政治とマスコミを斬る
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オミクロン株に「ワクチン神話」で対処する危険〜岸田内閣の右往左往が始まった

新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の対応をめぐり、岸田政権がはやくも右往左往している。すべての航空会社に「日本に到着する国際線の新規予約を12月末まで停止」を要請した直後に撤回し、大きな混乱を招いた。

水際対策を含め「感染拡大防止」を最優先にするのか、経済活動を優先してある程度の感染拡大を容認して医療体制の強化で対応するのか。コロナ対策の基軸が定まっておらず、場当たり的な対応を繰り返す姿は、安倍・菅政権と瓜二つだ。

菅義偉首相は政権末期、ワクチン接種が進んだことを踏まえてコロナ対策を大きく転換させた。ワクチンは感染防止の効果には限界があるものの、重症化防止にはかなり効果があることを踏まえ、コロナ対策の防衛ラインを「感染拡大防止」から「重症化や死亡の阻止」へ大きく移行させたのだ。

ある程度の感染拡大を容認して行動自粛を大幅に緩和して経済活動の再開を優先するとともに、病床や医療スタッフの確保を中心とする医療提供体制を強化して「医療崩壊」による「死者」を出さないようにするという、それまでのコロナ対策の根幹を変更する内容だった。

問題は、この政策転換を国民に十分に説明しないまま、なし崩し的に行ったことである。

このため、国内世論は「感染拡大防止」を最優先する意識を保持し続け、菅政権との意識のギャップは広がり続けた。コロナの感染拡大が急速に落ち着いたため、菅政権と世論の意識の落差は表面化することなく、コロナ対策の基軸があいまいなまま、岸田政権にバトンタッチされたのだった。

世界中でワクチン接種が進む中、ワクチンの効果が大幅に低下する変異株が登場する可能性は多くの専門家に指摘されてきた。ワクチンの開発とウイルスの変異はいたちごっこのような関係にあり、「ワクチンさえ接種すればコロナ対策は万全」というのはそもそも幻想であった。

菅政権の「ワクチン一本足打法」は科学的に相当無理がある政策だったにもかかわらず、日本の専門家やマスコミは厳しく批判することはなかった。そこで日本国内には「ワクチン神話」が浸透したのである。

そこへ登場したのがオミクロン株だ。

未知の新型コロナウイルスが登場した2年前に「対処方法がわからない」というのは理解できるが、変異株の登場が十分に予測されていた今回は「予想外の新種が登場した」という言い訳は許されない。ワクチンをすり抜ける変異株の登場を十分に予測して対応策を検討するのが危機管理の鉄則であり、それを怠ったとするならば、それは政治の怠慢としかいいようがない。

岸田政権の混乱ぶりをみると、9月以降に感染拡大が沈静化したことで、万全の体制を構築する作業を怠っていたのではないかと疑念は深まるばかり。菅政権の方針転換を踏襲してある程度の感染拡大を容認するのか、それとも感染拡大防止を徹底するのか。この根幹部分のあいまいさが、「国際線の新規予約の停止」をめぐる右往左往ぶりに如実に現れたといえよう。

感染拡大防止を最優先にするならば水際対策を徹底させることが不可欠だが、それを撤回したということは、やはりある程度の感染拡大を容認する方針としか思えない。ところが、菅政権と同様に世論の反発を恐れて「ある程度の感染拡大は容認する」とはっきり説明しないところが極めてタチが悪い。

さらに問題なのは、このオミクロン株に対しても「ワクチン神話」で対処しようとしていることだ。

ワクチンは①重症化防止にはかなり効果があるが、感染防止効果は限定的②効果は半年程度で大幅に落ちるため追加の接種が必要となる③新たな変異株への効果はまったく未知数ーーという限界があり、「ワクチンさえ接種すれば大丈夫」というものではない。ワクチンの効果を全否定するのはおかしいが、ワクチンを絶対視するのもおかしいのである。ワクチンはあくまでも「対策の一つ」に過ぎないのだ。

むしろワクチン以上にコロナ対策の基本となるのは「早期発見・早期診断・早期治療」を可能とする検査・医療体制の整備である。ワクチンは検査・医療体制を充実させるまでの「時間稼ぎ」という側面もある。ところが日本では政府も専門家もマスコミも検査・医療体制の整備よりもワクチン接種の必要性ばかりを強調し、ワクチンの限界を十分に説明せず、ワクチンによる健康被害もあいまいにし、ワクチン神話を振り撒いてきた。

そのツケが今回のオミクロン株への対処で出てくるのではないか、つまりワクチンの三回目接種ばかりに力を入れ、肝心の検査・医療体制の整備や感染拡大防止のための水際対策が疎かになるのではないかという懸念が募るばかりである。

権力私物化や疑惑隠蔽を重ねても生きながらえた安倍政権を倒したのはコロナ危機だったと私は思っている。それを受け継いだ菅政権を倒したのもまたコロナ危機だった。岸田首相はその現実を目の当たりにしてきたのだから、何よりもコロナ危機管理を重視し、万全の体制を整えているのは当たり前のはずだ。

それでもオミクロン株の登場に右往左往し、安倍・菅政権と同じ過ちを繰り返すようなら、政権担当能力に大きく欠けている政権と言わざるを得ない。