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京都市長選は「与野党相乗りの上級国民」vs「庶民に寄り添う市民派弁護士」の大接戦だった!野党第一党の立憲民主党が裏金問題渦中の自民党と共闘した重罪

2月4日投開票の京都市長選は、裏金事件で批判を浴びる自民党に、公明党だけではなく、野党第一党の立憲民主党が相乗りしたことで、全国的な注目を集めた。

日本維新の会は対立候補を擁立していたが、政治資金をめぐる問題が発覚して自主投票となり、当初は自民、公明、立憲、国民の相乗り候補の圧勝と予想された。ところが、共産・れいわ・社民が応援する市民派弁護士がぐいぐい追い上げて大激戦となったのである。

最後は与野党相乗り候補が1万票余の差で逃げ切ったものの、自民党に加え、自民党と組む立憲民主党にも厳しい視線が向けられる選挙となった。

最大敗者は立憲民主党といえるのではないか。

京都は立憲にとって特別な地である。代表の泉健太氏の地元であり、前代表の枝野幸男氏の最側近である福山哲郎氏の地元でもある。さらに前身の民主党で代表を務めた前原誠司氏の地元でもあるのだ。

この京都で立憲民主党(民主党)は「反共産党」を旗印に自公両党と組んできた。国政選挙では自公と戦いつつも、地方選挙では「反共」を理由に与野党相乗りで知事や市長を支えてきたのである。

維新が大阪府市の知事選や市長選、議会選で自民と激突して勝利し、勢力を拡大してきたのと対照的だ。

今回の京都市長選は与野党相乗りの現職の引退に伴うものだった。自民、公明、立憲は、民主党政権で官房副長官を務めた松井孝治氏を擁立。松井氏は京都出身で、経産省から民主党参院議員(京都選挙区)となり、民主党が下野した後は慶大教授に転身していた。政界引退後は立憲民主党や枝野氏の批判を公言していたが、自公立が相乗りで用意した神輿に乗ったのである。これに対し、立憲支持層からも批判の声が広がっていた。

選挙戦が始まると、「第一の人生は官僚、第二の人生は政治家、第三の人生は大学教授、第四の人生は京都市長…」という松井氏の上から目線の姿勢に批判が拡大。自分は政治家には向いていない、政治家が有権者と握手をする様子に反吐が出る…云々と語った動画も流出し、釈明に追われた。

さらに自民党安倍派に所属していた西田昌司府連会長が裏金を受け取っていたことも選挙中に発覚。松井氏への逆風は強まった。

最終盤は立憲のリベラル派を代表する辻元清美代表代行も松井氏の動画メッセージを発信し、立憲支持層に波紋が広がった。

大激戦の末、松井氏が勝利した結果に、立憲支持層からも「立憲が共産やれいわと組んでいたら自公に勝てた」とのため息が漏れた。

自民、公明、立憲、国民の与野党が相乗りして、東大→エリート官僚→参院議員→大学教授という「上級国民」の典型のようなキャリアを持つ松井氏を担ぎ、共産とれいわが応援する市民派弁護士に競り勝った京都市長選は「上級国民vs庶民」の対決構図を鮮明にするものだった。

立憲は「上級国民」の側に立っていいのか。次の総選挙の向けて根本的な立ち位置が問われている。

同じ日に、中曽根康弘、福田赳夫・康夫、小渕恵三ら首相を輩出した保守王国・群馬県の県庁所在地で行われた前橋市長選の結果は、衝撃的だった。自公推薦で4期目を目指す現職(64)が、立憲・共産・国民・社民が支援する元県議の新人・小川晶氏(41)に大差で敗れたのだ。

裏金事件が発覚した自民党への批判が保守王国でも吹き荒れたのである。

前橋市を選挙区とする衆院群馬1区は中曽根元首相の孫・中曽根康隆氏の地盤だ。中曽根氏は裏金事件で立件され解散した二階派に所属していた。二階派はそもそも中曽根派の流れを汲んでいる。まさに裏金事件が直撃したといっていい。

衆院群馬4区は、裏金事件を中心だった安倍派(清和会)を創設した福田赳夫元首相の孫・福田達夫氏の地盤だ。衆院群馬5区を地盤とする小渕恵三元首相の娘・小渕優子氏はかつて秘書が逮捕された公選法違反事件で証拠物のパソコンをドリルで破壊したと報じられたことから「ドリル優子」という不名誉なあだ名をつけられ、今回の裏金事件でもその過去を蒸し返された。

野党が結束して「いい候補者」を擁立することができれば、保守王国でも勝てることを示した前橋市長選の結果は、泉代表の地元・京都市長選で立憲が自公に相乗りしたことへの疑問を膨らませることになったのである。

今年予想される解散総選挙で、立憲は自公と本気で戦う気があるのかーー。京都市長選の最大の敗者は、立憲ではないだろうか。


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