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立憲民主党崩壊で山本太郎と泉房穂の連携は実現するか?自民にも維新にも対抗する第三極の結集に注目!

永田町では「6月解散ー7月総選挙」の観測が広がり、立憲民主党は日本維新の会に野党第一党の座を奪われる危機に瀕している。

立憲は当初、維新との選挙協力を目指して接近したものの、そっぽを向かれて決別した。一方で共産党やれいわ新選組との選挙協力も否定し、連合を通じて国民民主党に共闘を呼びかけている。

しかし、落ち目の立憲に復活の兆しはない。このままでは解散と同時に一部議員は勢いづく維新に駆け込み、立憲は衆院選がはじまる前に空中分解する恐れもある。衆院選は「自民vs維新」の対決構図となり、「反自民・反維新」の票を立憲、共産、れいわなどが奪い合っていずれも伸び悩むという展開が十分にありえる。

このままでは政界は自民党と維新の二大政党制に突入することになる。維新は安全保障政策や規制緩和・行政改革で自民より過激だ。憲法改正論議が一気に進む可能性も強まる。

立憲凋落・維新台頭による「野党第一党の交代」は日本の政界地図を大きく塗り替えることになろう。この流れを阻むには、自民党にも維新にも真っ向から対抗する第三極の結集が欠かせない。

共産やれいわとの野党共闘を見限って維新にすり寄り、その維新に切り捨てられて右往左往した立憲が、いまいちど野党結集の中核を占めるのは難しいだろう。この間の立憲の迷走ぶりを野党支持層は忘れまい。

そこで私が期待しているのは、既存政党の枠組みを超えて動き出した地方からの政治改革だ。

4月の統一地方選は、地方からの政治改革のうねりを予感させた。

西では、兵庫県明石市を子育て日本一の街に作り変えた泉房穂前市長が「明石市民の会」を旗揚げして市長選に女性市議を擁立し、地元のライバルである自民党の西村康稔経済産業相が担いだ男性市議にダブルスコアで圧勝した。泉氏は市議選にも新人5人を擁立して全員を当選させ、しかも上位4位を独占する勝ちっぷりだった。泉氏は「明石でできたことは全国でもできる」と表明して国政への関与を示唆している。

東では、東京都杉並区の岸本聡子区長が区議選で女性候補を全面支援して次々に当選させ、区議会の勢力地図が大きく変わった。世田谷区の保坂展人区長は自民と維新が元財務官僚擁立で手を握って注目された区長選で4選を果たし、自力をみせつけた。岸本氏や保坂氏ら首都圏の首長らはリベラルの立場で横の連携を強めている。

これらの動きは「自民でも維新でもない新たな政治勢力」の土台となる可能性が十分にある。解散総選挙を見据えて、東西の首長らの動きと、自民にも維新にも争う「立憲の一部や共産、れいわの国会議員」がどう連携していくかは、衆院選の対決構図を左右する重要なポイントである。

私は昨年夏の参院選前に「立憲崩壊」を予測し、自民にも維新にも対抗する第三極の中核になる存在としてれいわ新選組を期待し、参院選ではれいわ支持を表明した。今もその思いに変わりはない。

とはいえ、山本太郎代表が「一刻も早く中規模政党になる」という目標を掲げて衆院議員を辞職して参院選に出馬表明した一年前と比べると、勢いは鈍化している。次の衆院選でも野党共闘は成立せず、れいわは単独で戦う可能性が強まっているうえ、参政党など新たな勢力も誕生しており、「反自民・反維新」の票の奪い合いは熾烈を極めるだろう。

政党支持率や統一地方選の結果を分析しても、れいわはこのままでは大幅な議席増は難しく、現有3議席を維持できるかどうかも微妙だ。山本代表が再び参院議員を辞職して衆院選に出馬することは現実的ではなく、「目玉候補」不在の戦いを強いられ、埋没する恐れも否定できない。

