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東京地検特捜部、東京五輪疑惑の強制捜査はアリバイづくり!?〜五輪スポンサーの朝日新聞など全国紙は徹底追及の気配なし

東京五輪組織委員会の理事を務めた電通出身の高橋治之氏(78)が代表を務めるコンサルタント会社が、紳士服大手AOKIホールディングスを東京五輪スポンサーに選定することにからんで現金を受け取ったとされる問題で、東京地検特捜部が強制捜査に着手した。

高橋氏は電通スポーツ局に長年君臨し、同社の専務や顧問を歴任。2011年に退社後も東京五輪招致にも深く関与し「五輪フィクサー」と目されていた。東京五輪スポンサーの選定にも絶大な影響力を握っていた。

東京五輪が閉幕して2年。フランス捜査当局が東京五輪招致をめぐる裏金疑惑を捜査しているにもかかわらず、日本の検察当局は東京五輪疑惑の解明に乗り出すそぶりさえみせてこなかった。ここにきて検察が急に動き出したのは、東京五輪招致を主導した安倍晋三元首相が凶弾に倒れた結果だとも永田町ではささやかれている。

東京五輪組織委はすでに解散し、さまざまな証拠は隠滅されてしまっている恐れが高く、疑惑全体の真相究明は難航するだろう。これまで強制捜査を怠ってきた検察の不作為責任は厳しく問われなければならない。

検察の動きは遅きに失している。そもそも五輪招致疑惑の全体像を解明する気はさらさらなく、いわば「アリバイづくり」として高橋氏とAOKIを立件することにしたーーそんな疑念を私は払拭できない。

検察当局は首相官邸の顔色ばかりみて政権に不利な事件はもみ消し、政権に有利な国策捜査ばかりを手がけてきた。私は検察組織をまったく信用していない。

その検察権力を監視すべき報道各社の社会部(司法記者クラブ)は検察と一体化し、検察の思惑情報を垂れ流すばかりだ。

検察捜査も検察報道もこの国では権力監視の役割をまったく果たしておらず、今回の捜査も「トカゲの尻尾切り」で終わる可能性が高いと私は見ているが、それでも政権やマスコミが封印してきた東京五輪疑惑にスポットがあたるのは悪いことではない。

高橋氏やAOKIの小さな疑惑にとどまらず、国家権力中枢の大疑獄が解明されることを強く望む。

ここで問題となるのは、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日経新聞などの新聞社が横並びで東京五輪スポンサーになっていたという事実だ。

これら新聞社はこれまでもフランス捜査当局が調べている東京五輪招致疑惑などをまともに報道してこなかった。本来なら今回の東京地検特捜部の強制捜査を受けて新聞社は連日一面で「五輪疑惑追及キャンペーン」を展開すべきところである。

ところが、その気配はまったくない。スポンサーとして東京五輪礼賛報道を展開してきたのだから、当然といえば当然だ。

国家権力が巨額の税金を投じる国家プロジェクトが公正に行われているのかを監視すべき新聞社が、東京五輪関係の巨額の広告料を目当てに国家プロジェクトのスポンサーとなり、政権と一体化して五輪機運を盛り上げる報道を展開してきた時点で、これら新聞社はジャーナリズムを名乗る資格を失っている。

しかも高橋氏はスポンサー選定にも大きな影響力を誇ってきた。朝日新聞などは自社の経営陣や編集幹部が高橋氏とどのような関係を築いてきたのか、AOKIとの間で浮上したような不透明な資金の流れはないのか、自ら検証して公表すべきである。スポンサー企業としてそれは最低限の責務だ。

私がとりわけ残念なのは、朝日新聞の東京五輪疑惑への無関心さである。

今回の事件も東京地検特捜部が手がける範囲内の報道に終始し、五輪疑惑の全体像を追及していくつもりはまったく感じられない。朝日新聞と密接な関係にある電通の関与については、なるべく触れないように気を遣っているとしか思えない報道ぶりだ。

政府広告や五輪関連広告に目がくらみ、東京五輪スポンサーになったことがすべての失敗のはじまりだった。

スポンサーになった当時の渡辺雅隆社長は大阪社会部出身。社会部に五輪礼賛報道を主導させ、国家プロジェクトに加担してきた責任は大きい。そこまでジャーナリズムの精神を曲げながら渡辺体制下で朝日新聞社は創業以来の大赤字に転落し社長が引責辞任に追い込まれたのだから、唖然とするしかない愚かな話である。

この人物は朝日新聞社の経営も編集もボロボロにした「A級戦犯」としかいいようがない(自らが「院政」をしくことを狙ってこのような無能な社長を後継指名した前任社長の木村伊量氏の責任も重大である)。

朝日新聞社は東京五輪スポンサーになった経緯を(高橋氏との関係も含めて)再検証し、この判断が報道機関として誤りであったことを認めたうえで、当時の責任者を断罪すべきである。そうでなければ東京五輪疑惑を本腰を入れて追及することなどできるはずがない。

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