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補正予算を29兆円に膨らませた自民党を批判〜立憲民主党「緊縮財政」鮮明に、岸田官邸と財務省に同調〜悪いのは「積極財政」ではなく「予算の不公正な使い方」だ!

岸田政権は10月28日に補正予算で国費29・1兆円を投入する総合経済対策を決めた。財務省は25兆円程度を想定していたが、自民党内から増額を求める声が強まり、土壇場で4兆円を積み増した。

バラマキを求める自民党と財布の紐を絞る財務省の攻防はいつもと変わらぬ風景である。

ここで注目したいのは野党第一党の立憲民主党の対応だ。野党である以上、補正予算には反対するのは一般的だが、その反対理由に野党のスタンスが現れるものだ。

立憲の泉健太代表は10月28日の記者会見で岸田政権の総合経済対策を次のように批判した。

「自民党幹部や岸田(文雄)首相のちょっとした発言でとてつもない膨らみ方をしている。『いいね!』は押せない言い値予算だ」「最終盤、財務省が25兆円ほどのものを示して、それが4兆膨らむと。まったくもって中身がないことの証明かなと感じる。言い値で予算の総額が決まっていく言い値予算。ひどいものだ」

この発言に現在の立憲民主党の立ち位置が集約されている。「予算増額(積極財政)を目指す自民党=悪、予算削(緊縮財政)を目指す財務省=善」という価値観のもとで、「財務省が示した25兆円を4兆円も膨らませた自民党はけしからん」と批判しているのだ。

立憲民主党が財務省と歩調をあわせた緊縮財政派(財政再建派)であることを明確に示した格好だ。

歳出は原則として税収の範囲内に抑えるべきであり、国債発行は極力減らすべきだという立場である。予算額を増やす以上は消費税をはじめとした増税をセットで行い、財政収支を均等させる必要があるという主張だ(財務省の政治力の源泉は予算配分権にあり、財務省はその政治力を最大化するために緊縮財政を唱えているというのが私の見解。財政破綻を避けるというのは表向きの口実に過ぎないとみている。通貨発行権を持つ国で財政破綻が起きる可能性は極めて小さい)。

自民党には、財源は税収に限定されるものではなく国債を積極的に発行して大胆な財政出動をすることは十分に可能だとする「積極財政派」と、財務省に同調した「緊縮財政派」が混在している。

現在の岸田政権は財務省の影響力が強く典型的な「緊縮財政派」だ。これに対して自民党の族議員たちは予算獲得でしのぎを削っており、「積極財政派」の色彩が強い。岸田内閣の支持率が続落するなかで岸田官邸(あるいは財務省)の力が弱まった結果、自民党の予算増額要求を抑え込むことができず、4兆円を積み増すことになったーーという泉代表の分析はその通りだ。

泉代表はそのうえで、予算増額を求める積極財政派の自民党ではなく、財政均衡を求める緊縮財政派の財務省に寄り添う姿勢を鮮明にし、この総合経済対策を批判したのだ。「自民党より財務省」、さらにいえば「自民党より岸田官邸」の側についたといっていい。

ここにこれからの政局の行方をみる大きなカギがある。支持率低迷にあえぐ立憲は岸田官邸に近づき、岸田首相をサポートするかたちで政権中枢へ接近して存在感を増し、党勢回復をめざす。一方、岸田首相としては、自民党内で遠心力が強まっていることを踏まえて立憲と連携し、自民党内の非主流派を抑え込む狙いがある。逆風下にある双方の思惑が一致したというわけだ。

その仲立ちをしているのは財務省である。財務省の究極の目的は、自民(岸田執行部)と立憲と合意のもとで(さらには公明と維新も加えて)消費税増税を4党合意で決めることにある。

この立憲の戦略は正しいのか。私はそう思わない。

この20−30年の日本経済の低迷のなかで、超金融緩和で大企業や金持ちを優遇する一方、消費税増税や社会保障負担の増額で庶民を苦しめ、貧富の格差は急拡大した。さらにコロナ禍と円安物価高が襲いかかり、庶民の暮らしを直撃しているのがいまの現状である。

そのうえで緊縮財政を進め、歳出削減や消費増税を進めれば、大企業や金持ちにはさしたる影響はなくても、庶民の暮らしはますます困窮を深めていくだろう。ここは庶民の暮らしを下支えする大胆な財政出動(現金の一律給付)と消費税廃止が不可欠だ。積極財政の出番なのである。

この局面で緊縮財政を続けると、弱い立場にある者から次々に切り捨てられ、貧富の格差はさらに拡大するだろう。緊縮財政は大企業や金持ちなど強者に有利、貧困層など弱者に不利な経済政策なのだ。

しかし、自民党の族議員が唱える積極財政は、庶民の暮らしを救うものではない。それぞれが濃密に関係を持つ業界に対する大盤振る舞いなのである。

ガソリン代抑制を口実に石油元売り会社へ巨額の補助金を注ぎ込む、電気代抑制を口実に電力会社に巨額の補助金を注ぎ込む…。すべて庶民一人一人に直接現金を配るのではなく、業界に補助金を注ぎ込んで「中抜き」させ、その見返りとして政治献金や天下りの恩恵を受けるのだ。

つまりは積極財政によるお金の使い方が腐っているのである。

積極財政は経済学的に正しいとしても、使い方を間違うと、モラルが崩壊し、強きを助け弱きを挫く政策になりかねない危険をはらむ。庶民を救う「誰一人見捨てない」という政治哲学のもとで、積極財政は実行されなくてはならない。

その意味で、自民党の積極財政も、岸田官邸・財務省・立憲民主党の緊縮財政も、両方とも邪道だ。「誰一人見捨てない」という確固たる政治理念に基づいた積極財政こそ、野党のとるべき道なのだ。


岸田首相と立憲民主党の急接近については以下のユーチューブ動画をご覧ください。

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