そのなかで活路を見出すとすれば、やはり地方からの政治改革との連携であろう。そのなかでも「誰一人見捨てない」という政治理念がピッタリ重なる泉房穂氏との連携を期待する声は強い。

れいわは首都圏に強く、泉房穂氏は関西圏に強い(裏を返せば、れいわは関西で弱く、泉房穂氏は首都圏での知名度アップが課題)。少数野党のれいわは地方自治体を含めて政策を実現してみせることができないのに対し、泉房穂氏は国政への足がかりがない。双方の弱点を補う意味でも格好の組み合わせなのだ。

もっとも、泉房穂氏は今のところ特定政党とは連携せず、あくまでも「市民との連携」を全面に掲げ、全国各地の首長らとのネットワークづくりを優先する姿勢をみせている。

また、関西圏で圧倒的な影響力を誇る維新とは是々非々の姿勢で向き合っているものの、橋下徹・元大阪府知事とは司法修習時代からの友人であることを明かしており、れいわの「反維新」の看板とぶつかる恐れもある。連携の実現にはいくつもハードルがあるだろう。

こうしたなか、鮫島タイムスの「筆者同盟」に参画して、連載『ものづくりの考古学者がゆく』を寄稿している奈良在住の考古学者・丹羽崇史さんがタイムリーなツイートを発信した。れいわの山本代表が2月5日、奈良で開催した「おしゃべり会」に参加し、泉房穂氏との連携について直接質問した場面の動画を紹介する内容だ(丹羽さんの行動力には頭が下がります)。

丹羽さんは会場でマイクを握り、「明石市の政策について山本さんはどう思われますか。また、泉房穂さんとの連携の可能性があれば教えてください」と簡潔に質問した。

山本代表は、泉房穂氏の動向について「政党と絡んでいくことは、おそらく最終最後までやらないと思うんですよね。そのほうが多くの人たちに広がりやすい。党派色はつけたくないと思いますよ、たぶん。動き方見てて」と分析したうえで「連携はその状況がどうなっていくのかを見ないとわからない」と答えた。

一方で、明石市の政策については「効果があった。子育てしやすくなれば、住民が増え、収入(税収)も増えることにつながっていく」と評価したうえで、「地方自治体でできたことがどうして国でできないの? 国には通貨発行権があるのだから、大胆にやりながら底上げして、社会にお金を循環させることは絶対的にやるべきことです」と答えた。

山本代表の答弁を簡潔に解説すると、泉房穂氏が政党との連携を「最終最後までやらない」というのは、裏を返せば「衆院解散時点でどこかの政党を組む可能性がある」と分析しているということだろう。そのなかでれいわが連携相手として手を挙げることも選択肢に入れているとみていい。

政策的にはれいわと泉氏はほとんど衝突しない。山本代表は明石市の政策を全国に広げる推進力として、れいわの金看板である「積極財政」を活用すべきだと主張している。

私が新刊『政治はケンカだ!明石市長の12年』で泉房穂氏と対談して確信したのは、泉氏も財務省主導の「緊縮財政」には極めて批判的で、むしろ「積極財政」にシンパシーを抱いているということだ。財政政策でもれいわと泉氏の隔たりはさほどないとみていい。

一方、維新は「緊縮財政」を掲げて身を切る改革や財政健全化を売りにしており、泉房穂氏の「誰一人見捨てない政治」とは隔たりが大きい。

れいわと泉房穂氏に政策的な溝がない以上、両者の連携に立ちはだかるのは、政局的な利害調整に尽きる。

様々な障壁を乗り越えて新たな政治勢力を結集させ、国民の期待感を高めることも政治家の重要な仕事だ。永田町で与野党を敵に回して独自路線を進むれいわが、泉房穂氏との連携の芽をどうつかむのか、その手腕が問われることになる。

解散総選挙に向けて水面下でウィンウィン関係を作り上げ、自民でも維新でもない新たな第三極の政治勢力の中心に躍り出ることができるかどうか。山本代表と泉房穂氏の今後の動向から目が離せない。



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