆院選に続いて参院選でも議席を減らすことは絶対に避けなければならないという危機感がにじむ。

今回の総選挙で共産党が得た比例代表の得票は416万票。これを参院選比例代表で試算すると3議席にしかならない。「5議席の絶対確保」を実現するには大幅な票の上積みが不可欠だ。はたして可能なのか。独自色を相当強めて無党派層に幅広く支持を広げなければ到底無理だ。

志位氏はさらにすべての複数区に候補者を擁立する方針を表明。具体的には東京、埼玉、京都、大阪、神奈川の名をあげた。これらの複数区では野党同士の競争は避けられないだろう。

志位氏の幹部会報告から読み取れる参院選戦略は「共産党の5議席確保を最優先にする」ことである。衆院選に続いて参院選でも党勢が減退すれば、野党共闘へ踏み出した志位体制の正当性が大きく揺らぎかねないからだ。

このため、①政権選択選挙であった今回の衆院選ほど立憲民主党に一方的な譲歩はしない②野党共闘は1人区に絞り、複数区や比例代表では共産党の独自色を強めるーーことは間違いない。1人区はもともと自公与党が有利なだけに、複数区や比例代表で野党同士がしのぎを削ることになれば、野党共闘効果は衆院選よりも低下する可能性が高い。

志位氏とすれば、野党共闘の大義名分は維持しつつ、本音では共産党の躍進という実利の獲得を優先するということだろう。

れいわ新選組の山本太郎代表も複数区にはすべて候補者を擁立する構えを見せている。共産党もれいわも比例票を掘り起こすためには大都市部の複数区への候補者擁立は欠かせず、独自色を出さざるを得ない。

立憲民主党は連合への配慮を強めるなか、国民民主党は維新への接近をはかるなど第三極路線にひた走る。参院選で野党共闘がかみあうのは非常に難しい情勢となっている。

そのなかで共産党も参院選にむけてますます独自色を出すしかなくなってくる。野党各党が野党共闘から一歩引くなかで、志位氏が野党共闘の「歴史的意義」を強調した衆院選総括が参院選の独自戦略を縛る重荷となる可能性もあるだろう。

さいごに、志位氏が総選挙総括で多用した「弁証法」について一言。以下は志位氏の言葉の引用である。

 弁証法とは、我が党が理論的基礎としている科学的社会主義の世界観の根本であります。すなわち、物事を「一断面」ではなくて「変化と発展」の中でとらえる。「孤立」したものではなくて、「全体の関連」の中でとらえる。そうしてこそ物事の「現れるままの姿」で認識し、理解することができる。これが私たちが世界をとらえるさいに根本においている方法であり、世界観であります。

志位氏はこの弁証法の考え方を、議席を減らした衆院選総括の中核に据えているのである。

 総選挙の結果は、「一断面」で見れば悔しい後退です。しかし、「変化と発展」の中でとらえれば、私たちが、支配勢力に攻め込み、追い詰めた、新しいステージの中での新しい困難だということが見えてきます。そして、ここを突破すれば大きな新しい展望が開けることも見えてきます。

私は思想としての「弁証法」を否定するつもりはない。政党が長期戦略として「弁証法」を掲げてもよいと思う。しかし、政党としての長期戦略と個別選挙における執行部の責任問題は切り離して考えるべきである。かりに次の参院選に惨敗しても、「弁証法」をあてはめれば、それは「新しいステージでの新しい困難」となり、執行部の敗北責任が許容され、執行部の続投が正当化されてしまう。

共産党が単独路線を貫く組織政党でとどまるのなら、それでもよいだろう。しかし、野党共闘を掲げ、野党連合政権をめざすのならば、「弁証法」的な説明は幅広い国民の理解を得ることは難しく、支持拡大を阻む大きな要因となるのではないか。

天皇制や日米安保に対する共産党の姿勢よりも、この「弁証法」的な党内論議の整理の方が、多くの国民の拒絶感を招くと私は思う。

志位氏の衆院選総括の多くについて私はほとんど違和感を覚えなかったが、弁証法を強調して衆院選を総括した部分には後味の悪さが残ったことは記しておきたい。