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立憲民主党は参院選惨敗もどこ吹く風、野党第一党が現状維持勢力と化した二大政党政治は害悪そのもの

安倍晋三元首相が凶弾に倒れて統一教会問題が自民党を直撃し、岸田内閣支持率が大きく下落しているのに、立憲民主党の存在感がまったく高まらない。この野党第一党の低迷こそ、自民党を弛緩させ、政治を劣化させている大きな要因であることは間違いない。

昨秋の衆院選に続いて今夏の参院選でも惨敗したのに、立憲民主党内には泉健太代表の政治責任を追及して引きずりおろし、抜本改革に乗り出す機運はまったく感じられない。

岸田文雄首相が内閣改造に踏み切った8月10日、立憲の泉執行部は臨時の常任幹事会を開き、参院選惨敗について「党は重大な岐路に立たされ、野党第一党の立場を脅かされかねない。執行部に大きな責任がある」とする総括を決定した。

そのなかで泉代表が掲げた「提案型野党」が「何をやりたい政党かわからない」という印象を有権者に与えたことを敗因に挙げたが、泉代表は何事もなかったように代表の座にとどまっている。いったい、どういうつもりだろう。

立憲の敗北総括は内閣改造のニュースに埋もれてほとんど関心を呼ばなかった。泉執行部はあえて内閣改造にぶつける形で敗北総括をしたと勘繰られても仕方がない。

小川淳也政調会長は執行部の一員として敗北総括を了承した後、ツイッターで「少なくともここまでは現執行部として責任を果たすべきと主張してきた私自身も、どこかでけじめをつけなければならない」と表明し、政調会長を辞任する意向を関係者に伝えた。

参院選敗北の責任を明確にするため執行部の刷新を求めるものだが、小川氏も泉代表に辞任は迫っていない。これでは党内闘争の迫力にかけ、「小川氏は一足先に泥舟から逃げ出しただけ」(党関係者)との陰口も聞こえてくる。

泉代表に政治責任を真正面から問いただし、代表の座を奪い取りに行く政治力を兼ね備えた実力者が不在であることが、この党を凋落させた主因であろう。しばらく国政選挙はないのだ。今こそ徹底的な党内闘争を通じて党の政治基盤を作り直す絶好のタイミングなのに、立憲議員たちは大人しく夏休みに入ったようである。

これではいつまでたっても政権交代は夢物語だろう。

衆参国政選挙はこの先3年間予定されておらず、立憲議員たちの地位はしばらくは安泰だ。彼らは日本の政治経済社会がどんなに危機に陥っても、自分たちがただちに国会議員の座を追われるわけではなく、切迫感がまるでない。

野党第一党の立場さえ維持すれば、自分達は国会議員であり続けられるーー立憲民主党の議員たちは現状維持勢力に堕落してしまったのだ。

こうした政治の弛緩を招いたのは、二大政党政治の悪い部分である。

小選挙区制を導入して与党第一党と野党第一党の一騎打ちの構図を無理やり作り、与野党伯仲の政治情勢を生み出して政権交代を起こしやすくし、政治の緊張感を増すのが二大政党政治の考え方である。

ところが、比例復活をあわせて採用したことから、野党第一党は政権交代まで届かなくても、政権批判票をある程度吸収すれば、現職議員が再選できる程度の議席は維持できるという「現状維持」を繰り返してきた。その結果、野党には新人候補があまり増えず、「昔の顔」だけが当選を重ね、新陳代謝がまったく進まなくなったのである。

立憲議員たちは野党がひとつにまとまっている限り、過半数は得られなくても自分たちは少なくとも比例区で復活当選できると考えている。つまり、野党共闘で野党候補が(自分に)一本化されている限り、自分の野党国家議員としての地位は安泰なのだ。この自己保身が日本の政治を歪めてしまった。

今回もただちに泉代表を引きずり下ろさなくても、2〜3年先の衆参国政選挙の直前に小マシな代表にすげ替え、野党共闘を訴えて野党候補さえ一本化すれば、少なくとも自分は比例復活できると踏んでいるのである。だからこそ、今回の参院選敗北でも危機感が湧き上がってこないのだ。

彼らは本気で政権を奪う気がない。もっとも大事なことは、自分の議員バッジを守ることなのだ。

立憲議員たちにとって、自民党よりも脅威なのは、野党第一党の座を脅かす日本維新の会や、立憲に公然と立ち向かってくるれいわ新選組である。これらの野党勢力が台頭して野党第一党の座を奪われてしまうと、彼らの地位は安泰ではなくなる。だからこそ、自民党を倒すよりも維新やれいわを牽制するほうに関心が向くのだ。

かくして立憲議員たちは「与党第一党は自民、野党第一党は立憲」という政治構図の固定化を望むようになる。まさに現状維持勢力へ堕落するわけだ。自民党はそうした立憲の本音を熟知している。立憲を生かさず殺さず力不足の野党第一党として飼い続けることこそ、自民党のもっとも有効な政権延命策なのだ。

かつて中選挙区時代に野党第一党を守り続けた社会党は選挙で政権を奪うことをあきらめ、その代わりに国会で自民党と激突し、自民党に公務員の賃上げなどをのませることと引き換えに国会闘争で妥協する「国対政治」を展開した。この自社体制は「談合政治」「裏取引」などと批判されたが、それでも今、野党第一党が小選挙区制なのに選挙で歯が立たず国会でも激突しない「自民・立憲体制」を見るにつけ、自社体制よりも事態は悪化しているという思いがこみあげてくる。

やはり日本の政治を刷新するには野党再編が不可欠だ。現状維持勢力に成り下がった立憲は一刻も早く解党し、自民党と真っ向勝負を挑む力強い野党第一党を作り出すことが急務である。

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