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参院選前の新潟知事選「原発」争点に!ところが立憲民主党は「自主投票」!西村智奈美幹事長の地元なのに、なぜ!?

参院選前に行われる新潟県知事選(5月12日告示、同29日投開票)がにわかに注目を集めている。

自公与党に加えて連合新潟の支援も受ける現職の圧勝とみられていたが、地元経済界の有力者である女性経営者が「原発再稼働に反対」を掲げて対抗馬に名乗りを挙げたためだ。

現職の花角英世知事(63)は新潟県佐渡市出身。東大法学部を卒業して運輸省(現・国土交通省)に入り、新潟県副知事や海上保安庁次長を歴任した後、自公与党に担がれて故郷の知事に転じるという、キャリア官僚知事コースの典型である。

野党共闘で就任した米山隆一前知事がスキャンダルで辞任した後の2018年知事選で野党共闘候補を制し初当選した。

二期目を目指す今回の知事選は、自公与党に加えて与党入りに突き進む国民民主党からも出馬要請を受けて2月に出馬を表明。連合新潟の支持も取り付けて再選に向けて磐石の体制とみられていた。

これに待ったをかけたのが、新潟市の住宅メーカー「イシカワ」の副社長である片桐奈保美氏(72)だ。

1968年新潟県立新津高校を卒業した後、石川組(現・イシカワ)に入社。2005年に新潟大を卒業し、新潟経済同友会副代表幹事に加え、新潟県にある柏崎刈羽原発の再稼働反対や脱原発を訴える市民団体「新潟の新しい未来を考える会」会長を務めている。

片桐氏は3月に出馬を表明し、「原発の危険性を訴え、明るい新潟県を目指す」「国の言いなりには私はなりません。再稼働はさせない」として「原発」を最大の争点に掲げている。ウクライナにある原発施設をロシアが攻撃したことを受け、出馬を決意したという。

共産党と社民党はいち早く片桐氏の推薦を決定。さらに「脱原発」を唱える小泉純一郎元首相も片桐氏の応援に駆けつけ、「新潟から原発ゼロをやっていけば盛り上がっていく」とエールを送った。(FNNプライムオンライン『〈新潟県知事選挙〉片桐奈保美氏が事務所開き 「原発再稼働はさせない」』参照)

ところが、野党第一党の立憲民主党は片桐氏からの推薦要請を退け、自主投票を決めたのだ。いったい、なぜ?

新潟県は立憲民主党の西村智奈美幹事長(衆院新潟1区)の地元である。

昨年の衆院選では県内6選挙区のうち過半数の4選挙区で野党系候補が勝利。参院選も安倍長期政権下で行われた前回、前々回とも野党系が勝利した「野党王国」だ。

自民党の田中角栄元首相の地元として有名だが、もともと社会党などリベラル勢力も強かった。田中元首相の強固な地盤を受け継いだ田中真紀子元外相が自民党から民主党へ転じたこともあり、小沢一郎氏の地元・岩手県や羽田孜元首相の地元・長野県、伝統的にリベラル勢力が強い北海道などとあわせて地方では珍しい「野党が強い県」である。

東京電力福島第一原発の事故を受けて、東電柏崎刈羽原発に対する県民の不安が高まり、原発再稼働を進める自公政権への不信も強く、野党地盤をより強固にしてきたのだった。

前回知事選は野党共闘で勝利した米山知事のスキャンダル辞任に伴って実施されたため、野党に逆風が吹いて自公与党が担いだ花角知事に競り負けたが、今回知事選は本気で挑めば互角以上に戦える可能性は非常に高い。

ところが、野党第一党である立憲民主党は最初から腰が引けているのだ。

本来は野党第一党の立憲民主党が自公与党に対抗する知事候補を擁立するのが筋である。しかもここは西村幹事長の地元なのだ。

ところが立憲は花角知事の再選を傍観する気配だった。しかも、地元経済界の有力者である片桐氏が覚悟を決めて「原発再稼働に反対」を明確に掲げて立ち上がってくれたのに、自主投票を決め込んでいるのである。

現職知事に遠慮しているのか? 

連合新潟に逆らえないのか?

党内からも「参院選直前にある知事選で『不戦敗』して、1議席を自公と争う1ヶ月後の参院選新潟選挙区で本当に勝てるのか」「西村幹事長の地元で自公与党と戦う覚悟を示せないようでは、全国に守りの姿勢が波及して参院選は惨敗だ」との不満がくすぶっている。

立憲民主党、そして西村幹事長は、いったいどういうつもりなのだろう。

れいわ新選組の山本太郎代表が衆院議員を辞職して参院選への出馬を表明した際、立憲民主党を念頭に「戦う気あるのか!」「権力奪取する気あるのか!」「危機感無さすぎ」と酷評したことが真実味を帯びて響いてくる。

立憲民主党の当事者たちはどのように説明しているのだろう。

立憲民主党は「自主投票」なので自らの判断で片桐氏の応援に駆けつける議員もいる。立憲民主党県連代表の菊田真紀子衆院議員は「自主投票。個々人の判断と責任を持って、支援をしたい人は支援をする」と説明する。

野党候補として衆院選に当選した米山前知事は「私のとき(2016年知事選)も立憲民主党は自主投票だったので、実はあまり変わらない」という。連合に配慮して自主投票としたものの、野党議員は実質的には片桐氏に回るということだろう。

だが、2016年は民主党が下野してまだ3年。民主党(民進党)はその後に分裂を繰り返して現在の野党の政治力は大幅に低下し、連合は自民党寄りの姿勢を鮮明にしている。当時の自主投票と現在の自主投票の意味合いは大きく異なるだろう。しかも今回は参院選目前の知事選なのである。「自主投票」という半身では不退転の覚悟が伝わってこない。

今年に入って行われた長崎県知事選と石川県知事選は自民党が分裂する大激戦となった。連合はいずれも現職あるいは現職が推す候補を支援して敗れたのである。逆に日本維新の会は現職あるいは現職側に挑む新人を支持して勝利したのだった。

保守分裂の長崎知事選で「新人を推して勝った維新」と「現職を推して負けた立憲」の明暗〜次の石川知事選も同じ構図に?

