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森喜朗元首相が萩生田光一政調会長を安倍後継の清和会会長に指名した余波〜どうする世耕弘成氏、西村康稔氏

安倍晋三元首相が急逝した後の最大派閥・清和会は後継争いが激化しているが、SAMEJIMA TIMESで指摘してきたとおり、萩生田光一政調会長が一歩リードしているという見方が強まってきた。

とくに清和会のドンである森喜朗元首相が2月20日の地元・石川県の「北國新聞」にインタビューで「萩生田推し」の姿勢を鮮明にしたことは「事実上の後継指名」と受け止められている。

森氏はこれまで清和会のニューリーダーとして、松野博一官房長官、世耕弘成参院幹事長、高木毅国対委員長、西村康稔経産相、萩生田政調会長の5人の名前を挙げてきた。

今回のインタビューでは以下のように、ひとりずつ明快に論評している。

松野氏→今は自分のことで精いっぱいでしょう。まずは官房長官としてしっかり存在感を示してほしい。

高木氏→5人組の一人だが、総理総裁を狙っているわけではない。

世耕氏→頭がいいし、弁も立つ。近畿大の理事長で、資金力まである。参院のドンと言われた「第二の青木幹雄(元官房長官)」になれ。

西村氏→一番自信を持っているのは西村さんでしょう。秘書がよく辞めるが、元経産省の能吏だけに指示が細かいんでしょう。

萩生田氏→力を付けてきた。大したもんです。総合力は最も高い。

額面通りに受け止めれば、「自分のことで精一杯。まずは官房長官としてしっかり存在感を」と注文をつけられた松野氏と、「総理総裁を狙っているわけではない」と切り捨てられた高木氏は、脱落だ。

能力と資金力を認められながらも「参院のドンになれ」と助言された世耕氏も清和会会長への道は遠のいたといっていい。

そうなると、西村氏と萩生田氏の一騎打ちとなるが、西村氏は「元経産省の能吏」で「指示が細かい」とダメ出しされている。それに比して萩生田氏は「大したもんです。総合力は最も高い」とベタ褒めだ。

西村氏は当選7回、萩生田氏は当選6回。年齢も萩生田氏のほうが若い。それでも森氏は「次の衆院選が終われば1回ぐらいの当選回数の差は気にならなくなる」とまで語っているのだから、森氏の意向はもはや明らかだ。

萩生田氏は1月末にネット番組で清和会の次期会長について「(安倍氏の)一周忌をメドにしかるべきリーダーを立てたい」「私で役立つことがあると皆さんが言ってくれるなら、どういう立場でも頑張る」と踏み込んで発言し、会長就任への意欲をのぞかせた。森氏の後ろ盾を得ているという自信の裏返しであろう。

萩生田氏は安倍氏の最側近と言われる一方、安倍政権下で菅官房長官ー萩生田官房副長官のコンビを組んで以来、「岸田降ろし」の狼煙をあげた菅氏とも気脈を通じている。一方、後ろ盾の森氏は岸田首相と頻繁の連絡を取り合う間柄だ。

森氏は今回のインタビューでも、岸田首相から「2、3日に一度連絡があります」と明かし、「自民党総裁を2期くらいやっていただければいい」「うちの派は岸田総理をしっかり支えて力を蓄えていけばいい」と語っている。森氏の発言を額面通りに受け止めるかどうかは別として、萩生田氏は森氏の意向を背景に岸田首相にも強い姿勢で臨めるし、菅氏とも連携できる立場にある。どちらに転んでも生き残れる格好のポジションなのだ。

萩生田氏が統一教会問題で批判を浴びながら図々しく政調会長にとどまり、そればかりか最大派閥のトップへの意欲を隠さないのは、森元首相、菅前首相、岸田首相のいずれとも強い関係を維持しているという手応えを感じているからだろう。

森氏の意向が明確になったことを受けて、世耕氏と西村氏がどう動くかが今後の焦点となる。

世耕氏は総理・総裁の座を目指して参院から衆院への鞍替えを模索してきたが、地元・和歌山の長年の政敵である二階俊博元幹事長が立ちはだかり、実現できずにきた。

今回、森氏から「参院のドン」をめざすように公言されたことで、衆院鞍替えへの道はますます険しくなる可能性がある。清和会会長は萩生田氏に譲って「参院のドン」として君臨することを目指すのか、清和会と袂をわかったうえで二階氏とも激突して衆院鞍替え→総理・総裁を目指すのか。より現実的な前者の道を選ぶ可能性が高いだろう。

西村氏はどうか。ここで後輩の萩生田氏に清和会会長の座を譲れば総理・総裁の座は遠のく。西村氏としては簡単には引き下がれない局面だ。一方、森氏を敵に回して清和会を飛び出しても付き従う議員はいないだろう。

ここは経産相として閣内にいる立場を最大限に活用し、萩生田氏の清和会会長への就任を極力先送りし、萩生田氏がスキャンダルなどでつまずいたり、岸田降ろしの政変のなかで失脚したりする「敵失」をじっと待つことになるだろう。萩生田氏はいずれ岸田首相と菅前首相のどちらにつくかの選択を迫られる可能性があり、その局面で反目を張ることも可能だ。高齢の森氏の健康状況次第で流れが変わる可能性もある。

いずれにしろ、萩生田氏が頭一つ抜け出した清和会会長の後継レースは「岸田降ろし」の行方と密接に絡みながら今後の政局を左右する鍵となる。本命・萩生田氏、対抗・西村氏という構図のなかで、世耕氏が衆院鞍替えを断念して「参院のドン」を目指す腹を固めれば、キャスティングボードを握るという展開もあるかもしれない。

森氏は自らが拡大した清和会の時代が続くことを最優先に考え、萩生田氏を中心に西村氏や世耕氏が結束する体制をベストと判断したとみられる。西村氏や世耕氏の出方が今後の焦点となる。


森元首相が萩生田氏をベタ褒めし、ライバル4人をメッタ斬りする模様を1分間のショート動画(ユーチューブ)にしました。ぜひご覧ください。

 

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