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これでは女帝は倒せない!蓮舫氏は「自分をよく見せる」ことよりも「打倒百合子」を前面に!「裏金自民の延命に手を貸す小池都政をリセットする」と宣言した当初の勢いに陰り、蓮舫氏の気になる言葉

女帝対決となった東京都知事選挙(6月20日告示、7月7日投開票)は、現職の小池百合子知事が優勢とみられている。

蓮舫氏は当初、「裏金自民党政権の手を貸す小池都政をリセットする」と宣言して勢いづいたが、ここにきてやや押し込まれている模様だ。このままでは小池都政は倒せない。

蓮舫氏の戦略はどこが間違っているのか。

ひとことで言うと、蓮舫氏は自分をよく見せることよりも、小池知事を倒す姿勢を前面に打ち出したほうがよいだろう。蓮舫氏を応援したいという票をどれだけかき集めても小池知事には勝てない。裏金自民と結託する小池都政を倒してほしいと願うアンチ小池票を掘り起こし、自らのもとへ結集させることが不可欠なのだ。

蓮舫氏の「気になる言葉」から分析してみよう。

🔸「小池知事は強い」

蓮舫氏は小池知事について「とっても強い方」「私は挑戦者」と繰り返している。

これは逆効果だと私は思う。女帝を持ち上げてどうするのか?

小池知事は8年前の知事選こそ、反自民を掲げて無党派層の支持をかき集めて当選した。しかし2期8年ですっかり自民党と一体化し、今では自民党を支える業界団体の支援を強く受けて磐石な政治体制を作り上げている。そこへ公明党(創価学会)や連合の組織票がのっかってくる。

みんな小池知事の政策に共感しているわけではない。小池知事が強いから、選挙に勝ちそうだから、自分たちの利権を守るために、小池知事を応援しているのだ。

そこへ、小池都政をリセットするといいながら「小池知事は強い」と強調したら、小池支持層は「やはり小池知事につくしかない」と思うだけだ。

いま蓮舫氏が訴えるべきは「裏金自民と一体化する小池都政は落日寸前だ」と触れ回り、蓮舫勝利のリアリズムを高めることである。「女帝ピンチ」の機運を煽らなければならないのだ。

それなのに「小池知事は強い」と振りまいたら、蓮舫氏も小池知事との激突を避けているのではないかと勘繰られてしまう。ひょっとして、都知事選に落選しても今年中に予想される解散総選挙に出馬し、参院から衆院への鞍替えを果たせらばよし…それが本音ではないかと疑われれば、有権者の気持ちはどんどん離れていくだろう。

🔸「私はトップダウンではなくボトムアップ」

次に蓮舫氏が「トップダウンではなくボトムアップ」を強調しているのも逆効果だ。

小池知事がトップダウン型で、都庁内部に不満が広がっているのは事実である。蓮舫氏は小池知事との差別化をはかり、あえてボトムアップ型を強調することで、「小池強権政治」を批判しているつもりなのだろう。

しかし、これで蓮舫氏に近づくのは、都庁内部で小池知事に不満を抱いている人々だけだ。

一般の無党派層は、裏金自民の腐敗政治に終止符を打ち、膿を出し切ってほしいと願っている。だからこそ世論調査では自公政権の継続よりも政権交代を求める声が高まっているのだ。むしろ、トップダウン型で、裏金自民と一体化した小池都政をぶっ壊し、膿を出し切り、政治を浄化してほしいのだ。

ボトムアップを強調するほど、蓮舫都政が誕生しても、蓮舫支持者の声に耳を傾けるだけで、大きな変革は生まれず、小池都政の負の遺産の多くは温存されるのではないか。そんな疑念が生じてくれば、蓮舫氏への期待感は高まらない。

多くの無党派層は、蓮舫氏が好きなわけではない。あくまでも小池都政を倒す最有力候補として蓮舫に期待を寄せているだけだ。そこを勘違いし、自分をよく見せることに力を注ぐと、多くの有権者はしらけるだけだ。

🔸東京プロジェクションマッピング

以上のような蓮舫氏の「自分をよく見せたい」戦略が凝縮されているのが、都庁外壁をイルミネーションで照らす「東京プロジェクションマッピング」への姿勢だ。2年間で48億円にのぼる都税を注ぎ込み、電通グループに発注する「小池都政の利権政治」のシンボル政策といっていい。

ところが、蓮舫氏は「観光政策としては私は否定しない」とし、「365日、都庁外壁を明るく照らし出す必要はあるのか。私なら、七夕やハロウィンやクリスマスに限ってやる。期間限定のほうが費用対効果は高まる」と主張しているのだ。そのうえで「縮減できた財源があれば、足元で食べ物を求めて並んでいる人たちへの福祉政策に使うことが、いきた税金の使い方だ」とも訴えている。

私はこの発言には落胆した。プロジェクションマッピングで余ったお金を生活に苦しんでいる人に回すのか?

逆ではないか?

生活に苦しんでいる人に十分なお金を投じ、それでも余ったお金があればプロジェクションマッピングに回すのではないのか?

蓮舫氏の政治観は所詮、限られた財源のなかでのやりくりするという、いかにも財務省的な発想なのだろう。やはり消費税を推進した大物財務族議員の野田佳彦元首相の子分なのだ。

いまの都政に求められているのは、都心界開発や東京五輪など大企業を利益を最優先する小池都政と自民党の利権政治から、都民の暮らし重視の都政(予算)への大転換だろう。その根幹について、蓮舫氏の政治観はいまいち伝わってこないのである。

蓮舫氏が「自分をよく見せる」ことにこだわっている限りは、小池知事を打ち負かすことはできない。裏金自民と一体化した小池都政を倒す姿勢をなりふり構わずみせ、「これは小池都政が倒れそうだ」という勢いが都民に伝わった時に、はじめて逆転の可能性が見えてくる。女帝相手におとなしい政策論争を続けているうちは、山は決して動かない。

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