連合の支援を受ける現職には「守旧派」のイメージがつきまとい、有力な対抗馬が登場したら「負け組」に転落するのが現代選挙なのである。新潟県知事選で県内経済界の有力者である片桐氏が「原発再稼働に反対」を掲げて官僚出身の現職に挑む構図は「勝ちパターン」にはまる可能性を十分に秘めている。

その好機をいかせない立憲民主党。やはり自民党に急接近する連合との関係を断ち切れないのだ。それは選挙活動で依存しているからである。これでは野党のリーダーとして自公政権に挑むのは無理だろう。

立憲民主党の「連合依存」については以下の記事を参照してほしい。

立憲民主党は「連合依存」から脱せよ!連合は「労働者代表」を名乗るな!

自民党に接近する連合との関係をどう整理するか。これは泉健太代表と西村智奈美幹事長が直面する最大の政治課題である。その大元で明確な姿勢を示していないから、参院選でも地方選でもいつまでも連合への遠慮を重ねて立憲民主党の存在感は薄まり、メッセージ性に乏しい政党に成り下がってしまったのだ。

西村幹事長は地元・新潟県知事選での「自主投票」についてどう説明しているのか。以下は記者会見でのやりとりである。

地元紙記者:幹事長の地元、新潟県の知事選への対応について伺いたい。県連の会合で、推薦願いが出ていた片桐氏について、自主投票とすることになった。もともと県連として候補擁立を模索してきて実現しなかったという背景があるわけだが、新潟県は昨年の衆院選で野党系が立民中心に選挙区で勝ち越している県だ。そこで参院選を前に県連として対応が割れるということについて、今回の決定について幹事長としての受けとめをお願いしたい。現職支持の方針を示している連合との関係についての影響についてもお考えをお願いしたい。

西村幹事長:知事選挙のことは基本的に県連が判断されることですので、私は、県連として自主投票を決められたということについては、それはもう本部には上がってこない話ですので、それはそれとして受けとめております。

地元紙記者:連合との関係は?

西村幹事長:そこはですね、一つの政党であれば大層な問題にはなると思っておりますが、私たちは立憲民主党という政党で、連合さんは労働団体であるということですから、そこはそれでそれぞれの判断があるのは当然のことだと思います。

私はこのやりとりを見て、西村氏には野党第一党の幹事長はとても務まらないと確信した。参院選に向け重大なインパクトを持つ知事選(しかも自分の地元の知事選)について、政治的指導力を発揮することを最初から放棄しているのだから。

ただでさえ、野党第一党の幹事長が参院選直前に自分の地元の知事選で現職や自公与党との激突を回避するようでは野党全体の士気は下がる。しかも新潟は「野党王国」である。そこで自公与党に「不戦敗」するようなら他の地域で勝てるはずはない。

しかも「不戦敗」の理由は、誰がどう見ても連合新潟への遠慮である。その連合を率いる芳野友子会長は参院選が迫る今、麻生太郎副総裁ら自民党幹部と会食を繰り返し、自民党本部に招待されて講演し、自民党に急接近しているのだ。

百歩譲って今夏の参院選新潟選挙区で自公与党に勝利するためにも、知事選は波風立てずに「高度な政治判断」で激突を回避するというのなら、その決断が「連合への追従」「自公との対決回避」と受け止められないように幹事長として力強いメッセージを発しなければならない。

それにもかかわらず、地元紙記者の質問に対して「知事選は基本的に県連が判断されること」「県連として自主投票を決められた」「もう本部には上がってこない話」などと内部組織論を持ち出して他人事のようにかわす政治家に、野党陣営全体を率いて自公与党と戦う覚悟などあろうはずがない。野党共闘の先頭に立つ自信と覚悟がないのなら、はやめにお辞めいただくほうがよい。

片桐氏を推薦した共産党や社民党の支持者たちは立憲民主党の「覚悟」に大いに不信感を深めるだろう。

すべて県連に押し付けるのなら、党本部の幹事長など不要だ。本当にこの知事選を重視しているのなら、幹事長が自らの政治生命をかけて党主導で介入すべきなのである。それが失敗したときは政治責任(結果責任)を取って辞職すればいい。それが幹事長という職責だ。

西村幹事長には参院選で野党を率いて自公与党と激突する責任と覚悟がない。そう受け止められても仕方がない。

新潟県知事選の「大逆転勝利」を起爆剤として参院選劣勢の流れを一挙に変えるーーそのような離れ業を西村氏に期待するのはそもそも無理なのだろう。政治家として明らかに力不足である。

「野党は本来、知事選で独自候補を擁立して戦うべきです。しかし、今夏の参院選新潟選挙区で確実に勝利するために、地元の政治情勢を踏まえ、今回の知事選は自主投票としました。私の幹事長としての決断です。その是非は、参院選の結果で判断していただきたい。仮に参院選新潟選挙区で敗北した場合、私は幹事長として責任をとります」

西村幹事長は記者会見で少なくともそう語り、不退転の決意と覚悟を示すべきだった。

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