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4月解散に向けて茂木幹事長更迭論が浮上、後任は森山総務会長が有力〜3月末の予算成立時に党役員人事の断行を打ち出すか否かが焦点に

自民党の茂木敏充幹事長と岸田文雄首相の関係が決定的に冷え込んでいるようだ。

安倍派などの裏金問題をめぐる政倫審が、安倍派幹部が完全公開を受け入れないためにこう着状態に陥っていた際も、茂木氏は安倍派幹部らを説得することなくサボタージュした。岸田首相は業を煮やして自ら完全公開の政倫審に出席する意向を表明して事態を打開したが、本来は党内調整に動くべき幹事長がその役割を放棄したことに怒り心頭らしい。

岸田首相はもともと、麻生太郎副総裁を後ろ盾にポスト岸田への意欲を隠さない茂木氏を警戒してきた。昨年9月の内閣改造・党役員人事では幹事長交代を画策したが、麻生氏に猛反対され断念した経緯がある。

だが、昨年末に発覚した裏金事件を機に、岸田首相は麻生氏に相談することなく岸田派解散を表明し、麻生・茂木・岸田3派による主流派体制に終止符を打った。安倍派、二階派、森山派が続いて解散し、派閥存続を表明した麻生・茂木両派が逆に孤立する事態となり、麻生氏は激怒。岸田首相と麻生氏の関係が悪化したのだ。

これを受けて、岸田首相は茂木幹事長に配慮する必要はなくなった。麻生氏が岸田首相を自民党本部に呼びつける形で繰り返されてきた岸田・麻生・茂木の3者会談は姿を消し、3人で重ねてきた夜の会食もなくなった。麻生氏に岸田首相と茂木幹事長が付き従う岸田政権の権力構造は大きく崩れたのである。

もはや岸田首相にとって茂木氏が幹事長にとどまる必要はない。むしろ邪魔な存在となったのだ。

しかも茂木派は小渕優子選対委員長ら離脱者が相次ぎ、茂木氏の求心力は低下している。さらに茂木氏が自らの政治団体の資金を政治資金規正法上、使途公開などのルールが緩い「その他政治団体」に10年間で3億2000万円を移していた「裏金疑惑」が国会でも取り上げられ、幹事長として政治とカネの疑惑払拭の先頭に立つ資格そのものが揺らいできた。

そこで囁かれ始めたのが、幹事長更迭である。

岸田首相は9月の自民党総裁選での再選を目指し、総裁選前に衆院解散・総選挙を断行する構想を練っている。内閣支持率が低迷したまま9月の総裁選を迎えれば「岸田首相では次の総選挙は戦えない」という党内世論が高まり、前任の菅義偉首相と同じように総裁選不出馬に追い込まれるからだ。

総裁選前に解散総選挙を断行するには、①3月末の予算成立、4月10日の訪米後の4月解散、②政治資金規正法改正案の審議が大詰めを迎える国会会期末の6月解散ーーが選択肢としてある。

私は以前より①の4月解散が有力と指摘してきたが、最大の理由は、スキャンダルで自民大逆風の4月28日投開票の衆院3補選(島根1区、長崎3区、東京15区)を吹き飛ばせるからだ。この衆院3補選で3敗すると岸田首相では選挙は戦えないという党内世論に火がつき、6月解散が難しくなって総裁選出馬断念の流れが強まってくる。先手必勝の4月解散が岸田政権の延命には効果的だ。

そこで問題となるのは、茂木幹事長の存在である。解散総選挙となると、党資金を握り党運営を仕切る幹事長は重要だ。ポスト岸田に意欲満々で岸田首相の足を引っ張る茂木氏が幹事長のまま、解散総選挙に踏み切るのは、岸田首相もさすがにためらいがあるだろう。

3月末の予算成立を機に党役員人事を断行して茂木幹事長を更迭し、麻生・茂木・岸田3派の主流派体制に完全に終止符を打って体制を立て直したうえで、4月10日の訪米直後に解散総選挙に踏み切るのが、岸田首相にとってはベストシナリオではないか。茂木幹事長を更迭した時点で、永田町は4月解散一色になるだろう。事実上の解散アナウンスといっていい。

後任に有力なのは、森山裕総務会長だ。昨年9月の人事でも森山氏は幹事長候補に浮上していた。岸田首相が今回の裏金調査を茂木氏ではなく森山氏に任せたのも、幹事長交代の布石かもしれない。党所属議員に対する裏金調査を主導するのは、本来なら幹事長が果たすべき役割であり、そこから茂木氏を外したことからも岸田首相の茂木不信がはっきりと伝わってくる。

森山氏は非主流派の菅義偉前首相や二階俊博元幹事長と近い。この幹事長交代が実現すれば、岸田首相が政権の後見役を麻生氏から菅氏へ切り替えたことを象徴する人事となるだろう。

森山氏は少数派閥・森山派の会長にすぎず、78歳という年齢からしてもポスト岸田候補になり得ず、岸田首相には警戒感がない。とはいえ、解散総選挙へのアピール人事とはならない。このため、政調会長や選対委員長などの要職に小渕優子氏や小泉進次郎氏ら次世代を起用する可能性もある。

岸田首相が4月28日投開票の解散総選挙に踏み切るかどうか。3月末の予算成立時の記者会見で党役員人事を打ち出すかどうかが大きな見極めのポイントとなる。

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